前立腺がんは前立腺肥大症とはまったく別の病気
前立腺肥大症は前立腺の病気としてよく知られており、前立腺がんと患者さんの年齢層が非常に似かよっています。そこで、「前立腺が肥大すると、がんになるのではないか」と考えられることが多いですが、これらはまったく別の病気です。
前立腺肥大症の人が前立腺がんになりやすい、ということもありません。ただし、前立腺肥大症と、前立腺がんの両方にかかることはありえます。
自覚症状がない「がん」、排尿障害などがある「肥大症」
前立腺の肥大は尿道周辺からおこります。このため尿道が圧迫され、比較的早期から残尿感など、尿の出方にはっきりした症状が現れます。
前立腺がんでは手術などの治療に伴って、尿もれ(失禁)をおこすことがあるものの、治療を受けていない段階では、がんがかなり大きくなっても、排尿に関係する自覚症状はほとんどありません。
前立腺の肥大は程度の差はありますが、加齢とともにかなり高い確率でおこる病気です。肥大そのものが命にかかわることはなく、肥大に伴う症状ごとに対処していけばよい良性の病気です。一方の前立腺がんは、放置すればリンパ節や骨に転移して命にかかわることもある、悪性の病気です。
また、もう一つ注意しくべき誤解があります。それは経尿道的前立腺切除術(TUR-P)に関することです。
これは前立腺肥大症の代表的な治療法ですが、これを受けたことで、前立腺がなくなった、だから、前立腺がんの心配もなくなったと思い込む患者さんがいます。しかし、これは大きな勘違いです。前立腺がなくなったわけでも、がんの可能性がなくなったわけでもありません。
この治療法は、前立腺の肥大化した部分を切除するだけのもので、前立腺自体は残っています。ですから、もちろんがんが発生することもありえます。自分の受けている治療をよく理解しておきましょう。
いっぽう前立腺がんで手術を受ける場合は前立腺の全摘出となり、文字どおり「丸ごと」摘出することで、体内から前立腺という臓器はなくなります。
以上、前立腺がんに関する解説でした。