
悪性リンパ腫のタイプ別・ステージ別の予後と生存率
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
悪性リンパ腫と診断された患者さんやご家族にとって、治療後の見通しや生存率は最も気になる情報の一つです。悪性リンパ腫は100種類以上のタイプに分類される複雑な疾患で、タイプやステージによって予後は大きく異なります。
この記事では、2026年1月現在の最新データをもとに、悪性リンパ腫のタイプ別・ステージ別の予後と生存率について詳しく解説します。治療方針を考える際の参考にしていただければと思います。
悪性リンパ腫とはどのような病気か
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化して増殖する血液のがんです。リンパ系組織は全身に分布しているため、リンパ節だけでなく胸腺、扁桃腺、脾臓、胃や腸のリンパ組織など、体のさまざまな部位に発生する可能性があります。
日本では年間約36,000人が悪性リンパ腫と診断されており、がん全体の中では比較的頻度の高い疾患です。40歳以降で発生率が増加し、年齢とともに罹患リスクが高まります。男女比では男性がやや多い傾向にあります。
悪性リンパ腫の主な症状
初期症状として最も多いのは、首やわきの下、鼠径部などのリンパ節の腫れです。これらの腫れは通常、痛みを伴わないことが特徴で、そのため見過ごされやすい面があります。
全身症状としては、原因不明の発熱、寝汗、体重減少といった「B症状」と呼ばれる症状が現れることがあります。その他、倦怠感、かゆみ、食欲低下、貧血なども報告されています。発生部位によっては咳や腹痛、下痢などの症状が現れる場合もあります。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
悪性リンパ腫の分類とタイプ
悪性リンパ腫は、大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分類されます。日本では非ホジキンリンパ腫が全体の約90%以上を占めており、ホジキンリンパ腫は約5~10%と比較的まれです。
ホジキンリンパ腫
ホジキンリンパ腫は、リード・シュテルンベルク細胞という特徴的な細胞がみられることで他のリンパ腫と区別されます。20歳代の若年者に多く発生する傾向があり、欧米では比較的多くみられますが、日本では少数派です。一部のホジキンリンパ腫は、エプスタイン・バー・ウイルス(EBウイルス)の感染が原因になると考えられています。
非ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫は、がん化したリンパ球の種類によってB細胞性、T細胞性、NK細胞性に分けられます。日本ではB細胞性リンパ腫が大半を占めています。
さらに、病気の進行速度によって低悪性度、中悪性度、高悪性度の3段階に分類されます。低悪性度は進行が緩やかで年単位、中悪性度は月単位、高悪性度は週単位で進行するとされています。ただし、この分類は無治療の場合の進行速度を示したもので、治療効果とは必ずしも一致しません。
悪性リンパ腫の検査と診断
診断確定には、腫れたリンパ節や疑わしい組織の一部を採取して調べる生検が必要です。1回の生検で診断が確定できない場合、経過を観察しながら再度生検を行うこともあります。
血液検査では、肝機能や腎機能、LDH(乳酸脱水素酵素)、CRP(C反応性蛋白)などの値を測定します。骨髄への浸潤や中枢神経への広がりを調べるため、骨髄穿刺や腰椎穿刺といった検査も実施されます。
画像検査では、胸部X線、超音波、CT、MRI、PET-CTなどが用いられ、病気の進行度や転移の有無を確認します。
悪性リンパ腫のステージ分類
悪性リンパ腫のステージは、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫ともにⅠ期からⅣ期の4段階に分類されます。他のがんで用いられるTNM分類とは異なり、AnnArbor分類やLugano分類という方法が使われます。
| ステージ | 病変の広がり |
|---|---|
| Ⅰ期 | 1つのリンパ節領域、または1つのリンパ節外臓器に病変が限局している状態 |
| Ⅱ期 | 2つ以上のリンパ節領域に病変があるが、横隔膜を境に上半身または下半身のどちらか一方にとどまっている状態 |
| Ⅲ期 | 横隔膜を境に上下両側のリンパ節領域に病変が認められる状態 |
| Ⅳ期 | リンパ節以外の臓器(肝臓、肺、骨髄など)に広く浸潤している、または遠隔リンパ節に転移している状態 |
Ⅰ期とⅡ期は「限局期」、Ⅲ期とⅣ期は「進行期」と呼ばれることもあります。
ホジキンリンパ腫の予後と生存率
ホジキンリンパ腫は、悪性リンパ腫の中でも治療効果が高く、予後が良好なタイプとされています。現在では化学療法と放射線療法の組み合わせにより、60~80%以上の患者さんが治癒するとされています。
ホジキンリンパ腫のステージ別5年生存率
| ステージ | 5年生存率 |
|---|---|
| Ⅰ期 | 90%以上 |
| Ⅱ期 | 80~90% |
| Ⅲ期 | 65%前後 |
| Ⅳ期 | 45%前後 |
限局期であれば、抗がん剤と放射線療法の併用により、10年間治療後にがんが進行せず安定した状態を維持できる患者さんが90%以上います。進行期でも、予後不良因子が少なければ、5年以上の無増悪期間が得られる患者さんは80%以上とされています。
非ホジキンリンパ腫の予後と生存率
非ホジキンリンパ腫は多くの病型があり、それぞれで予後が大きく異なります。悪性度や細胞の種類、年齢、健康状態、治療への反応など、多くの要因が予後に影響します。
非ホジキンリンパ腫のステージ別5年生存率
| ステージ | 5年生存率 |
|---|---|
| Ⅰ期 | 約87% |
| Ⅱ期 | 約74% |
| Ⅲ期 | 約64% |
| Ⅳ期 | 約55% |
悪性リンパ腫全体の5年生存率は、2009~2011年のデータで男性66.4%、女性68.6%、全体で67.5%となっています。医療の進歩により、現在ではこれらの数値よりも生存率が向上していると考えられます。
悪性度別の特徴
低悪性度リンパ腫は進行が緩やかで、Ⅰ期~Ⅱ期では放射線療法により約50%の患者さんで治癒が期待できます。Ⅲ期~Ⅳ期の平均生存期間は10年前後とされています。ただし、低悪性度リンパ腫は再発率が高く、長期的な経過観察が必要です。
中・高悪性度リンパ腫は進行が速いものの、抗がん剤がよく効くため、適切な治療により高い治療効果が期待できます。日本人に最も多いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、R-CHOP療法により70%以上の患者さんで完全寛解が得られます。
最新の治療方法(2026年1月現在)
化学療法(抗がん剤治療)
悪性リンパ腫は、化学療法で治癒が期待できる数少ないがんの一つです。現在、非ホジキンリンパ腫のB細胞型に対する標準治療は、R-CHOP療法(リツキシマブ+CHOP療法)です。CHOP療法は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの4剤を組み合わせた治療法で、これに分子標的薬のリツキシマブを加えることで治療効果が向上しました。
ホジキンリンパ腫に対しては、ABVD療法が第一選択となっています。これはドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンの4剤を組み合わせた治療法です。
分子標的薬
リツキシマブ(リツキサン)は、B細胞性リンパ腫の細胞表面に存在するCD20というたんぱく質を標的とした抗体製剤です。患者さんの免疫細胞ががん細胞を攻撃しやすくする働きがあり、副作用が比較的少ないことが特徴です。
近年では、第2世代抗CD20抗体薬であるオビヌツズマブ(ガザイバ)も使用されています。リツキシマブと比較して、さらに高い治療効果が報告されています。
その他、BTK阻害薬のイブルチニブ、BCL-2阻害薬のベネトクラクスなど、新しい分子標的薬が続々と承認され、治療選択肢が広がっています。
免疫療法
2019年にCAR-T細胞療法(キメラ抗原受容体T細胞療法)の製剤キムリアが保険承認され、再発・難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して使用されています。患者さん自身のT細胞を体外で遺伝子改変し、がん細胞を攻撃する能力を強化してから体内に戻す治療法です。
2023年には、CAR-T療法に類似した作用機序を持つ二重特異性抗体エプコリタマブが発売され、より多くの施設で免疫療法が受けられるようになりました。
ホジキンリンパ腫に対しては、免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ(ニボルマブ)が2016年に承認されています。
放射線療法
悪性リンパ腫は放射線に対する感受性が高く、特にホジキンリンパ腫のⅠ期や非ホジキンリンパ腫の低悪性度群では、放射線療法のみで治癒が期待できる場合があります。
通常は週4~5日、1日1回の照射を3~5週間のサイクルで行います。化学療法と組み合わせることで、治療効果を高めることができます。
造血幹細胞移植
化学療法が効果を示しても治癒が望めない場合や、再発した場合には、造血幹細胞移植が検討されます。自分の造血幹細胞を使う自家移植と、ドナーから提供された造血幹細胞を使う同種移植があります。
自家移植は再発リスクの高いリンパ腫や治療抵抗性の症例に対して行われることが多く、同種移植はより進行した病状に適用されます。同種移植では、移植されたドナーの免疫細胞ががん細胞を攻撃する「移植片対腫瘍効果」が期待されますが、移植片対宿主病(GVHD)などのリスクも伴います。
悪性リンパ腫の治療費と経済的支援
悪性リンパ腫の治療には、検査費用、入院費、抗がん剤代、放射線治療費など、さまざまな費用がかかります。特に新しい分子標的薬や免疫療法は高額になる傾向があります。
治療費の目安
標準的なR-CHOP療法を6サイクル行う場合、医療費総額は数百万円に達することがあります。CAR-T細胞療法では、薬剤費だけで3,000万円を超える高額な設定となっています。
実際の患者さんの自己負担額は、公的医療保険の適用により3割(または1~2割)となりますが、それでも1回の治療で数十万円の負担となる場合があります。
高額療養費制度
1か月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、その超えた金額が払い戻される制度です。限度額は年齢や所得によって異なりますが、標準的な所得区分の70歳未満の方で月額約8万円(多数回該当の場合は約4万4,000円)となっています。
事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられます。マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関では、認定証の準備が不要になる場合もあります。
その他の支援制度
医療費控除、傷病手当金、障害年金など、利用できる支援制度があります。治療費に関する不安がある場合は、医療機関のソーシャルワーカーやがん相談支援センターに相談することをおすすめします。
予後を左右する因子
悪性リンパ腫の予後は、ステージやタイプだけでなく、以下のような因子によっても影響を受けます。
年齢:64歳以下の若い年代の方が、高齢者よりも生存率が高い傾向にあります。
全身状態:治療開始時の体力や日常生活動作能力が良好な方が、予後が良いとされています。
血液検査データ:LDHの値が高い場合や、白血球数、ヘモグロビン値などに異常がある場合は、予後不良因子となります。
病変の広がり:リンパ節外臓器への浸潤の数や部位も予後に影響します。
遺伝子異常:特定の遺伝子異常を持つタイプは、予後が異なることがわかってきています。
治療後の経過観察
治療で完全寛解が得られた後も、再発の早期発見のため定期的な経過観察が必要です。一般的に、治療後3年以降の再発率は低くなり、治癒している可能性が高くなります。
経過観察では、血液検査、画像検査(CT、PET-CTなど)、身体診察などが行われます。頻度は治療直後は1~3か月ごと、その後は徐々に間隔を延ばしていきます。
まとめ
悪性リンパ腫の予後は、タイプやステージによって大きく異なります。ホジキンリンパ腫は予後が良好で、限局期では90%以上の5年生存率が期待できます。非ホジキンリンパ腫も、適切な治療により多くの患者さんで良好な経過が得られています。
医療の進歩により、分子標的薬や免疫療法など新しい治療法が次々と登場しており、治療成績は年々向上しています。ご自身の病型、ステージ、全身状態などを正しく理解し、主治医とよく相談しながら最適な治療を選択することが大切です。
治療費の負担が心配な場合は、高額療養費制度などの支援制度を積極的に活用しましょう。医療機関のソーシャルワーカーやがん相談支援センターが相談に応じていますので、遠慮なく相談しましょう。
参考文献・出典情報
1. 国立がん研究センターがん情報サービス「悪性リンパ腫」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/25_ml.html
2. がん治療.com「悪性リンパ腫」
https://www.ganchiryo.com/type/index17.php
3. 日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」
https://www.jsh.or.jp/
4. 日本造血・免疫細胞療法学会「CAR-T細胞療法について」
https://www.jstct.or.jp/modules/cart_t/
5. 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/
6. 日本臨床腫瘍学会「リンパ腫・骨髄腫に対する新たな免疫治療」
https://www.jsmo.or.jp/
7. 中外製薬「ガザイバ製品情報」
https://www.chugai-pharm.co.jp/
8. がんメディ「悪性リンパ腫のステージ別生存率と平均余命」
https://ganmedi.jp/ml/stage-lifeexpectancy/
9. ブリストル・マイヤーズ スクイブ「りんぱしゅ通信」
https://www.rinpashu.jp/
10. 日本医師会雑誌「悪性リンパ腫/慢性リンパ性白血病に対する分子標的薬治療の進歩」
https://www.jstage.jst.go.jp/