
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
山陽地方(岡山県・広島県・山口県)でサイバーナイフやトモセラピーといった先進的な放射線治療を検索している患者さんは、どの病院でどのような治療が受けられるのか、正確な情報を知りたいと考えていることでしょう。
放射線治療は、手術や薬物療法と並ぶがん治療の三本柱の一つです。近年、放射線治療の技術は進歩を続けており、サイバーナイフやトモセラピー、粒子線治療(陽子線・重粒子線)といった高精度な治療法が実用化されています。
これらの治療法は、がん病巣にピンポイントで放射線を照射できるため、周囲の正常な組織へのダメージを抑えながら、効果的にがん細胞を攻撃できます。しかし、これらの治療装置は非常に高額であり、導入している医療機関は限られているのが現状です。
本記事では、山陽地方でこれらの先進的な放射線治療が受けられる医療機関について、詳しく解説します。
山陽地方の先進放射線治療施設の現状
まず、山陽地方全体で見た場合、どのような治療がどこで受けられるのかを整理します。
| 治療法 | 岡山県 | 広島県 | 山口県 |
|---|---|---|---|
| サイバーナイフ | ◯(1施設) | × | × |
| トモセラピー | × | ◯(1施設) | × |
| 陽子線治療 | ◯(1施設) | × | × |
| 重粒子線治療 | × | × | × |
このように、山陽地方では先進的な放射線治療施設が限られているのが実情です。各治療法について、詳しく見ていきます。
サイバーナイフが受けられる施設
岡山旭東病院(岡山県岡山市)
山陽地方でサイバーナイフ治療が受けられるのは、岡山県の岡山旭東病院のみです。
所在地:岡山県岡山市中区倉田567-1
導入の経緯と機器の特徴:
岡山旭東病院は、2000年6月に日本で3番目、世界でも8番目という早い時期にサイバーナイフを導入しました。その後、2018年3月には最新機種である「サイバーナイフM6」へとリニューアルしています。
サイバーナイフM6では、従来機種と比較して線量率が2.5倍に向上し、治療時間が30〜50分程度だったものが20〜30分程度に短縮されました。また、可変式コリメータが導入されたことで、放射線ビームの太さを治療中にリアルタイムで自動的に切り替えることが可能になり、より複雑な形状のがんにも対応できるようになっています。
サイバーナイフは、ロボットアームに小型の放射線発生装置を搭載した定位放射線治療装置です。ミリ単位以下という高精度で動作し、細く弱いX線を多方向から患部のみに集約することで、周囲の正常な組織への影響を抑えて効果的に治療します。治療中の微細な体動による腫瘍の位置ずれも認識し、正しい位置に放射線を照射し続けることができます。
治療実績:
岡山旭東病院では、2000年の治療開始以来、累計で5,000例近い治療実績があります。年間では250〜300例前後の治療を実施しています。
治療した疾患の内訳は、肺がんや乳がんなどを原発とする転移性脳腫瘍が最も多く、全体の6割以上を占めています。転移性脳腫瘍は深部にあって手術が難しい場合や、多発性の腫瘍に対してサイバーナイフの効果が発揮されています。その他、悪性リンパ腫、髄膜腫、聴神経鞘腫などの治療実績もあります。
対応可能ながんの部位:
| 部位 | 詳細 |
|---|---|
| 頭蓋内腫瘍 | 転移性脳腫瘍、神経膠腫、脳動静脈奇形など |
| 頭蓋骨・頭蓋底腫瘍 | 頭蓋骨や頭蓋底に発生した腫瘍 |
| 頭頸部腫瘍 | 耳鼻科領域、口腔外科領域の腫瘍、頸椎・頚髄の腫瘍 |
| 肺がん | 原発性・転移性肺がん |
| 肝臓がん | 原発性・転移性肝臓がん |
| 前立腺がん | 2022年12月から治療開始 |
| その他 | 胃がん、原発性腎がん、膵がん、転移性脊椎腫瘍、転移性リンパ節腫瘍など |
また、2022年10月1日からは三叉神経痛治療が保険適用となり、がん治療以外の疾患にも対応しています。
治療の流れ:
サイバーナイフ治療では、まず患者さんの治療中の動きを最小限に抑えるため、また複数回の治療を同じ体勢で受けられるよう、治療部位に応じて専用の固定具を作成します。この固定具は、患者さんと相談しながら痛みや苦痛が少ないように作成されます。
治療時には、X線写真を撮影して位置合わせを行ってから治療を開始します。治療中は決められた順路でロボットが移動し、数十から数百方向から放射線を照射します。治療中も定期的にX線写真を撮影して位置を確認し、数ミリの位置ずれはロボットが自動補正します。
治療時間は各々の治療計画によって異なりますが、1ヶ所で約20分程度となります。麻酔は使用せず、患者さん自身で体動を抑える必要があるため、診察時に医師が適応を判断します。
費用について:
サイバーナイフ治療は保険診療として認められており、3割負担の場合、照射回数や期間に関わらず約19万円となります。高額療養費制度や限度額適用認定証の適用も可能です。
トモセラピーが受けられる施設
呉医療センター・中国がんセンター(広島県呉市)
山陽地方でトモセラピー治療が受けられるのは、広島県の呉医療センター・中国がんセンターのみです。
所在地:広島県呉市青山町3番1号
導入の経緯と機器の特徴:
呉医療センター・中国がんセンターは、平成24年(2012年)3月にトモセラピー(Accuray社製 TomoHD)を導入しました。
トモセラピーは、MV-CT(MegaVoltage-CT)とリニアックが一体となったIMRT(強度変調放射線治療)専用治療機です。IGRT(画像誘導放射線治療)機能として、毎回の治療前にMV-CTを撮影し、治療計画用で撮影したCTイメージと位置照合を行い患者位置修正を行うことで、ターゲットを確実に捉えかつ周囲の正常組織には影響を与えない治療が可能となっています。
トモセラピーの特徴:
トモセラピーは、放射線が360度回転しながら照射されるため、病巣を包み込むように治療が可能です。強弱をつけた放射線を多方向から病変に集中して照射することにより、健康な組織に放射線を当てないようにする照射法です。
従来の放射線治療と比較して、腫瘍に高線量を照射しつつ、健康な組織への線量を低減させることができます。特に、複雑な形の腫瘍や、正常組織と入り組んだ位置にある腫瘍に対して効果を発揮します。
また、トモセラピーは毎回の照射前にCTを撮影して位置照合を行うため、精度の高い照射が可能です。呼吸などによって位置が変化する前立腺がんなどの治療にも適しています。
治療実績:
呉医療センター・中国がんセンターでは、年間の放射線治療(外部照射)の実績数は約6,700件となっています。27名の診療放射線技師が各装置を用いて診断及び治療業務を実施しています。
放射線治療専従看護師も配置されており、治療内容説明から治療中のフォローに至るまで、より良いサポート体制が整えられています。
対応可能ながんの種類:
トモセラピーは、様々ながんに対して適応があります。特に以下のようながんに対して効果が期待されます。
- 前立腺がん(日々位置が変化するが、位置照合により対応可能)
- 頭頸部がん(複雑な形状の腫瘍に対応)
- 肺がん
- 乳がん(鎖骨上リンパ節など通常の治療では困難な部位)
- 食道がん
- 直腸がん
- 多発骨転移(TomoEDGE機能により広範囲に対応)
- 脳腫瘍(全脳照射とIMRTの同時実施が可能)
治療の流れと期間:
まず問診・診察や血液検査などを行い、トモセラピーによる治療が適切かを判断します。検査結果をもとにどのように治療を進めていくかを提案し、患者さんの要望を踏まえながら治療計画を決定します。その際にCT撮影を行い、データをもとに治療計画を立てます。
治療時間は1回20分〜1時間で、複数回に分けて実施されます。病巣の状態によって必要な時間や回数が異なります。従来の放射線治療に比べ、治療期間の短縮が期待できる場合もあります。
治療終了後は、CTやMRI検査などの検査を行い、経過を観察します。
費用について:
トモセラピーは平成22年(2010年)に保険適用の対象となっています。ただし、治療回数や転移したがんに対しては保険対象外となる場合があります。治療を受ける前に、医療機関で費用について確認することが重要です。医療費控除や高額療養費制度などの制度を利用すれば、自己負担額を減らすことができます。
陽子線治療が受けられる施設
岡山大学・津山中央病院共同運用 がん陽子線治療センター(岡山県津山市)
山陽地方で陽子線治療が受けられるのは、岡山県津山市にある岡山大学・津山中央病院共同運用 がん陽子線治療センターのみです。
所在地:岡山県津山市川崎1756
導入の経緯と特徴:
このセンターは、約60億円をかけて整備され、平成28年(2016年)3月に開設、同年4月28日に治療を開始しました。中四国地方では初の陽子線治療施設であり、国内では11番目の陽子線治療施設となります。
岡山大学病院と津山中央病院が共同で運用しており、岡山大学は国内で240以上の関連病院を持つため、幅広いネットワークを活用した治療が可能です。
施設は鉄筋コンクリート地上3階、地下1階、延べ約3,900平方メートルで、ブロードビーム法から次世代のスポットスキャニング法までを1台で行うことのできる新しい陽子線治療機器が設置されています。
陽子線治療の原理:
陽子線治療は、水素原子核(陽子)を加速器で高速に加速した粒子線をがん細胞に照射する治療法です。
陽子線は通常の放射線治療で用いるX線と異なり、体内である程度進んだ後、急激に高いエネルギーを周囲に与えてそこで消滅するという「ブラッグピーク」と呼ばれる性質を持っています。この性質により、病変部周囲のみに高いエネルギーを与えることができ、病変より奥の正常組織を守ることが可能です。
X線と比べると、病変部に同じ線量を投与する場合は正常組織の線量が低下することから副作用の減少を期待でき、正常組織に同じ線量まで投与する場合は病変部に高い線量を投与できることから高い効果を期待できます。
治療実績:
治療開始から1年余りで、小児を含む100人以上に照射治療を実施し、多くの患者さんに効果が見られています。岡山県外からも多くの患者さんが訪れています。
対応可能ながんの種類:
| がんの種類 | 保険適用の状況 |
|---|---|
| 小児腫瘍 | 保険診療可能 |
| 頭頸部がんの一部 | 保険診療可能 |
| 骨軟部腫瘍の一部 | 保険診療可能 |
| 前立腺がん | 保険診療可能 |
| 脳腫瘍 | 先進医療 |
| 肝がん | 先進医療 |
| 早期肺がん | 先進医療 |
| 局所進行肺がん | 先進医療 |
| 胆管がん | 先進医療 |
| 膵がん | 先進医療 |
| 食道がん | 先進医療 |
| 直腸がん術後局所再発 | 先進医療 |
| 肺転移、肝臓転移、リンパ節転移 | 先進医療 |
その他の疾患については個別に検討されます。小児腫瘍については、岡山大学病院の脳神経外科や小児科のエキスパートと議論して治療方針を相談する体制が整っています。
治療の特徴:
陽子線治療は、総合病院である津山中央病院で実施されるため、がん以外の病気への救急対応も可能です。これは、がん以外の病気をお持ちの方や、がん治療中に脳や心臓に救急対応が必要な疾患を発症した場合にも適切に対応できることを意味します。総合病院としては福井以西の西日本で初の陽子線治療施設となっています。
また、集学的治療(抗がん剤、手術、放射線治療などを組み合わせた治療)を行うことができる病院であるため、一つの病院で様々な治療を組み合わせることが可能です。
治療の流れ:
1回当たりの照射時間はわずか2〜3分で、痛みはもちろん何も感じません。照射は平日の5日間で実施され、照射回数は疾患や病状によって異なります。例えば、前立腺がんであれば全35回程度となります。
治療は基本的に外来通院で可能ですが、必要に応じて入院での治療も実施されます。
費用について:
先進医療の場合、全てが公的保険でカバーされておらず、陽子線治療の技術料として288万3,000円(津山中央病院の場合)の自己負担が必要です。ただし、その他の入院・薬剤・検査等は公的保険が適用される仕組みです。
小児腫瘍、頭頸部がんの一部、骨軟部腫瘍の一部、前立腺がんについては、公的保険を使用して治療可能です。
なお、民間保険によっては先進医療特約で陽子線治療の費用がカバーされる場合もありますので、加入している保険の内容を確認することをお勧めします。
重粒子線治療について
重粒子線治療は、炭素原子核を加速器で高速に加速した粒子線をがん細胞に照射する治療法です。陽子線と同様にブラッグピークという性質を持っていますが、さらに生物学的効果が高く、X線や陽子線の2〜3倍の細胞殺傷効果を持っています。
令和6年(2024年)4月1日現在、国内には6ヶ所の重粒子線治療施設がありますが、山陽地方には重粒子線治療施設はありません。
最も近い施設は、兵庫県たつの市にある兵庫県立粒子線医療センターです。この施設は、世界で唯一、陽子線と重粒子線の両方の治療が受けられる施設として知られています。
重粒子線治療を希望される場合は、兵庫県や関西地方、九州地方(佐賀県)の施設を検討する必要があります。
各治療法の選択について
サイバーナイフ、トモセラピー、陽子線治療は、それぞれに特徴があり、がんの種類、大きさ、位置、患者さんの状態などによって、最適な治療法が異なります。
| 治療法 | 主な特徴 | 得意な領域 |
|---|---|---|
| サイバーナイフ | ロボットアームによる高精度照射、体動追尾機能、治療時間が短い | 脳腫瘍、頭頸部腫瘍、肺がん、肝臓がん、前立腺がん |
| トモセラピー | 360度回転照射、毎回CT撮影による位置確認、広範囲・複雑形状に対応 | 前立腺がん、頭頸部がん、多発骨転移、乳がん |
| 陽子線治療 | ブラッグピーク特性、深部病変への対応、正常組織への影響が少ない | 小児がん、前立腺がん、頭頸部がん、肺がん、肝がん |
どの治療法が最適かは、主治医や放射線治療専門医との相談の上で決定されます。それぞれの治療施設では、放射線治療専門医が診察し、患者さん一人ひとりの状態に応じて最適な治療計画を立てます。
受診の方法
これらの先進的な放射線治療を受けるためには、通常、主治医からの紹介状が必要です。
岡山旭東病院(サイバーナイフ):主治医からの診療情報提供書と画像データを持参して受診します。診察時に医師が適応を判断します。
呉医療センター・中国がんセンター(トモセラピー):主治医からの紹介を受けて、放射線治療専門医が診察し、治療の適応を判断します。
岡山大学・津山中央病院共同運用 がん陽子線治療センター(陽子線治療):岡山大学病院では「放射線治療・陽子線治療外来」を開設しており、陽子線治療の適応判断、治療前の準備のサポートや津山中央病院への紹介を行っています。また、津山中央病院にも「陽子線治療外来」を開設しており、予約して受診することも可能です。主治医からの紹介が基本となりますので、まずは主治医と相談することが必要です。患者さんから直接の相談は、津山中央病院「陽子線治療外来」(電話:0868-21-8150)で受け付けています。
治療を受ける際の注意点
先進的な放射線治療を受ける際には、以下の点に注意が必要です。
1. 適応の確認:すべてのがんに対して、これらの治療が適しているわけではありません。がんの種類、大きさ、位置、進行度、患者さんの全身状態などを総合的に判断して、適応が決定されます。
2. 費用の確認:保険診療となる場合と、先進医療や自由診療となる場合があります。治療を受ける前に、費用について詳しく確認し、高額療養費制度や民間保険の先進医療特約などの利用可能性についても調べておくことが重要です。
3. 治療期間の確認:治療には複数回の通院が必要です。照射回数や治療期間は、がんの種類や状態によって異なりますので、生活や仕事との調整が必要になります。
4. 副作用について:これらの治療は従来の放射線治療に比べて副作用が少ないとされていますが、副作用が全くないわけではありません。治療部位によって、だるさや疲労感、食欲不振、皮膚の赤み、吐き気などの副作用が出る可能性があります。治療前に医師から副作用について十分な説明を受けることが大切です。
5. 他の治療との組み合わせ:放射線治療単独ではなく、手術や薬物療法と組み合わせて治療を行う場合もあります。総合的な治療計画について、医療チームと十分に話し合うことが重要です。
山陽地方以外の選択肢
山陽地方で希望する治療が受けられない場合、近隣地域の施設を検討することも選択肢の一つです。
兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市):陽子線治療と重粒子線治療の両方が受けられる世界唯一の施設です。山陽地方からもアクセスが比較的良好です。
兵庫県立粒子線医療センター附属神戸陽子線センター(兵庫県神戸市):陽子線治療が受けられる施設で、神戸市内にあるためアクセスが便利です。
関西地方のトモセラピー施設:大阪府や京都府、兵庫県にもトモセラピーを導入している医療機関があります。
九州地方:九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県)では重粒子線治療が、メディポリス国際陽子線治療センター(鹿児島県)では陽子線治療が受けられます。
遠方の施設での治療を検討する場合は、通院の負担や宿泊の必要性なども考慮する必要があります。多くの治療施設では、遠方から来られる患者さんのために、宿泊施設の紹介や相談窓口を設けています。
まとめ
山陽地方における先進的な放射線治療施設は限られていますが、それぞれの施設で高度な治療が提供されています。
サイバーナイフは岡山旭東病院で、トモセラピーは呉医療センター・中国がんセンターで、陽子線治療は岡山大学・津山中央病院共同運用 がん陽子線治療センターで受けることができます。重粒子線治療については、山陽地方には施設がないため、兵庫県など近隣地域の施設を検討する必要があります。
どの治療法が最適かは、がんの種類や状態、患者さんの全身状態などによって異なります。まずは主治医に相談し、必要に応じて放射線治療専門医の診察を受けて、最適な治療法を選択することが大切です。
また、治療を受ける際には、費用や治療期間、副作用などについても十分に確認し、納得した上で治療を開始することが重要です。
がん治療は日々進歩しており、新しい治療法や技術が次々と開発されています。最新の情報を得るためにも、主治医や医療機関との良好なコミュニケーションを保ち、疑問や不安があれば遠慮なく相談することをお勧めします。
参考文献・出典
3. 岡山大学・津山中央病院共同運用 がん陽子線治療センター
6. 公益財団法人 医用原子力技術研究振興財団 日本の粒子線治療施設の紹介

