はじめに:近づきすぎず、離れすぎず。ちょうどいい距離とは?
がんと診断された家族や友人に、どう接すればよいか。
「何かしてあげたいけれど、迷惑にならないか不安…」
「そっとしておいたほうがいいのか、もっと関わったほうがいいのか…」
支える側にとって、“距離感”はとても難しいテーマです。
今回は、がん患者との接し方の基本と、やってしまいがちなNG例についてお伝えします。
1. 「自分の安心」のために動いていないか?
善意で行動しているつもりでも、気づかぬうちに「自分の安心”のために関わりすぎてしまう」ことがあります。
-
「大丈夫?何かしてほしいことは?」と頻繁に連絡
-
毎日様子を見に行く
-
勝手に治療法やサプリを調べて提案
こうした行動は、“相手のため”に見えて、相手の心の余白を奪ってしまうことも。
本当に必要なのは「何かしてほしいことがあれば、いつでも言ってね」という待つ姿勢です。
2. 無理に励まさない。「共にいる」ことが一番の力
がんという病気に向き合う中で、患者さんは日々、感情の波の中にいます。
そんなとき、「前向きにいこう!」「絶対大丈夫!」と励まされると、逆につらく感じることもあります。
励ますよりも、感情に寄り添うことが信頼につながります。
「不安だよね」
「怖いよね」
「そんな気持ちになるの、すごく分かるよ」
言葉が見つからないときは、黙って一緒にいるだけでも十分です。
3. NG接し方①:「私もそうだった」マウンティング
自分や知人の体験を語って励まそうとする人がいますが、「私はこうだったから大丈夫よ」という話は、時に相手を傷つけます。
-
治療の進行度も違う
-
状況も、気持ちも、人それぞれ
-
何より、今苦しんでいるのは相手自身
「○○さんも元気になったから!」という善意の比較は、無意識の“押しつけになっていないか振り返ってみましょう。
4. NG接し方②:「強くいてほしい」というプレッシャー
「がんに負けないで」「前向きでいよう」
この言葉は勇気づけのつもりかもしれませんが、“強さを求められている”と感じる方も多いのです。
誰でも、落ち込み、涙を流し、弱音を吐く瞬間があります。
“ありのまま”を受け入れてくれる人の存在が、何よりも心の支えになるのです。
5. “距離をとること”も、思いやりになる
がん患者の方の中には、「誰とも話したくない」「1人で考えたい」時期があることもあります。
そんなとき、無理に関わろうとしない勇気も必要です。
距離を取る=冷たい、ではありません。
「いつでも連絡してね」と伝えて、見守るという関わり方も愛情のひとつです。
おわりに:大切なのは、“その人らしさ”を尊重すること
がん患者との距離感に正解はありません。
けれど、いつでも忘れたくないのは、
「相手は、病気の人ではなく、一人の人間」
「その人らしさを、どう支えるか」
という視点です。
あなたの存在が、そっと隣にいることが、言葉以上の支えになることもあります。
▼このシリーズについて
このブログでは、がん患者とそのご家族を支えるための言葉や接し方について、シリーズでお届けしています。