
胆管がん・胆のうがんにおける放射線治療の位置づけ
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
胆管がんや胆のうがんは、早期発見が難しく、見つかった時点で進行していることが多いがんです。
特に胆のうがんは胆石を合併していることが多く、黄疸症状が出てから診断されるケースが少なくありません。これらのがんに対する治療は手術が中心ですが、手術ができない場合や手術の効果を高めるために、放射線治療が選択されることがあります。
胆管がん・胆のうがんに対する放射線治療は、主に次のような目的で実施されます。
まず、手術による治療効果を高めることです。手術前に照射することで腫瘍を縮小させ、手術をしやすくする場合があります。また、手術後に再発を防ぐ目的で放射線治療を行うこともあります。
次に、手術ができない場合の延命効果です。がんが進行していて手術が適用できない患者さんに対して、放射線治療で腫瘍の進行を抑え、生存期間の延長を図ります。
さらに、黄疸を減らすことや、痛みなどの症状を緩和する目的でも用いられます。これらは対症療法として重要な役割を果たしています。
放射線治療の適応となる患者さん
胆道がん診療ガイドラインによれば、放射線治療の適応は慎重に判断される必要があります。主に以下のような患者さんが放射線治療の対象となります。
早期がんや胆管の周囲に限局した胆管がんで、がん病巣に放射線を集中できる場合は、腫瘍抑制効果が期待できます。胆道は身体の深部にあるため、深達性の高い放射線が必要です。
手術が不可能で遠隔転移のない場合、がんの進行抑制を目的として放射線治療を行う場合があります。ただし、有効性については十分な検討がなされておらず、標準治療ではありません。
また、高齢や合併症がある場合、あるいは手術を希望されない場合などに根治的放射線治療を選択することが可能です。
骨や脳への転移に対しては、痛みを和らげる目的で放射線治療が有効です。緩和目的の照射は、症状を速やかに改善するため、比較的短期間で集中的に実施されます。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
使用される放射線の種類とエネルギー
胆管がん・胆のうがんの治療では、主にX線が用いられます。胆道は身体の深部に位置しているため、深達性の高い10メガボルト(MV)のエックス線が使用されることが一般的です。
放射線のエネルギーは、患者さんの体格や病巣の位置によって適切に調整されます。リニアック(医療用の直線加速器)から出力されるX線と電子線を使い分け、最適な治療を実施します。
近年は、粒子線治療(陽子線治療や重粒子線治療)も一部の施設で行われています。粒子線治療は、がんに対してピンポイントで高い線量を照射できる一方で、周囲の正常組織への影響を抑えられるという利点があります。特に肝内胆管がんに対しては、粒子線治療が選択肢の一つとして検討されることがあります。
放射線治療の具体的な方法と照射技術
外部照射の標準的な照射法として、前後対向2門照射法、直交2門照射法、3門照射法のいずれかが実施されます。これらは複数の方向から放射線を照射することで、がん病巣に効果的に線量を集中させる方法です。
最近では、より高精度な照射技術も導入されています。
強度変調放射線治療(IMRT)は、放射線ビームの強度を制御し、腫瘍に最大の線量を照射しながら、周囲の正常組織への影響を最小限に抑える技術です。複雑な形状の腫瘍や、臓器の近くに位置する腫瘍の治療に特に効果的です。
画像誘導放射線治療(IGRT)は、治療前に画像を撮影し、数ミリ単位での位置調整を行うことで、より正確な照射を可能にします。
定位放射線治療は、がん病巣にピンポイントで照射する治療法です。多方向(360度)から照射できる放射線治療機器を使用し、精密な照射を行います。
胆のうがん治療には、密封小線源を用いた腔内照射法が実施されることもあります。これは、放射線の線源を体内に一時的に挿入する方法で、外部照射法と併用されることが多くあります。特に胆管がんでは、体の外から放射線を照射する通常の外照射に加えて、小さな放射線の線源を胆管内に短時間挿入する小線源治療を併用する場合があります。
使用される放射線量と治療期間
放射線量は、グレイ(Gy)という単位で表されます。グレイは、放射線が物質(人体を含む)にあたったときに、どれくらいのエネルギーが吸収されたかを示す単位です。
外部照射治療法の根治線量は50~60グレイが標準です。一般的には、1日あたり1.8~2グレイを、1週間に5回、5~6週間かけて照射します。
具体的な治療スケジュールは次のようになります。
月曜日から金曜日まで毎日治療を受け、週末(土曜日・日曜日)は休みます。これを5~6週間繰り返すことで、合計で25~30回程度の照射を行い、総線量として50~60グレイに達します。
1回の照射にかかる時間は、位置合わせを含めて15~20分程度です。実際に放射線を照射している時間は1~2分程度で、痛みや熱さを感じることはありません。
放射線治療では臓器ごとに照射できる線量が決められています。肝臓は30~55グレイですが、概ねがん治療においては、一つの部位で50~60グレイが限度量となっています。これ以上の線量は正常細胞にも副作用が起こる可能性があります。
化学療法との併用治療
放射線治療は、化学療法(抗がん剤治療)と併用されることがあります。これを化学放射線療法と呼びます。
併用される抗がん剤には、S-1、シスプラチン、塩酸ゲムシタビンなどがあります。これらの薬剤は、放射線治療期間中に併用することで、治療効果の改善が期待されます。
化学放射線療法のメリットは、放射線治療で対応できない微小な遠隔転移巣を抗がん剤によって制御できる点に加え、抗がん剤によって局所効果が増強されることが挙げられます。
切除不能胆道がんに対するファーストラインの標準治療として、ゲムシタビンとシスプラチンの併用化学療法が確立しています。外来で週1回、3時間程度かけて点滴し、2週にわたり連続投与し、3週目は休薬します。このような3週間を1コースとして治療を繰り返します。
治療中の通院と入院について
放射線治療は、基本的に外来通院で受けることができます。働きながらでも治療を継続することが可能です。
ただし、遠方の患者さんで通院が難しい場合や、体力的に毎日の通院が困難な場合、あるいは抗がん剤投与も必要な場合には、入院して治療を受けることもあります。
治療期間は5~6週間程度と比較的長期にわたるため、患者さんの生活状況や体力を考慮して、外来治療か入院治療かを決定します。
放射線治療の副作用と後遺症
放射線治療には、急性期の副作用と晩期の後遺症があります。
急性期(治療中から治療直後)に現れる副作用としては、次のようなものがあります。吐き気、食欲不振、全身倦怠感などです。これらは照射部位や照射範囲によって程度が異なりますが、適切な対症療法で軽減することができます。
腹部への照射では、吐き気や下痢などの消化器症状が出ることがあります。胃や小腸からの出血、胃排泄不全が生じる可能性もあります。
晩期(治療後数ヶ月から数年後)に発生する可能性のある後遺症には、肝臓障害、胆のう炎、腸管損傷などがあります。照射する範囲を広くすると、放射性肺炎などの重篤な副作用が起きる可能性もあります。
放射線をあてた部位はしばらく刺激に弱い状態です。直射日光や刺激物に触れないよう注意が必要です。また、体表面にマーキングをした箇所は、治療が終わるまで消さないようにすることが大切です。
副作用がひどい場合は、治療を中止することもあります。担当医と密にコミュニケーションを取り、体調の変化を報告することが重要です。
治療成績と生存率
胆管がん・胆のうがんの治療成績は、手術ができるかどうかで大きく異なります。
手術例の5年生存率は、胆のうがんで約42%、胆管がんで約26%と報告されています。ステージ別では、ステージI期で約60~70%、ステージII期で約50~55%、ステージIII期で約20~25%です。
一方、非切除例では長期的な予後は厳しく、放射線治療を行った場合の5年生存率は約5%程度と報告されています。
ただし、これは過去のデータであり、近年の治療技術の進歩により、成績は改善傾向にあります。特に、粒子線治療や化学放射線療法の進歩により、切除不能症例でも一部の患者さんで良好な成績が得られるようになってきました。
肝内胆管がんでは、切除できた場合の5年生存率は約41.5%、手術適応とならなかった場合は約26.6%です。切除不能と診断された患者さんでも、化学療法が奏功し、根治切除が可能となるconversion surgery(転換手術)が行われるケースも出てきており、切除不能と診断されてからconversion surgeryを受けて5年無再発生存を達成している報告もあります。
放射線治療を受ける際の注意点
放射線治療を受ける際には、いくつかの注意点があります。
まず、予定されていた回数の照射を最後まで受けることが重要です。放射線治療は、最期まで受けることを前提に治療計画が組まれています。治療を途中でやめてしまうと、当初想定したような効果が得られない可能性があります。体調が良くなっても途中でやめず、担当医の指示に従って治療を受けることが大切です。
栄養バランスのよい食事を十分に摂ることも重要です。回復を早めるためにも、できる限り治療中は無理をせずに体調に気を配るようにしましょう。
放射線治療を企図する胆管がんに対しては、メタリックステントの留置を避けることが推奨されています。これは、金属製のステントが放射線の線量分布に影響を与える可能性があるためです。
治療中は、放射線腫瘍医、医学物理士、診療放射線技師、看護師などの多職種チームがサポートします。何か気になることや不安なことがあれば、遠慮なく医療スタッフに相談してください。
最新の放射線治療技術
近年、放射線治療の技術は目覚ましい進歩を遂げています。
強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた定位放射線治療は、脳転移などに対して高い制御効果が期待できます。患者さんに負担の少ない短い治療時間で実施できるという利点があります。
温熱療法(ハイパーサーミア)を併用する施設もあります。がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパッドで挟み込み、高周波電流を流して加温します。1回の加温時間は40~60分程度で、週に1~2回、放射線治療を行っている期間中に総5回程度実施します。
粒子線治療(陽子線治療や重粒子線治療)は、先進医療として一部の施設で実施されています。肝内胆管がんに対しては、化学療法を同時に併用する粒子線治療も行われており、より高い治療効果を目指しています。
定位放射線治療は、1回の線量を通常の放射線治療よりも大きくすることで、治療期間を短縮できる可能性があります。肺がんでは1回の線量は8~12グレイで合計線量50~60グレイで治療しますが、今後はさらに短期間で治療を完了できる方法が開発される可能性があります。
緩和ケアとしての放射線治療
放射線治療は、根治を目指す治療だけでなく、症状を軽減させる緩和治療としても重要な役割を果たしています。
骨や脳への転移に対する放射線治療は、痛みや神経症状を速やかに改善させる効果があります。緩和目的の照射は、症状を速やかに軽減することが求められるため、ほとんどの場合、2週間以内に完了するように集中的に照射します。また、痛みが再燃するような場合は、1回照射も行われます。
腫瘍が胆管や周囲の臓器を圧迫することで引き起こされる痛みや黄疸を軽減したり、腫瘍による出血を制御したりする効果も期待されます。
緩和ケアは、末期治療というわけではなく、がんの早期から生活の質を守るための治療として実施されています。がんの初期であっても体や心のつらさはあるため、最近の考え方では、緩和ケアはがんの早い時期から、生活を守り、自分らしい暮らしを保つために必要なこととして捉えられています。
治療費用と医療費助成制度
放射線治療は、原則的に標準治療として公的保険の範囲内で行われます。
外部照射による一般的な放射線治療の費用は、治療の内容や回数によって異なりますが、3割負担の場合で総額20~30万円程度となります。
強度変調放射線治療(IMRT)や定位放射線治療など、高精度な治療の場合は費用が高くなります。
粒子線治療(陽子線治療や重粒子線治療)は、一部のがん種を除いて先進医療となり、技術料は全額自己負担となります。肝内胆管がんに対する粒子線治療は、適応条件を満たせば保険診療として実施できる場合があります。
高額療養費制度を利用することで、1ヶ月あたりの医療費自己負担額には上限が設けられます。所得に応じて上限額が異なりますので、詳しくは医療機関の相談窓口や加入している健康保険にお問い合わせください。
今後の展望
胆管がん・胆のうがんは難治性のがんとされてきましたが、近年の治療技術の進歩により、予後の改善が期待されています。
術前術後の補助化学療法を組み合わせた集学的治療により、転移や再発を抑えて予後の改善を目指す研究が進められています。術後にS-1を4コース(半年間)行った場合の治療成績が良いというデータが報告されており、標準治療になりつつあります。
放射線治療においても、より高精度な照射技術の開発や、粒子線治療の普及により、治療成績の向上が期待されています。
また、免疫療法や分子標的薬といった新しい治療法も研究されており、これらと放射線治療を組み合わせることで、さらなる治療効果の向上が期待されています。
がんゲノム医療に対応した包括的がんゲノムプロファイル検査も推奨されるようになっており、個々の患者さんのがんの特性に応じた治療選択が可能になってきています。
参考文献・出典情報
- 国立がん研究センター がん情報サービス「胆道がん(胆管がん・胆のうがん・十二指腸乳頭部がん) 治療」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療の種類と方法」
- 日本肝胆膵外科学会「胆道がん診療ガイドライン」
- 産業医科大学病院「胆のう・胆管がん」
- 日本肝胆膵外科学会「胆管がん」
- がん研有明病院「胆道がん」
- 兵庫県立粒子線医療センター「肝内胆管がん」
- 日経メディカル「難治性の肝内胆管がんに希望の光」
- 国立国際医療センター「放射線治療について」
- 金原出版「肝内胆管癌診療ガイドライン 2021年版」