50.症状と対処法

【2026年更新】がん患者さんの便秘について。副作用・後遺症の原因と対処法・治療法を分かりやすく解説

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はじめに

こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。

がん闘病中に便秘が続くことは決して珍しくありません。実際、がん患者さんの約60%に便秘の症状が現れるとされています。

便秘は軽く考えられがちですが、患者さんにとっては非常につらい症状です。適切に対処しないと、食欲不振や吐き気、腹痛などを引き起こし、生活の質を低下させる原因となります。場合によっては、腹部や消化器のがんによる消化管の狭窄など、重大な問題が隠れていることもあります。

この記事では、がん患者さんに起こる便秘の原因から、最新の治療法まで、2026年時点の医療情報に基づいて詳しく解説します。

便秘とは何か

便秘は、便が腸内に滞って排便回数が減ったり、便を快適に出せなくなったりする状態を指します。日本消化管学会が2023年に発表した「便通異常症診療ガイドライン2023」では、便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義しています。

具体的には、以下のような症状が見られる場合、便秘と判断されます。

症状の種類 具体的な内容
排便回数の減少 週に3回未満の排便、数日以上排便がない状態
便の性状の変化 兎糞状便や硬便、便の量が少ない
排便時の困難感 強いいきみが必要、排便に時間がかかる
残便感 便がすっきり出た感じがない、便が残っている感じ
その他の症状 腹部の張り、排便の間隔が不規則

重要なのは、1日1回の排便があっても、量が少ない、すっきり感がない、便が硬いといった場合も便秘に含まれるということです。排便回数だけでなく、「心地よい排便ができているか」という点が大切です。

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がん患者さんに便秘が起こる主な原因

がん自体による便秘

がんの増大に伴って、消化管が圧迫されたり狭窄したりすることで便秘が起こります。特に大腸がん、卵巣がん、膵臓がんなどの腹部のがんでは、腫瘍が直接消化管に影響を与えることがあります。

また、がん性腹膜炎による腸蠕動運動の異常や、がんによる消化管の癒着や狭窄による不完全消化管閉塞(サブイレウス)も原因となります。この場合、頑固な便秘と水様性下痢を繰り返すことがあり、注意が必要です。

手術後の便秘

手術による便秘には、いくつかの要因があります。

全身麻酔を使用した手術後は、腸管の運動麻痺が起こり、術後数日間は便秘が生じます。術後72時間以上経過しても排ガスがない場合は、術後イレウス(腸閉塞)の可能性があり、医療機関での適切な判断が重要です。イレウスは致死的となることがあるため、早期の発見と対処が必要です。

また、開腹手術後には腸管癒着による便秘も起こります。手術により腸管や腸膜の漿膜が損傷され、その修復過程で癒着が生じます。癒着により腸が捻転・狭窄することで、便の通過障害が起きるのです。

さらに、腸管吻合部の狭窄による便の通過障害も見られます。術後の体動低下や麻薬性鎮痛薬の使用、電解質異常、脱水なども便秘の原因となります。

化学療法(抗がん剤治療)による便秘

抗がん剤による便秘は、薬剤の種類によって発生頻度や程度が異なります。

特に便秘を引き起こしやすい抗がん剤として、以下のものが知られています。

薬剤の種類 代表的な薬剤名 便秘が起こる理由
ビンカアルカロイド系 ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン 末梢神経の微小管を阻害し、自律神経機能異常により腸管運動を抑制
タキサン系 パクリタキセル、ドセタキセル 微小管阻害作用により腸管の蠕動運動が低下
トポイソメラーゼ阻害薬 イリノテカン 重度の下痢の後に便秘、難治性の麻痺性イレウスになる場合も
その他 ボルテゾミブ、サリドマイド 消化管運動への影響

また、抗がん剤治療に伴う悪心・嘔吐、食欲低下、味覚障害により、食事や水分の摂取量が低下することも便秘の原因となります。抗がん剤投与後の倦怠感による活動量の低下も、腸の動きを鈍らせます。

制吐薬による便秘

化学療法の副作用対策として使用されるセロトニン受容体拮抗薬(5-HT3受容体拮抗薬)は、便秘を引き起こします。代表的な薬剤には、オンダンセトロン(ゾフラン)やグラニセトロン(カイトリル)などがあります。

これらの薬剤は、セロトニンが作用する受容体をブロックすることで吐き気を抑えますが、同時に腸蠕動も抑制されるため、便秘となります。

オピオイド鎮痛薬による便秘

がん患者さんの便秘で特に重要なのが、オピオイド誘発性便秘症(OIC:Opioid-Induced Constipation)です。

オピオイド鎮痛薬を使用している患者さんの40~80%に便秘が認められ、耐性が生じにくいため、オピオイド使用期間中は継続的な対策が必要となります。2024年の筑波大学と富山大学の研究では、オピオイド投与中のがん患者さんの51~87%にOICが発生していることが報告されています。

オピオイドが便秘を引き起こすメカニズムは以下の通りです。

  • 消化管に存在する末梢のμオピオイド受容体に作用
  • 腸管分泌の低下
  • 蠕動運動の低下
  • 腸管からの水分吸収の亢進
  • 肛門括約筋の緊張上昇

これにより、便が硬くなり、排便が非常に困難になります。重要なのは、オピオイドの鎮痛作用には耐性が生じても、便秘への耐性は生じないという点です。

代表的なオピオイド鎮痛薬には、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデイン、トラマドール、ペンタゾシン、ブプレノルフィンなどがあります。

放射線治療による便秘

放射線治療の副作用として便秘が起こることがあります。照射部位や照射野によって頻度や重症度が異なりますが、腹部や骨盤への放射線照射では、腸管運動に影響を与えることがあります。

その他の原因

がん患者さんの便秘には、以下のような要因も関係します。

  • 精神的・心理的な刺激:不安、恐怖、緊張、ストレスなどによる自律神経への影響
  • 運動量の低下:体力低下や倦怠感により活動量が減少
  • 食事量の減少:食欲不振により食物繊維や水分の摂取が不足
  • 併存疾患や合併症治療薬:降圧薬、気管支拡張薬、抗不整脈薬、抗うつ薬などの副作用
  • 止痢薬の過剰摂取:下痢止めの使い過ぎ

便秘への基本的な対処法とケア

便秘が起きた際には、まず症状を客観的に把握することが重要です。

排便状況の記録

以下の項目を記録しましょう。

  • 便秘の発症時期
  • 排便回数
  • 便の状態(ブリストル便形状スケールを参考に)
  • 持続期間
  • 随伴症状(腹痛、腹部膨満感など)

これらの情報は、医師に報告する際に非常に役立ちます。

生活習慣の改善

薬物療法と並行して、以下のような生活習慣の改善も効果的です。

対処法 具体的な方法
食物繊維の摂取 豆類、イモ類、きのこ類、ごぼう、たけのこ、海藻、こんにゃく、果物、穀物などを積極的に摂取。厚生労働省の食事摂取基準(2025年版)では、成人男性で1日20~22g以上、成人女性で17~18g以上の食物繊維摂取が推奨されています
水分摂取 1日1.5~2L程度の水分を摂取。脱水を防ぐことが便秘予防に効果的
適度な脂肪摂取 腸粘膜を刺激し、スムーズな排便を促す
乳酸菌の摂取 ヨーグルトなど乳酸菌や生きたビフィズス菌を含む食品で腸内環境を整える
運動 1日10~15分程度の軽い運動や散歩。ベッド上でも腹筋運動やストレッチが効果的
腹部の温熱療法 腹部や腰部を温める、腸のマッサージ
排便習慣 毎朝、朝食後など決まった時間にトイレに行く習慣をつける

ただし、食欲不振や病状によっては、食事や水分に制限がある場合もあります。腸閉塞、イレウス、腸管癒着、大腸がんなどの場合は、主治医や管理栄養士によく相談してください。

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便秘の薬物治療

医療機関で行われる主な便秘の薬物治療について、種類ごとに解説します。

浸透圧性下剤(機械的下剤)

腸内の水分を取り込むことで便をやわらかくし、排便を促す薬剤です。

薬剤名 商品名例 特徴
酸化マグネシウム マグミット 広く使用されているが、高マグネシウム血症に注意が必要。定期的な血液検査が推奨される
ラクツロース ラグノス 腸内で分解されて浸透圧を高める
ポリエチレングリコール モビコール 2018年以降に日本で使用可能になった新しい浸透圧性下剤

刺激性下剤

腸管を刺激して蠕動運動を促進する薬剤です。頓用または短期間の使用が推奨されています。

薬剤名 商品名例 注意点
センノシド プルゼニド 長期連用により耐性化や習慣化の可能性がある
ピコスルファートナトリウム ラキソベロン 大腸を刺激して排便を促す

上皮機能変容薬

腸液の分泌を促進し、便を軟らかくする薬剤です。

薬剤名 商品名 作用機序
ルビプロストン アミティーザ 小腸での水分分泌を促進し、便を軟化させる
リナクロチド リンゼス 腸液分泌促進と腸管運動促進の両方の作用を持つ
エロビキシバット水和物 グーフィス 2018年以降に使用可能になった胆汁酸トランスポーター阻害薬

オピオイド誘発性便秘症専用薬

2017年に承認されたナルデメジントシル酸塩(商品名:スインプロイク錠0.2mg)は、OICに対する画期的な治療薬です。

ナルデメジンは、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(PAMORA)で、消化管に存在するμオピオイド受容体に結合し、オピオイドの末梢性作用に拮抗することでOICを改善します。重要なのは、中枢のμ受容体には影響を与えないため、オピオイドの鎮痛効果を損なうことなく、便秘だけを改善できる点です。

2024年9月に筑波大学と富山大学が発表した研究では、がん患者がオピオイドの使用を開始する際にナルデメジンを併用することで、OICを予防でき、生活の質を向上させる効果があることが示されました。14日目に便秘になっていない患者の割合は、ナルデメジン群で64.6%であったのに対し、プラセボ群では17.0%でした。

用法・用量は、1回0.2mgを1日1回経口投与です。効果発現時間は約5時間とされています。

注意点として、消化管閉塞またはその疑いがある患者、既往歴があり再発のおそれが高い患者には投与できません。また、オピオイドの投与を中止する場合には、ナルデメジンの投与も中止する必要があります。

坐剤・浣腸

種類 商品名例 使用方法
発泡性坐剤 新レシカルボン坐剤 直腸に挿入すると二酸化炭素を発生させ、直腸を刺激して排便を促す
浣腸薬 グリセリン浣腸液 直腸の粘膜を刺激して腸の運動を促し、便をやわらかくする

直腸診で便を触れない場合には下剤などで腸の動きを改善し、便を触れる場合には下剤は使用せずに坐薬や浣腸を使用することが推奨されます。

整腸薬

腸内細菌のバランスを整える薬剤です。

  • ラクトミン(ビオフェルミン)
  • ビフィズス菌(ラックビー)

漢方薬

大建中湯などの漢方薬は、イレウスの治療や予防、便秘に伴う腹部膨満感・腹痛などにも効果があるとされています。

手術後の便秘への対応

手術後の便秘に対しては、以下のような対応が行われます。

早期離床

開腹手術後の便の通過障害に対しては、術後早期(早ければ1日目)から離床して、腸蠕動の促進を図ることで予防します。

食事療法

消化の悪い食品(硬い繊維を含む野菜、穀類、高脂肪食、イカ・タコ・干物などの魚介類など)を避けます。

排便コントロール

整腸薬や緩下薬を活用し、便の状態や排便をコントロールします。

イレウスへの対応

術後イレウスが疑われる場合、基本的には腸管を休めることが優先されます。絶飲食、補液投与、胃管やイレウス管挿入などの保存的治療が行われます。保存的治療を行っても症状(腹痛、腹部膨満感、排ガス・排便の消失など)が続く場合は、手術が検討されます。

患者さんが知っておくべき重要なポイント

便秘を過小評価しない

便秘は患者さんのQOLを低下させ、場合によっては痛みよりも大きな苦痛を引き起こす可能性があります。食べていない場合でも、腸からの分泌物、粘膜表面の落屑、腸内細菌などのため排泄は起こります。便秘を放置すると、食欲不振、悪心・嘔吐、腹痛、排尿困難、尿失禁、せん妄の誘因となることがあります。

医師への報告

体調の変化や不調については、必ず医師に報告しましょう。便秘であっても同様です。遠慮や羞恥心から便秘について詳細を話さない患者さんも多いですが、適切な治療のためには正確な情報が必要です。

排便回数にこだわらない

便秘の治療では、1日の排便回数が何回になるかということよりも、「心地よい排便ができるようになること」が大切です。すっきり感を重視してください。

下剤の調整

下剤の効き目には個人差があります。処方された量を目安として、便の状況を見ながら自分に合った量に調整することが推奨される場合もあります。ただし、調整方法については必ず医師や薬剤師に相談してください。

まとめ

がん患者さんの便秘は、がん自体、手術、抗がん剤、放射線治療、オピオイド鎮痛薬、制吐薬など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。

便秘への対応は、生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせることが基本です。特にオピオイドを使用している患者さんでは、2017年に承認されたナルデメジン(スインプロイク)という専用薬が使用できるようになり、治療の選択肢が広がっています。

便秘は決して軽視できない症状です。適切に対処しないと、QOLの低下だけでなく、治療の継続が困難になることもあります。症状が現れたら、遠慮せずに医療チームに相談し、自分に合った対処法を見つけることが大切です。

参考文献・出典情報

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「便秘 もっと詳しく」
  2. 日本緩和医療学会「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2017年版」
  3. 日本消化管学会「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」南江堂
  4. 小野薬品工業「がんに伴う便秘への対策」
  5. 筑波大学・富山大学「オピオイド誘発性便秘の予防に関する研究」2024年9月
  6. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「スインプロイク錠添付文書」
  7. EAファーマ株式会社「緩和ケアにおける便秘治療のポイント」
  8. アルメディアWEB「がん患者における便秘とは」
  9. 塩野義製薬「オピオイド誘発性便秘症治療薬ナルデメジンの中国における新薬承認申請の受理について」2025年5月
  10. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

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本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

「腰がすこし痛むだけで、再発か?転移か?と不安で一睡もできなくなる」

「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

こんな苦しみに溢れています。

年齢を重ねると、たとえ健康であっても、つらいことはたくさんありますよね。

それに加えて「がん」は私たちから、家族との時間や、積み重ねたキャリア、将来の夢や希望を奪おうとするのです。

なんと理不尽で、容赦のないことでしょうか。

しかしあなたは、がんに勝たねばなりません。

共存(引き分け)を望んでも、相手はそれに応じてくれないからです。

幸せな日々、夢、希望、大切な人を守るには勝つしかないのです。

では、がんに勝つにはどうすればいいのか?

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