
三重県、奈良県、和歌山県における高精度放射線治療の現状
がんの放射線治療は日々進歩しており、サイバーナイフやトモセラピーといった高精度放射線治療装置の登場により、従来よりも効果的で副作用の少ない治療が可能になっています。
三重県、奈良県、和歌山県における、これらの高精度放射線治療装置の導入状況について、2026年1月時点の最新情報をまとめました。
サイバーナイフの導入状況
三重県におけるサイバーナイフ
2026年1月現在、三重県内でサイバーナイフ治療を実施できる医療機関はありません。
サイバーナイフは、ロボットアームに搭載された小型の放射線発生装置により、ミリ単位以下の精度で多方向から細いX線を患部に集約する治療装置です。脳腫瘍、頭頸部腫瘍、肺がん、肝臓がん、前立腺がんなどが主な適応疾患となっています。
治療時間は1回あたり30分前後で、状況に応じて1回から5回程度で完結します。治療中に痛みを感じることはなく、通院での治療も可能です。
奈良県におけるサイバーナイフ
奈良県内にもサイバーナイフを導入している医療機関はありません。
和歌山県におけるサイバーナイフ
和歌山県内においても、現時点でサイバーナイフ治療を実施できる施設は確認されていません。
近隣地域でのサイバーナイフ治療
三重県、奈良県、和歌山県の患者さんがサイバーナイフ治療を希望される場合、近隣地域の医療機関を検討する必要があります。
関西地域では、大阪大学医学部附属病院が1998年からサイバーナイフ治療を実施しており、2014年に呼吸追尾システムを搭載した新機種に更新しています。脳腫瘍、頭頸部腫瘍、肺がん、肝臓がん、前立腺がんに対応しています。
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トモセラピーの導入状況
トモセラピーとは
トモセラピーは、CT装置と放射線治療装置を一体化させた強度変調放射線治療(IMRT)の専用装置です。
主な特徴は以下の通りです。
1. 強度変調放射線治療(IMRT)技術により、腫瘍の形状に合わせた線量分布を作成し、ターゲットへの線量集中性を高めることができます。
2. 照射直前にCT画像を取得し、腫瘍の位置を毎回確認することで照射精度を高めます。これを画像誘導放射線治療(IGRT)と言います。
3. ベッドを移動しながら360度全方向から照射することで、広範囲の治療も可能です。
治療時間は1回あたり10分から20分程度で、通常は平日毎日行います。治療回数はがんの部位や状態によって異なりますが、5回から30回程度となります。
三重県におけるトモセラピー
三重県では、鈴鹿中央総合病院がトモセラピーを導入しています。
| 施設名 | 導入時期 | 所在地 | 主な適応疾患 |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿中央総合病院 | 2010年10月 | 三重県鈴鹿市安塚町山之花1275-53 | 前立腺がん、頭頸部がん、その他体幹部腫瘍 |
鈴鹿中央総合病院は地域がん診療連携拠点病院に指定されており、前立腺がんをはじめ、頭頸部がんや体幹部への治療でトモセラピーを活用しています。
同院は三重県厚生農業協同組合連合会が運営する総合病院で、地域医療支援病院としても機能しています。
奈良県におけるトモセラピー
2025年1月現在、奈良県内でトモセラピーを導入している医療機関は確認されていません。
ただし、奈良県には陽子線治療センター(高清会)があり、陽子線治療という別の高精度放射線治療を提供しています。
和歌山県におけるトモセラピー
和歌山県では、和歌山県立医科大学附属病院がトモセラピーを導入しているとされています。
| 施設名 | 所在地 | 主な適応疾患 |
|---|---|---|
| 和歌山県立医科大学附属病院 | 和歌山県和歌山市紀三井寺811番地1 | 脳腫瘍、頭頸部腫瘍、骨盤部腫瘍、肺がん、前立腺がん、子宮がんなど |
和歌山県立医科大学附属病院は、県内唯一の特定機能病院であり、高度救命救急センター、がん診療連携拠点病院としても指定されています。
元記事によると、同院では脳腫瘍、頭頸部腫瘍(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん、上顎がんなど)、骨盤部腫瘍、肺がん、前立腺がん、子宮がんにトモセラピーによる治療を中心に実施しているとされています。
トモセラピーの対象外の場合は三次元放射線治療を行い、子宮頸がん、前立腺がん、再発直腸がん、口腔がん、その他の外科治療困難な固形腫瘍に対してはイリジウム192リモートアフターローダーを用いた密封小線源治療も実施しています。
粒子線治療(重粒子線・陽子線)の導入状況
粒子線治療とは
粒子線治療は、陽子や炭素イオン(重粒子)といった粒子を加速して照射する放射線治療です。
通常のX線と異なり、体内の一定の深さで放射線の強度が一気に高まり、その後急激に減弱する「ブラッグピーク」という特性があります。この特性により、がん病巣に集中的に放射線を当てながら、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えることができます。
2024年6月からは、保険適用範囲が拡大され、早期肺がん(Ⅰ期からⅡA期)なども対象となりました。
三重県における粒子線治療
三重県内には、重粒子線治療や陽子線治療を実施できる施設はありません。
奈良県における粒子線治療
奈良県には、高清会陽子線治療センターがあります。
同センターは奈良県立医科大学と共同研究を行っており、以下の疾患が保険適用となっています。
| 疾患分類 | 詳細 |
|---|---|
| 小児腫瘍 | 白血病を除く |
| 骨軟部腫瘍 | 切除非適応のもの |
| 前立腺がん | 転移のないもの |
| 頭頸部悪性腫瘍 | 口腔、咽喉頭の扁平上皮がんを除く |
| 肝細胞がん | 直径4cm以上のもの |
| 肝内胆管がん | - |
| 局所進行性膵がん | - |
| 局所大腸がん | 術後再発 |
| 早期肺がん | Ⅰ期からⅡA期(2024年6月から保険適用拡大) |
和歌山県における粒子線治療
和歌山県内には、重粒子線治療や陽子線治療を実施できる施設はありません。
なお、和歌山県では、がん治療を目的とした先進医療を受けようとする県民の方に対し、先進医療(技術料)に係る治療費の補助制度があります。
近隣地域の粒子線治療施設
関西地域では、兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市)が、世界で初めて陽子線治療と重粒子線治療の両方を実施できる施設として運営されています。
また、神戸陽子線センター(兵庫県神戸市)では陽子線治療を実施しています。同センターは県立こども病院と併設されており、小児がん治療にも対応しています。
高精度放射線治療の適応と選択
治療装置の違いと特徴
サイバーナイフ、トモセラピー、粒子線治療には、それぞれ以下のような特徴があります。
サイバーナイフの特徴:
- ピンポイント照射に特化
- 1回から5回程度の短期間治療が可能
- 呼吸による動きを追尾できる
- 脳腫瘍、肺がん、肝臓がんなどに適応
トモセラピーの特徴:
- CT機能を内蔵し、毎回位置確認が可能
- 広範囲の照射も対応可能
- 強度変調が得意
- 前立腺がん、頭頸部がん、体幹部腫瘍などに適応
粒子線治療の特徴:
- ブラッグピークにより深部への集中照射が可能
- 陽子線と重粒子線がある
- 骨軟部腫瘍、小児がんなどに特に有効
- 治療費が高額(ただし保険適用範囲が拡大)
治療選択のポイント
高精度放射線治療を選択する際には、以下の点を考慮する必要があります。
がんの種類と部位:
がんの種類や発生部位によって、最適な治療法は異なります。主治医と相談し、自身のがんに最も適した治療法を選択することが重要です。
がんの進行度:
早期がんと進行がんでは、適応となる治療法が異なる場合があります。
施設へのアクセス:
県内に施設がない場合、近隣県の施設を利用することになります。通院の負担や入院の可能性を考慮する必要があります。
治療費用:
保険適用の範囲が治療法によって異なります。2024年6月から粒子線治療の保険適用範囲が拡大されましたが、それでも高額な費用がかかる場合があります。高額療養費制度の活用も検討しましょう。
高精度放射線治療を受けるための手順
まずは主治医に相談
高精度放射線治療を希望する場合、まず現在の主治医に相談することが第一歩です。
主治医は、患者さんの病状、がんの種類、進行度などを総合的に判断し、高精度放射線治療が適切かどうかを評価します。
紹介状の準備
高精度放射線治療を実施している施設を受診する際には、紹介状が必要です。
紹介状には、診断名、病理結果、これまでの治療経過、CT・MRI・PETなどの画像検査データなどが含まれます。
治療施設での診察
治療施設では、放射線腫瘍医が診察を行い、提供された資料をもとに治療の適応を判断します。
適応がある場合、治療の目的、期待できる効果、副作用、治療期間、費用などについて詳しい説明があります。
治療計画の作成
治療が決定すると、CT撮影や固定具の作成など、治療計画のための準備が行われます。
コンピュータを使用して、腫瘍の位置や形状、周囲の正常組織を考慮した最適な照射計画が作成されます。
放射線治療を受ける際の注意点
副作用について
高精度放射線治療は従来の放射線治療よりも副作用が少ないとされていますが、完全に副作用がないわけではありません。
照射部位や線量によって、皮膚炎、倦怠感、消化器症状などが生じることがあります。副作用が出た場合は、速やかに医療スタッフに相談しましょう。
治療期間中の生活
トモセラピーの場合、通常は平日毎日通院して治療を受けることになります。治療自体は10分から20分程度ですが、準備や待ち時間を含めると、ある程度の時間が必要です。
仕事を続けながら治療を受けることも可能ですが、体調に応じて調整が必要な場合もあります。
治療後の経過観察
放射線治療の効果は、すぐに現れるものではありません。治療後は定期的に画像検査や診察を受け、経過を観察します。
場合によっては、紹介元の医療機関で経過観察を行うこともあります。
まとめと今後の展望
三重県、奈良県、和歌山県における高精度放射線治療の導入状況は、地域によって大きく異なります。
トモセラピーについては、三重県の鈴鹿中央総合病院、和歌山県の和歌山県立医科大学附属病院で実施されています。サイバーナイフについては、3県いずれにも導入施設がないため、近隣地域の施設を検討する必要があります。
粒子線治療については、奈良県の高清会陽子線治療センターで陽子線治療が実施されています。2024年6月からは保険適用範囲が拡大され、早期肺がんなども対象となりました。
放射線治療技術は日々進歩しており、今後も新しい治療法や装置の導入が期待されます。自身のがんに最適な治療を選択するためには、主治医とよく相談し、セカンドオピニオンを活用することも検討しましょう。
がん治療は、手術、薬物療法、放射線治療を適切に組み合わせることで、より良い結果が得られます。それぞれの治療法のメリット・デメリットを理解し、自身の価値観や生活スタイルに合った治療を選択することが大切です。