【レジメン】
Durvalumab(イミフィンジ(デュルバルマブ))=10mg/kg:点滴静注(60分以上)
基本事項
【適応】
切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法
【奏効率】(国際共同第Ⅲ相臨床拭験(PACIFIC試験))
・奏効率
28.4%
・無増悪生存期間(中央値)
16.8カ月
・無増悪生存率(12カ月時点)
55.9%
【副作用】(PACIFIC試験)
<全症例(475例)>
・咳嗽:All Grade=35.4%、Grade3以上=0.4%
・疲労:All Grade=23.8%、Grade3以上=0.2%
・放射線肺臓炎:All Grade=20.2%、Grade3以上=1.7%
・下痢:All Grade=18.3%、Grade3以上=0.6%
・発熱:All Grade=14.7%、Grade3以上=0.2%
・食欲減退:All Grade=14.3%、Grade3以上=0.2%
・掻痒症:All Grade=12.2%、Grade3以上=0%
・肺臓炎:All Grade=10.7%、Grade3以上=1.7%
・甲状腺機能低下症:All Grade=11.6%、Grade3以上=0.2%
・甲状腺機能亢進症:All Grade=2.7%、Grade3以上=0%
・大腸炎:All Grade=1.1%、Grade3以上=0.4%
・副腎機能不全:All Grade=0.2%、Grade3以上=0%
・1型糖尿病:All Grade=0.2%、Grade3以上=0%
・皮膚炎/発疹:All Grade=1.9%、Grade3以上=0.4%
・肝臓に関連する事象:All Grade=0.6%、Grade3以上=0%
【副作用】(PACIFIC試験)
<日本人症例(72例)>
・咳嗽:All Grade=11.1%、Grade3以上=0%
・疲労:All Grade=13.9%、Grade3以上=0%
・放射線肺臓炎:All Grade=54.2%、Grade3以上=5.6%
・下痢:All Grade=12.5%、Grade3以上=0%
・発熱:All Grade=11.1%、Grade3以上=0%
・食欲減退:All Grade=15.3%、Grade3以上=0%
・掻痒症:All Grade=19.4%、Grade3以上=0%
・肺臓炎:All Grade=12.5%、Grade3以上=1.4%
・甲状腺機能低下症:All Grade=9.7%、Grade3以上=0%
・甲状腺機能亢進症:All Grade=4.2%、Grade3以上=0%
・大腸炎:All Grade=1.4%、Grade3以上=0%
・副腎機能不全:All Grade=0%、Grade3以上=0%
・1型糖尿病:All Grade=0%、Grade3以上=0%
・皮膚炎/発疹:All Grade=1.4%、Grade3以上=0%
・肝臓に関連する事象:All Grade=0%、Grade3以上=0%
レジメンチェックポイント
①PD-L1発現の有無等の確認
<副作用に対する休薬・中止基準の確認>
・間質性肺疾患
Grade2:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する
Grade3または4:本剤の投与を中止する
・肝機能障害
ASTもしくはALTが基準値上限の3~5倍以下、または総ビリルビンが基準値上限の1.5~3倍以下まで増加した場合/ASTもしくはALTが基準値上限の8倍以下、または総ビリルビンが基準値上限の5倍以下まで増加した場合:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する
ASTもしくはALTが基準値上限の8倍超または総ビリルビンが基準値上限の5倍超まで増加した場合/ASTもしくはALTが基準値上限の3倍超かつ総ビリルビンが基準値上限の2倍超まで増加し本剤以外に原因がない場合:本剤の投与を中止する
・大腸炎/下痢
Grade2:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する
Grade3または4:本剤の投与を中止する
・甲状腺機能亢進症、副腎機能不全、下垂体機能低下症
Grade2~4:症状が安定するまで本剤を休薬する
・腎機能障害
血清クレアチニンが基準値上限またはベースラインの1.5~3倍まで増加した場合:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する
血清クレアチニンが基準値上限またはベースラインの3倍超まで増加した場合:本剤の投与を中止する
・筋炎
Grade2または3:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。30日以内にGrade1以下まで回復しない場合、または呼吸機能不全の徴候があらわれた場合は本剤の投与を中止する
Grade4:本剤の投与を中止する
・皮膚障害
Grade2で1週間以上継続した場合/Grade3:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する
Grade4:本剤の投与を中止する
・心筋炎
Grade2:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。心筋生検で心筋炎を示唆する所見が認められた場合は本剤の投与を中止する
Grade3または4:本剤の投与を中止する
・重症筋、無力症
Grade3:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。Grade1以下まで回復しない場合、または呼吸機能不全もしくは自律神経失調の徴候があらわれた場合は本剤の投与を中止する
Grade4:本剤の投与を中止する
・Infusion reaction
Grade1または2:本剤の投与を中断、もしくは投与速度を50%減速する
Grade3または4:本剤の投与を中止する
・上記以外の副作用(甲状腺機能低下症、1型糖尿病を除く)
Grade2または3:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する
Grade4:本剤の投与を中止する
副作用対策と服薬指導のポイント
免疫チェックポイント阻害薬では、頻度は高くないものの多岐にわたる免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、それぞれの特徴や初期症状を指導して、早期に発見・対処することが重要である。
irAEとしては、間質性肺疾患、重症筋無力症、大腸炎、1型糖尿病、肝機能障害、甲状腺機能障害、神経障害、腎障害などが報告されており、発現時には速やかに専門医への相談を検討する必要がある。irAEの早期発見のためには、通常の検査項目に加えて、心電図・胸部X線・血糖・甲状腺機能・副腎皮質機能検査など、医療機関内であらかじめ取り決めをしておくことも重要である。また、Durvalumab投与終了後に重篤な副作用があらわれることもあるので、本剤投与終了後も観察を十分に行う
①間質性肺炎:急性肺障害、間質性肺疾患があらわれることがあるので、患者には初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱などの有無)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する。
Grade2の場合には、副腎皮質ステロイド(初回用量:プレドニゾロン換算1~2mg/kg)の投与を考慮する。Grade3~4の重篤な症状の場合で、ステロイドパルス療法などの治療にて48時間を超えても症状が改善しない場合には、適応外使用であることを留意のうえ、免疫抑制薬(インフリキシマブ、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチルなど)の投与を考慮する
②大腸炎・重度の下痢:脱水予防のための水分摂取について説明するとともに、症状の急激な悪化または遷延時の医療機関への受診について指導する。
止瀉薬であるロペラミドを投与する場合は、irAEによる下痢をマスクする可能性があるため使用には十分注意が必要である。Grade3以上の重症およびGrade2でも遷延する場合にはステロイド、またはインフリキシマブ5mg/kg(保険適用外)の投与を考慮する。ただし、腸穿孔、敗血症などの合併時にはインフリキシマブ投与は勧められない
③1型糖尿病:劇症1型糖尿炳の報告もされているため、口渇、多飲、多尿などの高血糖症状や激しい倦怠感、悪心嘔吐などの糖尿病性ケトアシドーシス症状および早期の医療機関への受診について指導する。
1型糖尿病が疑われる場合には、専門医と連携するとともにDurvalumabの投与を中止し、補液や電解質補充、インスリン投与を開始する。ステロイドの使用にはエビデンスはなく推奨されていない
④甲状腺機能障害:比較的頻度の高いirAEであること、甲状腺機能亢進症(動悸、発汗、暑がり、軟便、体重減少、不眠、振戦、眼球突出)および甲状腺機能低下症(易疲労、脱力感、寒がり、便秘、体重増加、徐脈、眼瞼浮腫、こむら返り、嗄声)の症状を説明する。
甲状腺機能障害は、破壊性甲状腺炎に伴う甲状腺機能亢進症を経由して甲状腺機能低下に至る症例も報告されている。甲状腺機能障害は、無症状で進行することもあるため、甲状腺刺激ホルモン(TSH)・遊離T3・遊離T4を定期的に測定することを考慮する。なお、副腎機能障害が併発している場合、ヒドロコルチゾンの投与を先行させる
⑤副腎皮質機能低下症:コルチゾール欠乏に伴う易疲労性、食欲不振、消化器症状などやアルドステロン欠乏に伴う低ナトリウム血症、高カリウム血症、低血圧などの症状を伝え、自覚する場合には早期の医療機関への受診について指導する。
副腎皮質機能低下を疑う場合には、ACTH、コルチゾールを測定し、内分泌専門医と連携するとともに、ヒドロコルチゾン10~20mg/日より開始し、患者の状態に合わせて調節する。ヒドロコルチゾン開始後は、副腎クリーゼ予防のために自己判断で中断しないことを説明する。また、発熱等で普段と違うストレスがかかる場合には、ヒドロコルチゾンを通常の1.5~3倍量服用するなど、対応方法を事前に確認しておく必要がある