
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
「この食材ががんに効く」という話題は数多くありますが、その内容と信頼性は様々です。
マウスを対象とした小規模な実験結果と、数万人の人間を対象にした長期的な疫学研究では信頼性が大きく異なります。
私たち日本人が古くから親しんできた「味噌」には、大規模な疫学研究によって抗がん作用が報告されています。つまり多数の人間を対象とした信頼性の高い研究結果が存在するということです。
だからといって味噌ばかりを食べればよい、というわけではありません。偏った食生活は必ず体に歪みを生みます。
私がお伝えしている理想的な食事の基本はバランスです。そのうえで体に好影響を与える可能性のある食材を適度に取り入れていく、という考え方が大切です。
味噌の基本と栄養バランス
味噌には様々な種類がありますが、一般的に家庭で使用されるのは大豆を原料とした豆味噌です。大豆を発酵させて作られます。
主要な栄養バランスは次のようになっています。
| 成分 | 割合 |
|---|---|
| 水分 | 47.4% |
| たんぱく質 | 12.5% |
| 脂質 | 6.0% |
| 炭水化物 | 21.2% |
| 灰分(ミネラル) | 12.9% |
水分を除くと、たんぱく質、脂質、炭水化物という三大栄養素がバランスよく含まれていることが分かります。基礎栄養素がこれほど均等に含まれる食材は稀です。
よく「卵は完全食」といわれますが、卵は水分が76%で炭水化物は0.3%に過ぎません。灰分も1%程度です。味噌と比べると栄養バランスが異なることが分かります。
たんぱく質の内容も優れており、生命維持に必要な必須アミノ酸8種類が全て含まれています。
灰分とは「食品成分として含まれる鉱物質」のことで、分かりやすくいえばミネラルです。カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、リン、鉄分などが含まれます。
味噌は三大栄養素の全てをバランスよく含み、豊富なミネラルを含む食材といえます。
さらにビタミン(A、B1、B2、B12、E、葉酸、パントテン酸、ビオチン)や食物繊維や脂肪酸も多種類含まれています。
発酵食品としての味噌の特徴
栄養バランスだけでも優れた食材であることが分かりますが、味噌の大きな特徴は発酵食品であることです。
ただの大豆があれほどの旨味と風味を出すようになる発酵という過程が、がん予防の作用とも深く関係しています。
発酵の仕組みと成分の変化
味噌の原料は大豆と麹と塩だけです。
作り方は、水に浸けた大豆を煮て潰したあとに、塩と麹を混ぜ合わせて寝かす、という工程ですが、中で起きている変化を説明します。
塩の役割
大豆を発酵させる麹菌など人体に有益な菌が生育できるようにするため、有害な菌を寄せ付けない環境を作るのが塩の役割です。
味を整える役割はもちろんですが、味噌が有害な菌によって腐敗しないための防御機能が重要です。そのため塩の入っていない味噌は存在しません。
麹菌による分解と有用成分の生成
麹菌がでんぷんを分解するとブドウ糖が生まれます。そのブドウ糖を分解するのが「しょうゆ・みそ乳酸菌」と呼ばれる菌(学名:テトラジェノコッカス・ハロフィラス)です。
この乳酸菌がブドウ糖を分解することで乳酸が生まれ、味噌に酸味が加わり味に深みが出ます。
また、麹菌がたんぱく質を分解することでアミノ酸に変わります。様々なアミノ酸が生まれることで深い旨味を出すことになります。大豆をそのまま食べてもあまり美味しくありませんが、味噌が美味しいのはアミノ酸の旨味による影響が大きいです。
同時に麹菌は大豆を分解する過程でビタミンB群を生み出していきます。
また、「しょうゆ・みそ酵母」と呼ばれる酵母が香りを生み出していきます。
このような仕組みで大豆は発酵されて味噌となり、複雑な味と香りが醸成されていきます。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
味噌のがん予防効果に関する研究
味噌とがんの関係については、複数の信頼性の高い疫学研究が報告されています。
乳がんとの関係
国立がん研究センターによる多目的コホート研究(2003年発表)では、岩手、秋田、長野、沖縄の4県14市町村に居住する40歳から59歳までの女性21,852名を対象に、10年間にわたって味噌汁や大豆製品の摂取量と乳がん発生率の関係を調査しました。
調査結果を以下の表にまとめます。
| 味噌汁の摂取頻度 | 乳がん発生の相対リスク | リスクの低減率 |
|---|---|---|
| 1日1杯未満 | 1.00(基準) | - |
| 1日2杯 | 0.74 | 26%低減 |
| 1日3杯以上 | 0.60 | 40%低減 |
これは多目的コホート研究と呼ばれる信頼度が高い研究で、対象者も2万人以上と大規模です。
なお、大豆や納豆ではこのような効果はみられず、味噌汁によって効果が出ているという報告でした。
胃がんとの関係
1981年に国立がん研究センター研究所の平山雄博士が発表した疫学調査では、全国約27万人を対象に13年間にわたって調査を行い、味噌汁を毎日飲む人は全く飲まない人に比べて胃がんによる死亡率が低く抑えられることが明らかになりました。
特に男性では、全く飲まない人の死亡率は、毎日飲む人に比べて約50%も高いという結果でした。
研究結果をどう理解するか
このデータをみると「味噌を摂っていればよい」と考えがちですが、「1日2杯、3杯の味噌汁を飲む食生活」を想像してみることが大切です。
味噌汁とピザは食べないでしょうし、味噌汁と中華料理もあまり想像できません。つまり、味噌汁が常に並ぶ食卓は和食中心の食生活ということがいえます。また、味噌汁にアメリカ産の牛肉を入れることもないでしょう。具になるのは主に豆腐やきのこ、野菜類です。
味噌自体も重要ですが、体に優しい食生活のなかで、味噌汁と根菜、きのこ類、野菜を多く摂ってきた結果が、がんの発生を防いだのでは、と考えることができます。
味噌に含まれる抗がん成分と作用
大豆イソフラボンの抗酸化作用
大豆に含まれるイソフラボンはポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用があります。
抗酸化作用とは、体内で発生する活性酸素を除去する働きのことです。活性酸素は細胞を傷つけ、がんの発生につながる可能性があるため、これを抑える抗酸化作用はがん予防において重要です。
さらにイソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと似た働きを持っており、特に乳がん予防との関連が注目されています。
水酸化イソフラボンの生成
味噌などの大豆発酵食品は、未発酵の食品に比べて抗酸化能が高いことが確認されています。
これは発酵過程で、イソフラボンから抗酸化活性の高い「水酸化イソフラボン」へ変換されることが理由です。この水酸化イソフラボンは抗酸化作用とともに抗糖化作用も持っており、老化予防やがん予防に効果が期待されています。
メラノイジンの抗酸化作用
味噌の褐色は、発酵・熟成の過程で大豆が分解されてできる「メラノイジン」という色素成分によるものです。
このメラノイジンは強い抗酸化作用を持つことが知られており、細胞の老化やがん化を抑制する働きがあると考えられています。
脂肪酸エチルの発がん抑制作用
麹菌がでんぷんを分解することで「ブドウ糖」が生まれ、そのブドウ糖を酵母菌が分解することでアルコールが生まれます。
そのアルコールが、大豆の脂肪成分を麹菌が分解して生まれる脂肪酸と結合することで「脂肪酸エチル」という物質が生まれます。
この脂肪酸エチルが発がん物質の力を弱める、という効果が報告されています(上岡龍一教授(熊本工業大学)などによる研究報告「味噌のがん抑制効果」2005年)。
大豆サポニンの作用
大豆サポニンは大豆に含まれる苦みやえぐみの成分ですが、強い抗酸化作用を持っています。
過剰なコレステロールを除去したり、免疫力を向上させる働きがあり、がんや老化の原因となる過酸化脂質を抑制すると考えられています。
腸内環境とがん予防の関係
2010年以降、腸と免疫の研究が活発になり、人体のおよそ70%以上の免疫細胞が腸に集まっていることが明らかになってきました。
豊富なビタミン、ミネラル、食物繊維を含み、発酵食品である味噌が腸に良い効果をもたらすのは明らかです。
食物繊維の働き
味噌には多くの食物繊維が含まれており、腸の調子を良好に保ち、便通をスムーズにする働きがあります。
また、糖や脂質、ナトリウムなどを体外に排出する働きもあり、血糖値や血圧の上昇を抑えるのに役立ちます。
乳酸菌と酵母の働き
味噌に含まれる乳酸菌や酵母は、腸内の善玉菌を活性化する物質を作り、腸内環境を改善します。
腸内環境が整うことで免疫力のバランスが保たれ、がんを未然に防ぐ効果につながると考えられています。
肝臓の解毒機能を高める作用
発がん物質の中には、大気中や食べ物に含まれ、体に入ることをほとんど避けられないものも存在します。
それでもすぐに細胞のがん化が起こらないのは、肝臓に備わった解毒機能のおかげです。体内に吸収された発がん物質をすみやかに代謝排泄する肝臓の機能を高めることが、がん予防につながると考えられます。
味噌に含まれるアミノ酸には肝臓の解毒作用を助ける働きがあることが知られています。
味噌の塩分について
「味噌の塩分が気になる」という人は多いと思います。
昨今の食事療法では「減塩」を主張するものが多いですが、これは「塩分の取りすぎが胃がんの要因になりやすい」ことからきています。
味噌の塩分含有量
味噌に含まれる塩分含有量はおよそ8~12%です。スーパーで売られている「減塩味噌」の場合はやや少なくなりますが、それでも塩は味噌づくりに欠かせないものなので、ある程度の塩分は含まれます。
実際に味噌汁にして味噌を摂取するとき、塩分摂取量はおよそ「150mlあたり1.2g~1.5g」です。これは具を入れないときの塩分量ですので、具をたくさん入れると使用する味噌の量も減り、塩分量も減ることになります。
日本人の塩分摂取基準
日本人の塩分摂取量の目安は女性で約6.5g、男性で約7.5gです(食事摂取基準2020年版)。
具だくさんの味噌汁を1日3杯飲むと、3g程度(1回あたり1g換算)になるので、3杯飲むとやや塩分摂取量が多くなる可能性があります。実際に毎食味噌汁を飲む、というのはバランスを欠く行為ですし、現実的ではありません。
1日に1杯~2杯程度の具だくさん味噌汁を飲む、というのが健康的なバランスになると考えられます。
味噌から摂る塩分の特徴
2012年に発表された、共立女子大学家政学部の上原誉士夫教授による報告では、「塩から摂る塩分に比べ、味噌から摂る塩分は30%程度の減塩効果がある」としています。
ラットを使った実験では、食塩水と味噌を溶かした水(味噌水)で血圧の上昇を調べると、味噌水のほうが30%程度血圧が上昇しにくかったという結果が報告されています。
これは糖分でもいえることで、精製された砂糖をそのまま摂るのと、フルーツから摂るのとでは血糖値の上昇が異なります。
ただし、塩分は味噌だけではなく他の食品、料理からも摂るので「味噌の塩分は大丈夫」と考えてたくさん食べるのは間違いです。
他の料理との塩分比較
| 料理・食品 | 1食あたりの塩分量 |
|---|---|
| 味噌汁(1杯) | 約1.2~1.5g |
| カレーライス | 約2.5~3.0g |
| 即席カップめん | 約5.0~6.0g |
| 塩鮭(1切れ) | 約2.0~2.5g |
味噌汁は一品の料理の中では比較的少ない方です。他の食品と比べてもそれほど高くはありません。
味噌を効果的に摂取する方法
味噌をうまく活用して、適度に食生活に取り入れることを意識するのが健康への近道です。
具だくさんの味噌汁がおすすめ
具を多く入れることで、使用する味噌の量が減り、塩分摂取量も抑えられます。
また、野菜やきのこ、海藻類などを具にすることで、食物繊維やビタミン、ミネラルも同時に摂取できます。これらの食材に含まれるカリウムは、ナトリウムの排出を促す働きがあります。
だしをしっかりとる
昆布やかつおぶし、干しシイタケなどを使用してしっかりとだしをとると、味噌の量を減らしても美味しい味噌汁を作ることができます。
うまみ成分が豊富なだしを使うことで、塩分控えめでも満足できる味わいになります。
食事全体のバランスを考える
最近の研究や調査によると、味噌は栄養的に優れているため、適度に摂取することが健康的によいという見解もみられます。
ただし、味噌だけでなく、食事全体のバランスを考えることが重要です。和食中心の食生活の中で、野菜や魚、大豆製品などをバランスよく摂取することが、がん予防につながると考えられます。
味噌のがん予防効果のまとめ
味噌のがん予防効果について、現在分かっていることを整理します。
| 成分・作用 | 期待される効果 |
|---|---|
| 大豆イソフラボン | 抗酸化作用、乳がん予防 |
| 水酸化イソフラボン | 強い抗酸化作用、抗糖化作用 |
| メラノイジン | 抗酸化作用、細胞の老化抑制 |
| 脂肪酸エチル | 発がん物質の力を弱める |
| 大豆サポニン | 抗酸化作用、免疫力向上 |
| 食物繊維 | 腸内環境改善、免疫力向上 |
| 乳酸菌・酵母 | 腸内環境改善、免疫機能強化 |
| アミノ酸 | 肝臓の解毒作用を助ける |
2003年など古い研究では「こうしたらこうなった」ということしか分からなかったことが、「なぜそうなるのか」というメカニズムまで見えてくるようになったのが現代科学の進歩です。
味噌がもたらすがん予防効果は、単一の成分によるものではなく、複数の成分が相互に作用することで生まれていると考えられています。
また、味噌汁を日常的に飲む食生活は、和食中心の食事パターンと関連しており、野菜や魚、大豆製品を多く摂る食習慣全体がもたらす効果だと考えることもできます。
味噌は日本人が古くから親しんできた伝統的な発酵食品です。その栄養価の高さと抗がん成分は、科学的にも裏付けられつつあります。
味噌をうまく活用して、バランスの取れた食生活を心がけることが、健康維持とがん予防につながると考えられます。
参考文献・出典情報
1. 国立がん研究センター がん対策研究所「大豆・イソフラボン摂取と乳がん発生率との関係について」
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/258.html
2. 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター「味噌のがん予防」
https://ishiimiso.com/miso/science/cancer-prevention
3. 日本醸造協会「お味噌の効能」醸協105巻11号(2010年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/105/11/105_714/_pdf
4. 株式会社シクロケムバイオ「豆味噌の抗糖化と抗酸化による美肌効果」
http://www.cyclochem.com/cyclochembio/watch/watch_099.html
5. 日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン2022年版」
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/e_index/bq5/
6. かわしま屋「味噌と健康|豊富な味噌の栄養素や作り方から賞味期限まで解説」
https://kawashima-ya.jp/contents/?p=9929
7. 健達ねっと「味噌には栄養がたくさん含まれている?知られざる健康効果を解説!」
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/29593
8. まごころケア食「日本の誇るスーパーフード 味噌の栄養成分と健康効果」
https://magokoro-care-shoku.com/column/japan-proud-superfood-miso/
9. クロワッサンオンライン「抗酸化成分で細胞の老化も防ぐ、味噌の健康効果とおすすめの食べ方」
https://croissant-online.jp/health/205317/
10. ひかり味噌株式会社「味噌の栄養 みそ大百科」
https://www.hikarimiso.co.jp/enjoy-miso/encyclopedia/utility.html