
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
子宮体がんの手術を受けた後、どのような合併症や後遺症が起こる可能性があるのか、また再発のリスクについて心配されている患者さんは多いと思います。
手術後の経過は、手術の範囲や進行度によって異なります。ここでは、実際に起こりうる合併症、その頻度、対処法、そして再発予防のための治療について、最新の医療情報をもとに解説します。
子宮体がん手術後に起こる可能性のある合併症
腸閉塞(イレウス)の種類と発生頻度
子宮体がんの手術では、子宮と卵巣を切除する基本的な手術の場合、開腹手術であれば下腹部を縦に切開します。この手術によって起こる合併症の中で最も頻度が高いものが腸閉塞です。
腸閉塞には大きく分けて2つのタイプがあります。
まず、術後早期に起こる「麻痺性イレウス」です。これは手術によって腸の蠕動運動が一時的に低下・消失することで生じます。お腹の張り、吐き気、嘔吐、尿量の減少などの症状が出ますが、多くの場合は絶食と輸液による保存的治療で1週間程度で改善します。
もう一つが「癒着性イレウス」です。手術による癒着が原因で腸の通過障害が起こります。便秘、腹痛、お腹の張り、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。軽い腸閉塞は手術を受けた患者さんの10%以上に起こり、手術が必要になる重度の腸閉塞は1~2%程度発生します。保存的治療で改善しない場合は、イレウス管の挿入や再手術が必要になることがあります。
リンパ節郭清を行った場合の合併症
進行した子宮体がんでは、傍大動脈リンパ節まで広範囲に切除することがあります。この場合、より大きな手術になるため、特に以下の合併症に注意が必要です。
リンパ漏(リンパ液の漏れ)
腎臓の動脈、静脈をまたぐようにリンパ管が走っており、リンパ節郭清でこのリンパ管を切除すると、約3%の患者さんにリンパ漏が起こります。リンパ液がお腹にたまり漏れ出るリンパ管に腹圧がかかることで、多くの場合は自然に閉塞します。
通常、改善するまで数週間かかります。お腹の膨満感が強い場合は、排液針を刺して貯まっているリンパ液を1回に1,000~2,000ml抜く処置を行います。
下肢のリンパ浮腫
リンパ節を切除すると、足のリンパ液の流れが悪くなり、下肢のむくみ(リンパ浮腫)が生じることがあります。子宮体がんの場合、子宮頸がんと比べて特に高頻度というわけではありません。これは子宮体がんでは放射線治療をあまり行わないためと考えられています。
リンパ浮腫が生じた場合は、皮膚の清潔を保ち、乾燥やケガ、虫刺されを防ぐことが重要です。体重管理、バランスの良い食生活、衣服や装飾品で体を締め付けない、などの日常生活での注意が必要です。
排尿障害と便秘
子宮頸部まで進展している場合に行われる準広汎子宮全摘術や広汎子宮全摘術では、排尿障害が起こる可能性があります。これは子宮頸部周囲の基靱帯を広く切除するためです。
症状としては、尿がたまった感じがわかりにくい、尿を出しにくい、尿が全部出しきれない、尿がもれるなどがあります。個人差はありますが、多くの場合は手術後数週間から数カ月である程度改善します。ただし、手術前と完全に同じ状態に戻ることは難しいため、尿をためすぎない、強くお腹を押して無理やり出さない、一定の間隔で排尿するなどの日常生活での注意が必要です。
また、便秘傾向が現れることもあります。
卵巣摘出による更年期障害様症状
子宮体がんの手術では、がんの転移の可能性があるため、卵巣と卵管も一緒に切除することがほとんどです。閉経前に両側の卵巣を切除すると、女性ホルモンが減少し、更年期障害と同様の症状(卵巣欠落症状)が起こります。
具体的には、ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、血液循環の障害などの症状が現れます。症状の強さや発症する期間は人によって異なりますが、特に年齢が若いと症状が強くなる傾向があります。
症状を和らげるために、必要に応じてホルモン補充療法薬や漢方薬などが処方されます。ただし、子宮体がんの多くはエストロゲン(女性ホルモン)で発育が促進されるため、ホルモン補充療法が行えるのは再発がない場合に限られます。
さらに、手術や放射線治療などで卵巣の機能が失われると、骨密度が低くなり骨粗しょう症を引き起こしやすくなります。また、閉経前に卵巣を摘出した場合、心血管疾患や脂質異常症なども起こりやすくなります。予防のため、カルシウムやビタミンDを多く含む食べ物を積極的にとり、適度な運動を心がけることが大切です。
手術後の合併症発生頻度まとめ
| 合併症の種類 | 発生頻度 | 主な症状と対処法 |
|---|---|---|
| 軽度の腸閉塞 | 10%以上 | お腹の張り、吐き気。多くは保存的治療で改善 |
| 手術を要する腸閉塞 | 1~2% | 重度の症状。イレウス管挿入や再手術が必要 |
| リンパ漏 | 約3% | お腹の膨満感。数週間で自然に改善することが多い |
| 下肢のリンパ浮腫 | 変動あり | 足のむくみ。日常生活での注意と管理が必要 |
| 排尿障害 | 広汎手術で高率 | 尿の出しにくさ。数週間~数カ月で改善傾向 |
| 更年期障害様症状 | 閉経前の卵巣摘出で高率 | ほてり、発汗など。ホルモン療法や漢方薬で対応 |
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子宮体がん手術後の再発リスクと再発率
再発リスクの評価方法
手術の結果、手術中の医師の所見、術後病理診断を合わせて検討すると、再発のリスクがどれくらいあるのかがおよそ分かります。子宮体がんの術後は、進行期分類と再発リスク分類から、どのような追加治療を行うかを決定します。
再発リスクは「低リスク」「中リスク」「高リスク」の3段階に分類されます。類内膜がんのグレード1または2で、かつステージIA期の場合のみ低リスクとなり、それ以外は中リスクまたは高リスクに分類されます。
再発のハイリスク要因
以下の要因がある場合、再発のリスクが高いと考えられます。
- 子宮筋層の2分の1を超える深い浸潤(ステージIB期)
- 子宮頸部への浸潤(ステージII期)
- 卵巣や子宮漿膜や骨盤の腹膜への播種(ステージIIIA期)
- 骨盤リンパ節ならびに傍大動脈リンパ節転移陽性(ステージIIIC期)
- 大網や上腹部への播種、転移(ステージIV期)
- 病巣が残存した可能性がある場合
ステージ別の再発率と5年生存率
子宮体がんの予後は早期発見の場合、良好です。がんが子宮体部に留まっているステージI期の5年生存率は90%を超えます。
一方、がんが子宮外に広がるステージIII期の5年生存率は約60~70%程度に低下し、膀胱や直腸などに浸潤したり遠隔転移を伴うステージIV期の5年生存率は20~30%程度となります。
子宮体がんは、初回治療後5年以降でも再発する可能性があるため、5年以上の経過観察が推奨されています。手術後2年以内の再発が多いと言われています。
再発が起こりやすい部位
子宮体がんの再発は、以下の部位に起こることが多いです。
- 腟断端(子宮を切除した腟の上端部分)
- 骨盤内(リンパ節や腹膜)
- 卵巣・卵管
- 肺や肝臓などの遠隔臓器
- 傍大動脈リンパ節
術後の経過観察スケジュール
経過観察中は、内診、直腸診、腟断端細胞診、経腟超音波断層法検査、腫瘍マーカー測定、胸部X線を組み合わせた検査が行われます。再発リスクの高い患者さんは、CT、MRI、PET-CTなどの検査も必要に応じて追加されます。
検査の目安は以下の通りです。
| 術後経過期間 | 検査頻度 |
|---|---|
| 術後1~3年 | 1~3か月ごとに1回 |
| 術後4~5年 | 6か月ごとに1回 |
| 術後6年目以降 | 1年ごとに1回 |
再発予防と再発した場合の治療
術後補助療法(再発予防のための治療)
術後の再発リスク評価に基づいて、再発予防のための治療が選択されます。ステージI期で再発リスクが低い患者さんに対しては、経過観察が行われます。再発リスクが中・高の患者さんに対しては、術後補助療法として化学療法や放射線治療のいずれかが行われます。
化学療法のレジメン(治療法の組み合わせ)
子宮体がんに対する化学療法では、以下の薬剤の組み合わせが用いられています。
TC療法(現在の標準的な治療)
パクリタキセル(タキソール)175mg/㎡ + カルボプラチン(パラプラチン)AUC5~6を3週間ごとに投与します。これが現在、最も一般的に用いられる化学療法です。日本では術後補助療法として化学療法を行う場合、約60%の患者さんがTC療法を受けています。
TC療法は、後述するAP療法と比較して、生存率は同等でありながら副作用が軽度であることが臨床試験(JGOG2043試験)で確認されています。
AP療法
ドキソルビシン(アドリアマイシン)50~60mg/㎡ + シスプラチン(ランダ、ブリプラチン)50~60mg/㎡を3週間ごとに投与します。以前は標準的な治療とされていましたが、吐き気や腎障害などの副作用が強く出るため、現在では使用頻度が減っています。
DP療法
ドセタキセル(タキソテール)60~70mg/㎡ + シスプラチン60mg/㎡を3週間ごとに投与します。この治療法もTC療法と同様に、AP療法と比較して副作用が軽度であることが確認されています。
これらの化学療法は通常、6サイクル(6回)行われます。
免疫チェックポイント阻害薬の登場
2024年12月、子宮体がん治療に大きな進展がありました。免疫チェックポイント阻害薬「ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)」が、進行・再発の子宮体がんに対する化学療法との併用療法として国内で承認されました。
キイトルーダ+化学療法の有効性
国際共同第III相試験(KEYNOTE-868/NRG-GY018試験)では、化学療法歴のない進行・再発の子宮体がん患者810例を対象に、キイトルーダと化学療法(TC療法)の併用と、プラセボと化学療法の併用を比較しました。
その結果、ミスマッチ修復機構の状態にかかわらず、キイトルーダを追加することで無増悪生存期間が有意に延長しました。
- ミスマッチ修復機構が正常(pMMR)な患者さん:病勢進行または死亡リスクを40%低減
- ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の患者さん:病勢進行または死亡リスクを70%低減
この治療法により、進行または再発の子宮体がん患者さんに新しい治療の選択肢が提供されることになりました。
キイトルーダの作用メカニズム
キイトルーダは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬です。がん細胞は、免疫細胞(T細胞)のPD-1というタンパク質に結合することで、免疫細胞からの攻撃を免れています。キイトルーダはこのPD-1に結合することで、がん細胞からのブレーキ信号を遮断し、T細胞を再活性化させて抗がん作用を発揮します。
放射線治療
再発リスクが高い場合、化学療法に加えて、または化学療法の代わりに放射線治療が選択されることがあります。子宮体がんの術後放射線治療では、全骨盤外照射と膣内照射が、再発リスクに合わせて単独もしくは併用して行われます。骨盤内再発を減少させるための治療選択肢の一つです。
病巣が残存した可能性がある場合(リスク因子6に該当)は、化学療法だけではなく対象部位に放射線を照射する場合もあります。
再発した場合の治療方針
手術後に再発した場合の治療は、再発がどこに起きているのかによって異なります。骨盤内の再発なのか、肺や肝臓などの離れた臓器あるいはリンパ節に転移が見つかったのかによって治療方針が決まります。
手術による再発巣の切除
再発であっても、手術が可能であれば、できるだけ手術を行って再発部位を取り除きます。手術後には抗がん剤による化学療法を加える場合もあります。
手術が困難な場合の治療
手術が困難な場合には、化学療法や放射線療法、ホルモン療法も選択肢の一つになります。
腟断端再発に対しては、放射線治療が有効な治療法として推奨されます。ただし、初回治療で手術後に放射線療法を行っている場合には、骨盤内再発に対して放射線療法を選択することは少なくなります。また、放射線療法を行っていると腹腔内臓器の癒着が生じていることがあり、手術が困難になることがあります。
再発時の化学療法
抗がん剤治療を行う場合、初回治療で用いた抗がん剤を使用することもあれば、それ以外の抗がん剤が使われることもあります。再発までの期間が比較的短かった場合には、その抗がん剤は効かなかったと考えられるため、異なる抗がん剤が使われることが多いです。
再発子宮体がんの治療は、がんの状態、全身状態、合併症など患者さん個々で異なるのが実情です。現在の状態をよく理解した上で、治療法を選択することが大切です。
化学療法の副作用と対処法
主な副作用の種類
化学療法を受ける際には、以下のような副作用が起こる可能性があります。
| 副作用 | 症状 | 対処法 |
|---|---|---|
| 白血球減少 | 発熱、感染しやすくなる | 清潔を保つ。38℃以上の発熱時は抗菌薬を服用 |
| 吐き気・嘔吐 | 治療当日~数日後に出現 | 予防的に吐き気止めの薬を使用 |
| 脱毛 | 治療開始2~3週間後から | 一時的なもので、治療終了後2~3か月で再生 |
| 末梢神経障害 | 手足のしびれ、感覚の変化 | 早期発見が重要。症状があれば医師に相談 |
| 疲労感 | だるさ、倦怠感 | 無理をせず休息をとる。適度な運動も有効 |
| 口内炎 | 治療後1週間前後に出現 | 口腔内の清潔を保つ。刺激物を避ける |
副作用への対策
化学療法の副作用は、予防的な対策をとることで軽減できるものもあります。治療前に医師や看護師、薬剤師から予想される副作用やその対処法について説明を受け、疑問点や不安点は相談しながら治療を進めることが大切です。
通院での化学療法は、仕事や家事、育児、介護など日常生活を続けながら治療を受けることができますが、体調が万全ではないことを忘れないようにしましょう。
手術後の生活で注意すること
退院後の生活
近年、早期の子宮体がん(IA期)に対しては、ロボット手術や腹腔鏡手術による低侵襲手術が積極的に行われています。これらの手術では傷が小さくて済むため、術後の回復が早く、退院は術後4日目の方がほとんどです。開腹手術と比較して、退院後の回復も早い傾向にあります。
ただし、退院直後は体力が低下しているため、しばらくは疲れたらすぐに横になるなど、無理をしないことが大切です。体力の回復に合わせて散歩などから始め、少しずつ運動量を増やしていきましょう。
体重管理と運動
子宮体がんの治療中や治療後は、身体活動が低下してしまうことが多くなり、肥満や生活の質(QOL)の低下などの問題が起きやすくなります。特に肥満の方には、運動療法が効果的であるといわれています。
筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動など、日常生活の中でできるトレーニングについて医師に確認しましょう。
食事と栄養
健康的な食事内容を心がけ、栄養バランスに注意し、楽しく気持ちよく食べることが大切です。閉経前に卵巣を摘出した場合、心血管疾患や脂質異常症なども起こりやすくなるため、予防や改善に努めることが重要です。
カルシウムやビタミンDを多く含む食べ物を積極的にとり、骨粗しょう症の予防にも気を配りましょう。
参考文献・出典情報
- 国立がん研究センター がん情報サービス「子宮体がん(子宮内膜がん)治療」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「子宮体がん(子宮内膜がん)療養」
- 日本婦人科腫瘍学会「子宮体がん治療ガイドライン2023年版」
- MSD oncology がんを生きる「子宮体がん 治療(手術療法、薬物療法など)」
- 国立がん研究センター 東病院「子宮体がんの治療について」
- MSD株式会社「キイトルーダ® 進行・再発の子宮体癌に対する一次療法において化学療法との併用で承認を取得」(2024年12月27日)
- がんプラス「キイトルーダ+化学療法、進行または再発の子宮体がんの治療薬としてFDAが承認」
- HOKUTO「3分でわかる、子宮体癌のエビデンス2024-2025」
- がん研有明病院「子宮がん」
- がんプラス「子宮体がん、初回治療の進行期別治療選択と再発したときの治療」