【レジメン】
Erlotinib(エルロチニブ:タルセバ)=1回150mg:1日1回経口投与
BV(ベバシズマブ:アバスチン)=15mg/kg:点滴静注(初回90分)
基本事項
【適応】
・切除不能な再発・進行性で、がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺がん
・EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な再発・進行性で、がん化学療法未治療の非小細胞肺がん
【奏効率】(JO25567試験)
<Erlotinib+BV>
・完全奏効率
4%
・部分奏効率
65%
・無増悪生存期間(中央値)
16.0カ月
・全生存期間(中央値)
47.0カ月
<Erlotinib単剤>
・完全奏効率
1%
・部分奏効率
62%
・無増悪生存期間(中央値)
9.7カ月
・全生存期間(中央値)
47.7カ月
【副作用】(JO25567試験)
<Erlotinib+BV>
・発疹:All Grade=99%、Grade3以上=25%
・下痢:All Grade=81%、Grade3以上=1%
・皮膚乾燥:All Grade=75%、Grade3以上=3%
・爪囲炎:All Grade=76%、Grade3以上=3%
・口内炎:All Grade=63%、Grade3以上=1%
・高血圧:All Grade=76%、Grade3以上=60%
・尿蛋白:All Grade=52%、Grade3以上=8%
・出血:All Grade=72%、Grade3以上=3%
<Erlotinib単剤>
・発疹:All Grade=99%、Grade3以上=19%
・下痢:All Grade=78%、Grade3以上=1%
・皮膚乾燥:All Grade=58%、Grade3以上=0%
・爪囲炎:All Grade=65%、Grade3以上=4%
・口内炎:All Grade=60%、Grade3以上=3%
・高血圧:All Grade=13%、Grade3以上=10%
・尿蛋白:All Grade=4%、Grade3以上=0%
・出血:All Grade=29%、Grade3以上=0%
レジメンチェックポイント
①Erlotinibは1日1回、服用時間は食事の1時間以上前、または食後2時間以降の時間に設定する(高脂肪、高カロリーの食事の後に服用した場合、ErlotinibのAUCが増加する報告がある)
②相互作用
・プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーを服用していないか(オメプラゾールを併用している場合、ErlotinibのAUCが46%減少した報告がある)
・アゾール系抗真菌薬、マクロライド系抗菌薬など、CYP3A4を阻害する薬剤を併用していないか<CYP3A4阻害薬の併用によりErlotinibの代謝が阻害され、Erlotinibの血中濃度が増加することがある(ケトコナゾールとの併用でAUCが約86%、Cmaxが69%増加した報告がある)>
・フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシン、バルビツール酸系薬物、セイヨウオトギリソウ(St.John's wort)など、CYP3A4を誘導する薬剤を併用していないか<CYP3A4誘導薬の併用によりErlotinibの代謝が亢進され、Erlotinibの血中濃度が減少することがある(リファンピシンとの併用でAUCが約69%減少した報告がある)>
・シプロフロキサシンなど、CYP1A2およびCYP3A4を阻害する薬剤を併用していないか<CYP1A2およびCYP3A4を阻害する薬剤の併用によりErlotinibの代謝が阻害され、Erlotinibの血中濃度が増加することがある(シプロフロキサシンとの併用でAUCが39%、Cmaxが17%増加した報告がある)>
・ワルファリンとErlotinibとの併用によりINR値増加や出血があらわれたとの報告があるため、定期的にプロトロンビン時間またはINR値のモニターを行う。また、喫煙によりErlotinibのAUCが64%減少する報告がある
③点滴速度の確認(BV):Infusion reactionが発現しないよう点滴速度に注意する
※初回90分、忍容性があれば2回目60分、3回目以降30分
副作用対策と服薬指導のポイント
①急性肺障害・間質性肺炎:急性肺障害、間質性肺炎があらわれることがあるので、胸部X線検査などの観察を十分に行う。また、患者には初期症状(風邪のような症状:発熱、息切れ、咳)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する
※発生時期は不特定であり、死亡例も認められている
②皮膚障害:発疹、ざ瘡様皮疹が強くあらわれることが多いため、あらかじめ症状などを説明しておく必要がある。対応については以下のアルゴリズムを参照
<ざ瘡様皮疹の治療指針>
・軽症
副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。部位により、medium~very strongの軟膏、クリーム、ローション基剤を選択する。頸部はローション剤、顔面・体幹は軟膏、クリーム剤が使いやすいが、ローション剤やクリーム剤は時に刺激を感じることがあり、基剤選択にも留意する。なお、ミノサイクリンの予防内服も有用である。原疾患の治療は継続可能である
・中等症
軽症よりランクアップした副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。なお、掻痒を伴う場合は、抗アレルギー薬を併用するが、接触性皮膚炎や白癬を併発していることがあり、悪化するときには皮膚科専門医の介入が必要である。なお、原疾患の治療は継続可能である。ミノサイクリン100~20Omg/日内服が目安となる
・重症
原疾患の治療薬を休薬のうえ、皮膚科専門医へ紹介する。基本的には、2週間を目安に副腎皮質ステロイドを内服で投与する
③下痢:重篤な下痢を発症する場合もあるため、患者観察時には脱水などの症状に留意し、早期の対処療法(整腸薬、ロペラミドなど)を行う
※発現時期(中央値):7日
④毎日決まった時間に服用することを指導し、飲み忘れに気が付いた場合はその日の空腹時に1錠服用し、2錠一度に服用しないように伝える
<BV併用時>
①高血圧:自宅で血圧測定および記録を行うよう指導する。高血圧による嘔気や頭痛、呼吸苦、胸痛、めまいなどの症状が認められた場合、または収縮期血圧180mmHg、拡張期血圧110mmHg以上の場合には速やかに連絡するよう伝える。降圧薬は積極的適応、禁忌もしくは身長投与、薬物相互作用を考慮し、個々の患者の臨床状況に応じて選択する
②出血:鼻血や歯肉、膣などの粘膜から軽度の出血がみられることがある。10~15分経っても止まらない場合は連絡するよう伝える
③血栓塞栓症・うっ血性心不全:意識消失やめまい、胸痛、息切れ、手足のむくみ、ろれつが回らないなどの症状が認められた場合は速やかに連絡するよう伝える
④創傷治癒遅延:手術前後4週間はBVの投与を避ける。ポート挿入などの小手術は可能
⑤消化管穿孔:発現頻度は2%未満で、3カ月以内の発現が最も多い。激しい腹通などの症状があればすぐに連絡するよう伝える
⑥喀血(2.5mL以上の鮮血の喀出)の既往のある患者は禁忌である(肺出血があらわれるおそれがあるため)。治療前、冶療中を含め、患者の観察が必要である
⑦尿蛋白:ネフローゼ症候群、蛋白尿があらわれることがあるので投与期間中は尿蛋白を定期的に検査し、定性検査で2+以上の場合には、定量検査の実施を検討する