霊峰白山を御神体とする壮大な信仰
石川県白山市に鎮座する白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)は、
全国に約2,000社ある白山神社の総本宮として崇敬される、由緒ある神社です。
古くは崇神天皇7年(紀元前91年)に創建されたと伝わり、その歴史は2,000年を超えるとも言われています。
御祭神は、白山比咩大神こと菊理媛命(くくりひめのみこと)を主神に、
伊弉諾尊、伊弉冉尊の三柱。霊峰白山を御神体山と仰ぎ、
山岳信仰と深く結びついた自然信仰の拠点として長く信仰されてきました。
この地の自然環境と神聖さが融合した空間は、
心身に不安を抱える人々にとって、癒しと再生の祈りの場としての価値を持ち続けています。
がん封じ・病気平癒の信仰も深い
白山比咩神社では、病気平癒や心身健康の御祈祷が常時受け付けられており、
がん封じや手術の成功祈願、治療中の回復、再発防止、そして寛解後の感謝の祈りまで、多様な願いが捧げられています。
初穂料は1,000円から10,000円程度で、祈祷の内容や規模に応じて選択できます。
神職によるご祈祷では、祝詞の中に願主の名前と願意が丁寧に読み上げられ、神前に真摯な思いを届ける儀式が執り行われます。
また、病床にあるご本人に代わって、ご家族が代理で祈祷を受けることも可能で、
「祈りの場を持てたことが何よりの支えになった」という声も少なくありません。
境内に湧く霊水と自然の恵み
白山比咩神社の境内では、白山からの伏流水を汲み上げた霊水が湧いており、多くの参拝者がペットボトルなどに汲んで持ち帰っています。
かつてから「命の水」として親しまれてきたこの水は、がんや大病と向き合う人々にとって、“自然の力”としての信仰を体現する存在です。
白山の自然そのものが神として信仰されてきたこの土地では、霊水を口にすること、体にふれることが、「心身の浄化」や「回復の兆し」として意識されてきました。
病気平癒を願うお守りの授与
神社の授与所では、病気平癒守、心願成就守、水晶入りの健康守などが複数用意されています。
袋型や根付型、木札型と種類は多く、価格帯も500円~1,500円程度と求めやすい範囲に収まっています。
なかでも病気平癒守は、がん封じを願う方に人気があり、治療に臨む前や検査前に授かる人が多くいます。
また、ご本人用と家族用に分けて授与されるケースも多く、闘病を支える“心のアイテム”として、静かに寄り添い続けているのが特徴です。
絵馬に託される切なる願い
社殿前の絵馬掛所には、がん患者さんやその家族による真剣な願いが綴られた絵馬がずらりと並んでいます。
「手術が成功しますように」「家族がまた笑顔になりますように」といった言葉には、文字以上の思いが込められています。
祈りを可視化する絵馬の存在は、参拝者自身の心の整理を促すと同時に、他者との共鳴を生み出す力があります。
「自分だけじゃない」と感じられるその空間は、祈る者同士の静かな連帯を生み、がんとの向き合いにおける支えにもなります。
■ご祈祷の流れと所要時間
ご祈祷の申し込みは、社務所で随時受け付けています。
受付後、本殿にて神職が執り行う正式な神事の中で、病気平癒の祈願が行われます。
儀式には祝詞奏上、玉串拝礼、御神符授与などが含まれ、所要時間は20〜30分ほどです。
代理祈祷も受け付けており、がんの治療で現地に来られない方のために、家族が祈りを届ける手段として活用されています。
「直接行けなくても、願いが届いた」と安心されるケースも多く、心の距離を埋める祈りの手段として有効です。
回復後のお礼参りと人生の区切り
治療を終えた方が、再びこの神社を訪れ、お守りを返納し、絵馬に「感謝」を書き記す姿も珍しくありません。
がんという大きな経験に区切りをつけ、新しい日々を始めるための“心の儀式”として、お礼参りは多くの参拝者にとって特別な意味を持っています。
その行為は、ただのお参りではなく、「自分の物語を前に進めるための通過点」として、大きな意義を持っているのです。
アクセスと参拝環境
白山比咩神社は、北陸鉄道石川線「鶴来駅」から車で10分。
加賀白山バスを使えば、「一の宮」バス停から徒歩5分で到着します。
表参道・北参道・南参道の3か所に駐車場があり、合計で約460台分が確保されています。
境内は平坦に整備されており、車椅子の方や足元に不安のある方でも安心して参拝できる環境が整っています。
また、参道には古木が立ち並び、白山信仰に育まれた自然との一体感が感じられる散策路になっています。
四季折々の風景を楽しめるこの空間で、静かに自分と向き合う時間を持つことができます。
白山比咩神社は、「信仰は弱さではなく、力になる」という考えを体現している神社です。
自然と祈りが一体となったこの場所では、治療や検査という医療的現実の隣に、祈りによる心の回復というもうひとつの柱があります。