【レジメン】
Ramucirumab(ラムシルマブ)=10mg/kg:点滴静注(60分)
DTX(ドセタキセル)=60mg/m2(海外75mg/m2):点滴静注(60分)
【制吐・アレルギー対策】
①d-クロルフェニラミン:5mgIV(Day1)
②デキサメタゾン:6.6mgIV(Day1)
基本事項
【適応】
切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん 二次治療以降
【奏効率】(REVEL試験)
・無増悪生存期間(中央値)
4.5カ月
・全生存期間(中央値)
10.5カ月
・病勢コントロール率(CR+PR+SD)
64%
【副作用】(REVEL試験)
・好中球減少:All Grade=38.9%、Grade3以上=34.9%
・貧血:All Grade=20.9%、Grade3以上=2.9%
・血小板減少:All Grade=8.3%、Grade3以上=1.9%
・発熱性好中球減少症:All Grade=15.9%、Grade3以上=15.9%
・悪心:All Grade=27.0%、Grade3以上=1.1%
・食欲減退:All Grade=29.0%、Grade3以上=2.2%
・疲労感:All Grade=46.1%、Grade3以上=11.3%
・下痢:All Grade=31.7%、Grade3以上=4.6%
・高血圧:All Grade=10.2%、Grade3以上=5.4%
・末梢性感覚ニューロパチー:All Grade=11.6%、Grade3以上=2.1%
・出血:All Grade=9.6%、Grade3以上=<1%
・静脈血栓症:All Grade=2.6%、Grade3以上=1.8%
・蛋白尿:All Grade=3.3%、Grade3以上=<1%
・Infusion reaction:All Grade=3.7%、Grade3以上=<1%
・間質性肺疾患:All Grade=2.1%、Grade3以上=0.8%
・AST上昇:All Grade=2.7%、Grade3以上=0.5%
・ALT上昇:All Grade=2.7%、Grade3以上=0.5%
レジメンチェックポイント
①前投薬の確認
Infusion reactionを軽減させるため、Ramucirumab投与前に、抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミン等)の前投与を考慮すること
②投与量確認
<Ramucirumab:減量・中止基準>
・高血圧:症候性のGrade2、またはGrade3以上=降圧薬による治療を行い、血圧がコントロールできるようになるまで体薬する。降圧薬による治療を行ってもコントロールできない場合には、投与を中止する
・蛋白尿:1日尿蛋白量2g以上=初回発現時:1日尿蛋白量2g未満に低下するまで休薬し、再開する場合には次のように減量する。a.本剤初回投与量が8mg/kgの場合は6mg/kgに減量する。b.本剤初回投与量が10mg/kgの場合は,8mg/kgに減量する。2回目以降の発現時:1日尿蛋白量2g未満に低下するまで休薬し、再開する場合には次のように減量する。a.本剤初回投与量が8mg/kgの場合は5mg/kgに減量する。b.本剤初回投与量が10mg/kgの場合は6mg/kgに減量する
・蛋白尿:1日尿蛋白量3g以上、またはネフローゼ症候群を発現=投与を中止する
<DTX:肝障害時の投与基準>
T-Bil>ULNで投与中止。AST、ALT>1.5×ULNかつALP>2.5×ULNで投与中止
<DTX>
投与当日の好中球数が2,000/mm3未満であれば投与の延期を考慮する
③投与速度、希釈液の確認
初回はおよそ60分かけて点滴静注し、2回目以降は忍容性が良好であれば30分まで投与時間が短縮可能である。Grade1、2のInfusion reactionが発現した場合は、投与速度を50%減速し、次回以降も初回発現時同様50%減速にて投与する。Grade3、4の場合は投与を直ちに中止し、再投与しない。希釈には生理食塩液のみを使用して、全量250mLとして調製する。投与時は、蛋白質透過型のフィルター(0.2または0.22μm)を使用する
④アルコール過敏症の確認
DTX(タキソテール)の添付溶解液にはエタノールが含まれているので、アルコールに過敏な患者に投与する場合は、添付溶解液を使用せずに生理食塩液または5%ブドウ糖液で溶解すること。アルコールで希釈された製剤では、アルコールを抜くことはできないため注意する。なお、現在はプレミックス製剤でもアルコールを含有しない製剤も発売されている
※DTX製剤について:現在本邦においては、アルコールを含む添付溶解液にて希釈後使用する製剤と、すでにアルコールなどで希釈された製剤、およびアルコールを含有しない液体製剤などが販売されており、濃度、アルコール含有量が異なるため注意が必要である
⑤相互作用(DTX)
アゾール系抗真菌薬(ミコナゾールなど)やエリスロマイシン、クラリスロマイシン、シクロスポリン、ミダゾラムの併用によりCYP3A4を阻害、またはDTXとの競合により、DTXの血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれることが考えられる
副作用対策と服薬指導のポイント
①発熱性好中球減少症(FN):DTX単独療法と比較して、Ramucirumab併用療法では好中球減少症の頻度が高まるため、患者には感染予防(手洗い、うがい、マスクの着用など)の励行を指導する必要がある。日本人ではFNの頻度が34%と高いこともあり、FNリスクなどを考慮してG-CSF製剤の一次予防投与も考慮する
②Infusion reaction(Ramucirumab):悪寒、潮紅、低血圧、呼吸困難、気管支痙攣などがあらわれることがある。Infusion reaction軽減のため、Ramucirumab投与前には抗ヒスタミン薬の投与を考慮する。Grade1または2の症状が続く場合には、抗ヒスタミン薬に加えて解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)および副腎皮質ホルモンの前投与も考慮する。Ramucirumab投与後は患者の状態を十分に観察する。皮膚異常(蕁麻疹)、顔面潮紅、呼吸困難感、動悸などが出現した場合はすぐに申し出るよう伝える
③アルコールに関する問診(DTX):自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること
④アレルギー症状(DTX):皮膚の異常(蕁麻疹)、顔面潮紅、息苦しさ、動悸などが出現した場合はすぐに申し出ることを伝える
※DTXの溶解補助剤のポリソルベート80による過敏症およびショック
⑤高血圧(Ramucirumab):自宅で血圧測定および記録を行うよう指導する。高血圧による嘔気や頭痛、呼吸苦、胸痛、めまいなどの症状が認められた賜合、または収縮期血圧180mmHg、拡張期血圧11OmmHg以上の場合には速やかに連絡するよう伝える。降圧薬は積極的適応、禁忌もしくは慎重投与、薬物相互作用を考慮し、個々の患者の臨床状況に応じて選択する
⑥血栓・塞栓症(Ramucirumab):意識消失やめまい、胸痛、息切れ、手足のむくみ、ろれつが回らないなどの症状が認められた場合は速やかに連絡するよう伝える
⑦脱毛(DTX):高頻度で出現し、治療開始から1~3週間で抜け始めることが多い。治療終了後には個人差はあるが回復する
⑧浮腫(DTX):浮腫などの体液貯留が高頻度にみられ、総投与量が350~400mg/m2を超えると発現頻度が上がるため、足のむくみなどの症状が出れば申し出るように伝える。浮腫の発症は毛細血管漏出症候群によるもので、発症後はデキサメタゾンなどを投与する
⑨出血(Ramucirumab):鼻血や歯肉出血、喀血、血尿などの出血症状が認められることがある。15分以上止まらない場合は連絡するよう伝える
⑩創傷治癒障害(Ramucirumab):手術前後少なくとも4週間はRamucirumabの投与を避ける
⑪尿蛋白(Ramucirumab):ネフローゼ症候群、蛋白尿があらわれることがあるので、投与期間中は尿蛋白を定期的に検査し、定性検査で2+以上の場合には、定量検査の実施を検討する。24時間蓄尿による定量検査が困難な場合、随時尿による尿中の「蛋白/クレアチニン比(UPC比)」が用いられる場合がある。UPC比2.0未満の場合は、1日尿蛋白量が2g未満と推定されている