
ホメオパシーとは何か?その基本原則と特徴
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
ホメオパシーは約200年前にドイツ人医師サミュエル・ハーネマンによって体系化された医療体系です。現在、世界の80カ国以上で用いられており、欧州では約30パーセントの人々がセルフケアとして利用しています。
ホメオパシーには2つの基本原則があります。
1つ目は「類似の原則」です。ある症状で苦しんでいる人に、健康な人に与えた場合に同じような症状を引き起こす物質(レメディと呼ばれる)を投与する、というものです。
2つ目は「最小限で効果的な投与」です。原料をレメディにする過程で10の60乗倍程度という高い希釈率で薄めることで、心身に悪影響を及ぼさず、自然治癒力に働きかける作用のみを得ようとするものです。
分かりやすく例えれば「ハチに刺されたとき、ハチの毒を高度に薄めた砂糖玉を飲んで治す」という考え方です。日本語では「同質療法」「同種療法」と訳され、毒をもって毒を制す、病の原因となるものをもって病を制す、という理念に基づいています。
レメディは3,000種以上あるとされていますが、なぜ効くのかはいまだ解明されていません。
世界各国におけるホメオパシーの位置づけ
ホメオパシーを行う者に対する規制は国によって異なります。フランス、オーストリア、ハンガリー、ロシアなど、法的規制のもとに医師のみが行う国もあれば、英国のように法的規制のない国、ドイツのように独自の形態を取っている国もあります。
| 国・地域 | 規制状況 | 保険適用 |
|---|---|---|
| フランス、オーストリア等 | 医師のみが実施可能 | 国による異なる扱い |
| 英国 | 法的規制なし | 2010年以降保険適用外推奨 |
| ドイツ | 独自の形態 | 2004年保険適用外 |
| 日本 | 法的規制なし | 保険適用外 |
| インド | 国家資格制度あり | 保険適用あり |
日本では保険適応内の医療ではなく、法的な規制も一切ない状況です。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
日本におけるホメオパシーへの公式見解
日本学術会議は2010年8月24日に会長談話として「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを『効果がある』と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です」と発表しました。
この談話を日本医学会、日本医師会、日本小児科学会も全面的に支持する姿勢を示しています。日本の医療界では「ホメオパシーは非科学的であり排除すべき存在」と位置付けられているといえます。
厚生労働省の統合医療情報発信サイト(eJIM)においても、ホメオパシーが特定の健康状態に有効な治療法であることを裏付ける科学的根拠はほとんどないと記載されています。
がん治療としての客観的検証結果
ホメオパシーを支持する人は「科学的に解明はされていないが、実際に様々な疾患に対して効果はある」と主張する一方、支持しない人は「プラセボ効果(偽薬による思い込み的な効果)しかない。医療ではなく直接的には何の効果もない」と主張しています。
これらの論争に決着を見出そうと、世界中で様々な無作為化比較試験や研究論文が報告されてきました。
信頼性の高い医療論文データベースであるPubMedで検索したところ、ホメオパシーががんの縮小や生存率向上、予後の向上に寄与したとする論文は現時点では存在していません。
がん治療として腫瘍を小さくしたり、生存期間を延長させる効果を示せる根拠がない、というのが結論になります。
2015年にオーストラリア政府の国立保健医療研究評議会が行ったエビデンスの総合的評価でも、ホメオパシーがいかなる健康状態にも有効であるという信頼できるエビデンスはないと結論づけられています。
がんによって引き起こされる症状への効果
がん患者さんのQOL(生活の質)の向上や、がん治療の副作用の軽減に関与するかどうかについては、いくつかの無作為化比較試験が行われています。
ホットフラッシュへの効果
PubMedで無作為化比較試験が2件あります。
1つは手術、抗がん剤、放射線治療を完了した乳がん患者さんの「ホットフラッシュ」に対してのものです。プラセボ(偽薬)と比較してホメオパシーが有用であったことを示す確証はないと結論を示しています。しかし、全体的健康感の指標は改善する可能性があると述べています。
もう1つの試験では乳がんサバイバーにおけるエストロゲン減少の症状に対してプラセボと比較してホメオパシーが有用であったことを示す確証はないと述べています。
現時点では乳がん患者さんに対してホメオパシーによるホットフラッシュを含めたエストロゲン減少の症状を改善させる効果に対する根拠はないとされています。
その他の部位のがん、症状に関しては試験や論文がまだありません。また、がんによって引き起こされるメンタル的な苦痛や問題についての報告、試験、論文もありません。
QOL(生活の質)改善への効果
これに関してはシステマティックレビュー(文献をくまなく調査し、ランダム化比較試験のような質の高い研究のデータを偏りを限りなく除いたうえで分析を行うこと)がPubMedに1件あります。
ここでは「ホメオパシーにはがん治療における効果(がんと闘うための体力増強、身体的・精神的な健康の改善、病気や治療の結果起こる痛みの緩和)を示す十分な確証はない」としています。
結果として、現時点では「がん患者さんに対してホメオパシーは従来の治療のみを行った群と比較して全般的なQOLのうち、がんと闘うための体力増強、身体的・精神的な健康の改善、病気や治療の結果起こる痛みを改善させる根拠はない」という状況です。
がん治療に伴う副作用軽減への可能性
副作用に関連するものとして、システマティックレビューが1件、無作為化比較試験が3件あります。
放射線治療による皮膚炎への効果
システマティックレビューでは、ホメオパシー薬(Calendula:カレンジュラ)が放射線治療中の急性皮膚炎を予防する可能性があるとしています。
参加者数254名の試験で、放射線治療誘発皮膚炎の予防において局所カレンジュラがトロラミン(副腎皮質ステロイドを含まない局所薬)より優れていることが証明されました。
また、放射線治療における皮膚炎において皮膚の熱感に対してはホメオパシー薬(Belladonna、X-ray)によって改善する可能性があるとしています。
化学療法による口内炎への効果
化学療法による口内炎がホメオパシー薬(TraumeelS:トラウミール)により改善する可能性があると述べています。
参加者数32名の試験では、化学治療誘発口内炎に対する洗口液としてプラセボよりトラウミールS(複合ホメオパシー)のほうが利益があることが証明されました。
また、ホメオパシー薬(TraumeelS)が骨髄移植を受けた小児の口内炎の苦痛と病悩期間を改善する可能性があると述べています。
抗がん剤による悪心・嘔吐への効果
標準的な悪心予防に複合ホメオパシー薬(Cocculine)を追加することについて、早期乳がん患者さんにおける抗がん剤による悪心・嘔吐の予防には効果がないと結論を示しています。
| 副作用の種類 | 使用されたレメディ | 効果の可能性 |
|---|---|---|
| 放射線治療の皮膚炎 | カレンジュラ軟膏 | 予防の可能性あり(要再試験) |
| 放射線治療の皮膚熱感 | ベラドンナ、X-ray | 改善の可能性あり |
| 化学療法の口内炎 | トラウミールS | 改善の可能性あり(要再試験) |
| 抗がん剤の悪心・嘔吐 | コクリン | 効果なし |
以上より、がん患者さんに対してホメオパシーはプラセボと比較して口内炎や放射線治療における皮膚炎を軽減させる可能性があると考えられます。一方で抗がん剤による悪心・嘔吐の予防を軽減させる医学的根拠は現時点ではありません。
ホメオパシーの安全性と注意すべき点
疾患に対する医学的知識や臨床経験をもっている治療者から投与されたホメオパシーのレメディ自体は安全であることが多い、とされています。特に欧米の医療者が行うホメオパシーで何らかの問題や症状の悪化につながることはほぼない、とされています。
しかし、8件の試験すべてにおいてホメオパシー医療が重篤な有害作用を引き起こしたり、従来の治療と相互作用したりすることはないように思われる一方で、いくつかの注意点があります。
アグラベーション(好転反応)について
ホメオパシーでの副作用的反応には「アグラベーション」があります。
「アグラベーション」は、日本でよく言われるところの「好転反応」です。これは病状が回復する前に一時的に悪化するという状態を指します。
一般的な医療でもアグラベーションはあり、薬物を投与した場合に低確率で起きる可能性があるとされています。
しかし、本来はアグラベーションが起こらずに回復するのが望ましく、これがもしホメオパシーの途中で起きたらホメオパシーをいったん中止すべきです。もし回復中の一時的な悪化でなければ病状の悪化であり、そのままホメオパシーを続ければトラブルに発展することがあります。
全体の10パーセント程度でしか起こらないとされていますが、起きた場合には適切な対応が必要です。
誤用による重大事故
レメディを誤って使用し、新生児が死亡した事件も報告されています(ビタミンK欠乏症の新生児に対して、レメディを投与し新生児が死亡した事件)。
このような事例から、医学的知識のない者が独自の判断でホメオパシーのレメディを使用することの危険性が指摘されています。
ホメオパシーの限界とデメリット
ホメオパシーには以下のような限界があります。
まず、がんを縮小させる、生存率を向上させる、予後を改善するといった直接的な治療効果は科学的に証明されていません。
また、通常の医療から患者さんを遠ざける危険性があります。ホメオパシーを「がんを治す治療法」と誤解し、標準治療を受けるべきタイミングで受けなかったり、中断したりすることで、治療の機会を逃す可能性があります。
研究に関しても以下のような問題点があります。
| 研究上の問題点 | 詳細 |
|---|---|
| 患者背景の不統一 | 臨床試験ごとに対象患者が異なる |
| 対照群の設定 | 研究ごとに異なる基準が用いられている |
| 試験規模 | ほとんどの報告が小規模な試験である |
| 評価方法 | アウトカムの評価方法が臨床試験ごとに異なる |
今後、ホメオパシーのエビデンスを示すためには、さらなる大規模で質の高い研究が必要とされています。
ホメオパシーを考える際の判断基準
がん患者さんがホメオパシーを検討する際には、以下の点を理解しておく必要があります。
まず、ホメオパシーはがんそのものを治療する方法ではないということです。腫瘍を小さくする、転移を防ぐ、生存期間を延ばすといった効果は科学的に証明されていません。
一方で、放射線治療による皮膚炎や化学療法による口内炎といった、がん治療に伴う一部の副作用を軽減する可能性については、限定的ながら研究報告があります。ただし、これらも再試験が必要とされており、確実な効果とは言えません。
もしホメオパシーを利用する場合は、以下の点に注意してください。
医学的知識と臨床経験を持つ医療者(医師、歯科医師など)が行うホメオパシーを選ぶことです。日本メディカルホメオパシー学会などの医師による団体も存在します。
「好転反応」と称される症状悪化が起きた場合は、すぐに中止し、主治医に相談することです。
通常の医療を中断したり、拒否したりしないことです。
医学的根拠に基づいた判断を
医学的に明確な根拠がないということは知られているホメオパシーですが、古来より支持している人が一定数存在することや、神秘的な要素もあることから、がんに罹患された方々でもホメオパシーを実践する人は多くいます。
しかし、2010年の日本学術会議の会長談話以降、日本の医療界ではホメオパシーの治療効果を科学的に否定する姿勢が明確になっています。
がん治療において最も重要なことは、科学的根拠に基づいた標準治療を適切なタイミングで受けることです。その上で、補完的な療法を検討する場合には、主治医とよく相談し、標準治療を妨げないことを確認する必要があります。
ホメオパシーに関しては、がんそのものへの治療効果は証明されていない一方で、一部の治療副作用を軽減する可能性について限定的な研究報告があるという現状を理解しておくことが大切です。
がん治療の選択においては、期待や希望だけでなく、客観的な科学的根拠を基に判断することが、患者さんご自身の利益につながります。
参考文献・出典情報:
1. コクラン「癌治療による有害作用に対するホメオパシー医療」
2. 厚生労働省eJIM「ホメオパシー」
3. 日本緩和医療学会「がん補完代替医療ガイドライン ホメオパシー」
4. サイエンスポータル「日本学術会議会長ホメオパシーの治療効果全面否定」
5. 日本小児科学会「ホメオパシーへの対応について」
6. 日本医師会「ホメオパシーへの対応について見解」
7. 日本メディカルホメオパシー学会
8. MSDマニュアル家庭版「ホメオパシー」
9. 日本経済新聞「代替療法ホメオパシーの根拠否定 学術会議が会長談話」
10. 日本がん難病サポート協会「統合医療とは」