<Durvalumab+CDDP+ETP療法>
【レジメン】
Durvalumab(デュルバルマブ)=1500mg:点滴静注(60分以上)
CDDP(シスプラチン)=75~80mg/m2:点滴静注(2時間以上)
ETP(エトポシド))=80~100mg/㎡:点滴静注(30~60分以上)
【投与前】
1,000~2,000mLの輸液
【制吐対策】
①5-HT3受容体拮抗薬(Day1)
②アプレピタント:125mg (Day1) ,80mg(Day2~3)
③デキサメタゾン9.9mgIV(Day1),8mgPO(Day2~4)
④オランザピン5mg(Day1~4)(糖尿病患者には禁忌)
【投与後】
①1,000~2,000mLの輸液
②20%マンニトール200~300mL、フロセミド注10mg(必要に応じ投与)
<Durvalumab+CBDCA+ETP療法>
【レジメン】
Durvalumab=1500mg:点滴静注(60分以上)
CBDCA=AUC5~6:点滴静注(30分以上)
ETP=80~100mg/㎡:点滴静注(30~60分以上)
【制吐対策】
①5-HT3受容体拮抗薬(Day1)
②アプレピタント:125mg (Day1) ,80mg(Day2~3)
③デキサメタゾン4.95mgIV(Day1),4mgPO(Day2~3)
基本事項
【適応】
進展型小細胞肺がん
【奏効率】
・無増悪生存期間(中央値)
5.1カ月
・全生存期間(中央値)
13.0カ月
・奏効率
79%
【副作用】
・好中球減少:All Grade=42%、Grade3以上=24%
・貧血:All Grade=38%、Grade3以上=9%
・血小板減少:All Grade=15%、Grade3以上=6%
・発熱性好中球減少症:All Grade=6%、Grade3以上=5%
・悪心:All Grade=34%、Grade3以上=<1%
・食欲減退:All Grade=18%、Grade3以上=1%
・疲労:All Grade=18%、Grade3以上=2%
・便秘:All Grade=17%、Grade3以上=1%
・下痢:All Grade1=10%、Grade3以上=1%
・脱毛:All Grade1=31%、Grade3以上=1%
・甲状腺機能冗進/低下:All Grade=5%/9%、Grade3以上=0%/0%
・間質性肺疾患:All Grade=3%、Grade3以上=1%
・肝炎:All Grade=3%、Grade3以上=2%
・大腸炎:All Grade=2%、Grade3以上=<1%
・1型糖尿病:All Grade=2%、Grade3以上=2%
・副腎機能不全:All Grade=<1%、Grade3以上=0%
レジメンチェックポイント
①投与量の確認
・CBDCA:Calvertの式より算出する
・CDDP:腎機能の影響を受けるので、以下の基準を参考にする
<CDDP:腎障害時の減量基準>
・GFR(mL/min)=15~50:25%減量、10>:50%減量
または
・Ccr(mL/min)=46~60:25%減量、31~45:50%減量、30≧:使用中止
<ETP:腎障害時の減量基準>
・血清クレアチニン(mg/dl)=1.4>:30%減量
または
・Ccr(mL/min)=15~50:25%減量、15>:さらなる減量調節が必要
<ETP:肝障害時の減量基準>
・T-Bil=1.5~3.0mg/dL or AST>3×ULN:50%減量
・T-Bil>3.Omg/dL=投与中止
②相互作用の確認
・CBDCA:腎毒性および聴器毒性を有する薬剤(アミノグリコシド系抗菌薬等)との併用で腎障害および聴器障害のリスク増大
・CDDP:アミノグリコシド系抗菌薬、バンコマイシン、注射用アムホテリシンB、フロセミドとの併用で腎障害リスク増大。アミノグリコシド系抗菌薬、バンコマイシン、フロセミドとの併用で聴器障害リスク増大。フェニトインとの併用でフェニトインの血漿中濃度が低下したとの報告がある
③副作用に対するDurvalumab休薬、中止基準の確認
・間質性肺疾患=Grade2:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。Grade3または4:本剤の投与を中止する
・肝機能障害=ASTもしくはALTが基準値上限の3~5倍以下、または総ビリルビンが基準値上限の1.5~3倍以下まで増加した場合/ASTもしくはALTが基準値上限の8倍以下、または総ビリルビンが基準値上限の5倍以下まで増加した場合:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。ASTもしくはALTが基準値上限の8倍超または総ビリルビンが基準値上限の5倍超まで増加した場合/ASTもしくはALTが基準値上限の3倍超かつ総ビリルビンが基準値上限の2倍超まで増加し本剤以外に原因がない場合:本剤を中止する
・大腸炎、下痢=Grade2:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。Grade3または4:本剤の投与を中止する
・甲状腺機能亢進症、副腎機能不全、下垂体機能低下症=Grade2~4:症状が安定するまで本剤を休薬する
・腎機能障害=血清クレアチニンが基準値上限またはベースラインの1.5~3倍まで増加した場合:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。血清クレアチニンが基準値上限またはベースラインの3倍超まで増加した場合:本剤の投与を中止する
・筋炎=Grade2または3:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。30日以内にGrade1以下まで回復しない場合または呼吸機能不全の徴候があらわれた場合は本剤の投与を中止する。Grade4:本剤の投与を中止する
・皮膚障害=Grade2で1週間以上継続した場合/Grade3:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。Grade4:本剤の投与を中止する
・心筋炎=Grade2:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。心筋生検で心筋炎を示唆する所見が認められた場合は本剤の投与を中止する。Grade3または4:本剤の投与を中止する
・重症筋無力症=Grade3:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。Grade1以下まで回復しない場合または呼吸機能不全もしくは自律神経失調の徴候があらわれた場合は本剤の投与を中止する。Grade4:本剤の投与を中止する
・Infusion reaction=Grade1または2:本剤の投与を中断もしくは投与速度を50%減速する。Grade3または4:本剤の投与を中止する
・上記以外の副作用(甲状腺機能低下症、1型糖尿病を除く)Grade2または3:Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。Grade4:本剤の投与を中止する
副作用対策と服薬指導のポイント
【Durvalumab】
免疫チェックポイント阻害薬では、頻度は高くないものの多岐にわたる免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、それぞれの時徴や初期症状を指導して、早期に発見・対処することが重要である。irAEとしては、間質性肺疾患、重症筋無力症、大腸炎、1型糖尿病、肝機能障害、甲状腺機能障害、神経障害、腎障害などが報告されており、発現時には速やかに専門医への相談を検討する必要がある。irAEの早期発見のためには、通常の検査項目に加えて、心電図・胸部X線・血糖・甲状腺機能・副腎皮質機能検査など医療機関内であらかじめ取り決めをしておくことも重要である。また、Durvalumab投与終了後に重篤な副作用があらわれることもあるので、Durvalumab投与終了後も観察を十分に行う。
①間質性肺炎
急性肺障害、間質性肺疾患があらわれることがあるので、患者には初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱などの有無)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する。Grade2の場合には、副腎皮質ステロイド(初回用量:プレドニゾロン換算1~2mg/kg)の投与を考慮する。Grade3~4の重篤な症状の場合で、ステロイドパルス療法などの治療にて48時間を超えても症状が改善しない場合には、適応外使用であることを留意のうえ、免疫抑制薬(インフリキシマブ、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチルなど)の投与を考慮する。
②大腸炎・重度の下痢
脱水予防のための水分摂取について説明するとともに、症状の急激な悪化または遷延時の医療機関への受診について指導する。止潟薬であるロペラミドを投与する場合は、irAEによる下痢をマスクする可能性があるため使用には十分注意が必要である。Grade3以上の重症およびGrade2でも遷延する場合にはステロイド、またはインフリキシマブ5mg/kg(保険適用外)の投与を考慮する。ただし腸穿孔、敗血症などの合併時にはインフリキシマブ投与は勧められない。
③1型糖尿病
劇症1型糖尿病の報告もされているため、口渇、多飲、多尿などの高血糖症状や激しい倦怠感、悪心嘔吐などの糖尿病性ケトアシドーシス症状および早期の医療機関への受診について指導する。1型糖尿病が疑われる場合には専門医と連携するとともに。Durvalumabの投与を中止し補液や電解質補充、インスリン投与を開始する。ステロイドの使用にはエビデンスはなく推奨されていない。
④甲状腺機能障害
比較的頻度の高いirAEであること、甲状腺機能亢進症(動悸、発汗、暑がり、軟便、体重減少、不眠、振戦、眼球突出)および甲状腺機能低下症(易疲労、脱力感、寒がり、便秘、体重増加、徐脈、眼瞼浮腫、こむら返り、嗄声)の症状を説明する。甲状腺機能障害は、破壊性甲状腺炎に伴う甲状腺機能亢進症を経由して甲状腺機能低下に至る症例も報告されている。甲状腺機能障害は無症状で進行することもあるため、甲状腺刺激ホルモン(TSH)・遊離T3・遊離T4を定期的に測定することを考慮する。なお、副腎機能障害が併発している場合、ヒドロコルチゾンの投与を先行させる。
⑤副腎皮質機能低下症
コルチゾール欠乏に伴う易疲労性、食欲不振、消化器症状などやアルドステロン欠乏に伴う低ナトリウム血症、高カリウム血症、低血圧などの症状を伝え、自覚する場合には早期の医療機関への受診について指導する。副腎皮質機能低下を疑う場合にはACTH、コルチゾールを測定し、内分泌専門医と連携するとともに、ヒドロコルチゾン10~20mg/日より開始し、患者の状態に合わせて調節する。ヒドロコルチゾン開始後は、副腎クリーゼ予防のために、自己判断で中断しないことを説明する。また、発熱等で普段と違うストレスがかかる場合には、ヒドロコルチゾンを通常の1.5~3倍量服用するなど、対応方法を事前に確認しておく必要がある。
【CDDP】
①悪心・嘔吐
CDDPは90%に急性、30~50%に遅発性の悪心・嘔吐の発現があり得る。患者の症状に留意し、必要に応じて制吐薬の追加を行う。
②腎機能障害
CDDPでは腎障害が起こりやすいため、予防として水分の摂取がすすめられる。尿量の確保、体重の測定を行い、適宜利尿薬を併用する。
③神経障害
CDDPでは手足のしびれなどの末梢神経障害と4,000~8,000Hz付近の高音域聴力障害が問題とされている。一般的にCDDPの総投与量が300~500mg/m2以上になると発現頻度が高くなるといわれ、症状が軽度なものは長期間のうちに回復するが、不可逆的になることもある。