【レジメン】
<Nivolumab 1回240mg 2週間隔投与の場合>
Nivolumab(ニボルマブ:オプジーボ)=240mg:点滴静注(30分以上)
Ipilimumab(イピリムマブ:ヤーボイ)=1mg/kg:点滴静注(30分)
<Nivolumab 1回360mg 3週間隔投与の場合>
Nivolumab=360mg:点滴静注(30分以上)
Ipilimumab=1mg/kg:点滴静注(30分)
基本事項
【適応】
切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
・PSO~1、ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PD-L1 TPS50%以上に対する一次治療
・75歳未満、PSO~1、ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PD-L1 TPS1~49%に対する一次治療
【奏効率】(CheckMate227 Part1試験)
・奏効率
33.1%
・無増悪生存期間(中央値)
5.1カ月
・生存期間(中央値)
17.1カ月
【副作用】(CheckMate227 Part1試験)
・下痢:All Grade=17.0%、Grade3~4=1.7%
・発疹:All Grade=17.0%、Grade3~4=1.6%
・疲労:All Grade=14.4%、Grade3~4=1.7%
・食欲不振:All Grade=13.2%、Grade3~4=0.7%
・悪心:All Grade=9.9%、Grade3~4=0.5%
・貧血:All Grade=3.8%、Grade3~4=1.4%
・好中球減少:All Grade=0.2%、Grade3~4=0%
レジメンチェックポイント
①投与量・投与スケジュールの確認
1コースは6週間のレジメンであるが、Nivolumabの投与量・投与スケジュールは、1回240mgを2週間間隔、または1回360mgを3週間間隔の2つの投与方法が承認されている。いずれかのスケジュールにIpilimumab1回1mg/kg、6週間間隔投与を組み合わせたレジメンとなる。Nivolumabの投与スケジュールのどちらを使用するかを事前に確認しておく
②Ipilimumabの投与延期・中止基準
・Grade2の副作用(内分泌障害および皮膚障害を除く)/Grade3の皮膚障害/症候性の内分泌障害:Grade1以下またはベースラインに回復するまで投与を延期する。内分泌障害については症状が回復するまで投与を延期する。上記基準まで回復しない場合は、投与を中止する
・Grade3以上の副作用(内分泌障害および皮膚障害を除く)/局所的な免疫抑制療法が有効でないGrade2以上の眼障害/Grade4の皮膚障害:投与を中止する
③点滴速度の確認
Nivolumab:30分以上かけて点滴静注する
Ipilimumab:30分かけて点滴静注する
④相互作用の確認
<Nivolumab>
併用注意:生ワクチン、弱毒生ワクチン、不活化ワクチンの接種により過度の免疫反応が起こる可能性がある
副作用対策と服薬指導のポイント
【Atezolizumab】
免疫チェックポイント阻害薬では、頻度は高くないものの多岐にわたる免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、それぞれの特徴や初期症状を指導して、早期に発見・対処することが重要である。irAEとしては間質性肺疾患、重症筋無力症、大腸炎、1型糖尿病、肝機能障害、甲状腺機能障害、神経障害、腎障害などが報告されており、発現時には速やかに専門医への相談を検討する必要がある。irAEの早期発見のためには、通常の検査項目に加えて、心電図・胸部X線・血糖・甲状腺機能・副腎皮質機能検査など医療機関内であらかじめ取り決めをしておくことも重要である。また、本剤投与終了後に重篤な副作用があらわれることもあるので、本剤投与終了後も観察を十分に行う。
また、免疫チェックポイント阻害薬単剤治療時と比較し、免疫チェックポイント阻害薬同士を併用した場合の方が、免疫関連有害事象の毒性の増加が報告されており、毒性管理には注意が必要である
①間質性肺炎
急性肺障害、間質性肺疾患があらわれることがあるので、患者には初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱などの有無)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する。Grade2の場合には、副腎皮質ステロイド(初回用量:プレドニゾロン換算1~2mg/kg)の投与を考慮する。Grade3~4の重篤な症状の場合で、ステロイドパルス療法などの治療にて48時間を超えても症状が改善しない場合には、適応外使用であることを留意のうえ、免疫抑制薬(インフリキシマブ、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチルなど)の投与を考慮する
②大腸炎・重度の下痢
脱水予防のための水分摂取について説明するとともに、症状の急激な悪化または遷延時の医療機関への受診について指導する。止瀉薬であるロペラミドを投与する場合は、irAEによる下痢をマスクする可能性があるため、使用には十分注意が必要である。Grade3以上の重症およびGrade2でも遷延する場合にはステロイド、またはインフリキシマブ5mg/kg(保険適用外)の投与を考慮する。ただし、腸穿孔、敗血症などの合併時にはインフリキシマブ投与は勧められない
③1型糖尿病
劇症1型糖尿病の報告もされているため、口渇、多飲、多尿などの高血糖症状や激しい倦怠感、悪心嘔吐などの糖尿病性ケトアシドーシス症状および早期の医療機関への受診について指導する。1型糖尿病が疑われる場合には専門医と連携するとともに、Atezolizumabの投与を中止し、補液や電解質補充、インスリン投与を開始する。ステロイドの使用にはエビデンスはなく推奨されていない
④甲状腺機能障害
比校的頻度の高いirAEであること、甲状腺機能亢進症(動悸、発汗、暑がり、軟便、体重減少、不眠、振戦、眼球突出)および甲状腺機能低下症(易疲労・脱力感、寒がり、便秘、体重増加、徐脈、眼瞼浮腫、こむら返り、嗄声)の症状を説明する。甲状腺機能障害は、破壊性甲状腺炎に伴う甲状腺機能亢進症を経由して甲状腺機能低下に至る症例も報告されている。甲状腺機能障害は無症状で進行することもあるため、甲状腺刺激ホルモン(TSH)・遊離T3・遊離T4を定期的に測定することを考慮する。なお、副腎機能障害が併発している場合、ヒドロコルチゾンの投与を先行させる
⑤副腎皮質機能低下症
コルチゾール欠乏に伴う易疲労性、食欲不振、消化器症状などやアルドステロン欠乏に伴う低ナトリウム血症、高カリウム血症、低血圧などの症状を伝え、自覚する場合には早期の医療機関への受診について指導する。副腎皮質機能低下を疑う場合には、ACTH、コルチゾールを測定し、内分泌専門医と連携するとともに、ヒドロコルチゾン10~20mg/日より開始し、患者の状態に合わせて調節する。ヒドロコルチゾン開始後は、副腎クリーゼ予防のために自己判断で中断しないことを説明する。また、発熱等で普段と違うストレスがかかる場合には、ヒドロコルチゾンを通常の1.5~3倍量服用するなど、対応方法を事前に確認しておく必要がある