
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
再発または進行した子宮頸がんに対しては、化学療法(抗がん剤などの薬を使った薬物療法)が治療の中心になります。
2024年から2025年にかけて、子宮頸がんの薬物療法は大きく進歩しました。免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダ(ペムブロリズマブ)の適応拡大や、新しい抗体薬物複合体であるテブダック(チソツマブ・ベドチン)の登場により、患者さんの治療選択肢は確実に広がっています。
ただし、治療の基盤となるTC療法とTP療法について正しく理解することは、これからの治療選択を考えるうえでとても重要です。この記事では、2026年時点の最新情報を踏まえながら、これらの治療法について詳しく解説します。
子宮頸がんで使われる抗がん剤の種類と効果
子宮頸がんの治療に使用できる抗がん剤は複数あり、それぞれの効果(奏効率)も明らかになっています。奏効率とは、腫瘍が完全に消失した「完全奏効(CR)」と30%以上小さくなった「部分奏効(PR)」の合計を指します。
子宮頸がん診療ガイドラインには、以下の薬剤が掲載されています。
| 薬剤名 | 奏効率(%) |
|---|---|
| シスプラチン | 20〜30 |
| カルボプラチン | 15 |
| ネダプラチン | 34〜41 |
| パクリタキセル | 17 |
| イリノテカン | 24 |
| イホスファミド | 14〜40 |
| トポテカン | 19 |
| ゲムシタビン | 8 |
| ドセタキセル | 9 |
| フルオロウラシル | 4〜9 |
| ブレオマイシン | 10 |
| ビノレルビン | 17 |
| リポソーム化ドキソルビシン | 11 |
これらの数値は、それぞれの薬剤を単独で投与した場合の奏効率です。実際の治療では、複数の薬剤を組み合わせることで効果を高めます。
現在、進行・再発の子宮頸がんに対する1次治療として最も広く実施されているのは、TP療法(パクリタキセルとシスプラチンの併用)またはTC療法(パクリタキセルとカルボプラチンの併用)です。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
TC療法とTP療法の違いと、それぞれの効果
「どの薬を組み合わせたときに最も効果があり、なおかつ重篤な副作用が少ないか」を調べるための臨床試験は、国際的に広く行われてきました。
TP療法の特徴と効果
複数の組み合わせから最初に有効性が証明され、長く標準治療として用いられてきたのがTP療法(パクリタキセル+シスプラチン)です。
大規模な比較試験が複数行われ、子宮頸がん診療ガイドラインに掲載されている数値では、TP療法の奏効率は29%〜36%程度とされています。これがTP療法の効果として基準となり、後に登場する治療法はこれと比較されることになりました。
TP療法の課題とTC療法のメリット
TP療法は国際的な標準治療として最近まで長く第一選択肢でしたが、いくつかの課題がありました。
シスプラチンは消化器や腎臓に対する毒性が強く、腎臓を保護するために水分を点滴しながら投与する必要があります。また、シスプラチンとパクリタキセルの両方が末梢神経障害という副作用を引き起こすため、短時間で一度に投与することは危険です。そのため、TP療法ではパクリタキセルを24時間連続で投与する必要がありました。
当然ながら投与は入院での対応となり、患者さんはもちろん医療現場にも負担が大きい治療になります。
一方、TC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)で使うカルボプラチンは、シスプラチンと同系統(プラチナ製剤)の薬で作用はとても似ていますが、腎臓に与える毒性が低いため、患者さんの腎機能の状態に応じて投与量をコントロールできます。
TC療法の有効性が証明されるまで
カルボプラチン単剤での奏効率は15%程度と高くありませんが、パクリタキセルと併用するTC療法の臨床試験で53%程度の奏効率を示したことから注目されました。
過去に行われたTP療法の臨床試験とは条件や環境が異なるため、奏効率だけで単純に比較はできませんが、入院せずに通院で投与できることは患者さんにとって大きなメリットです。
日本では、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)がTP療法とTC療法の比較試験を長期にわたり実施しました。2015年に示されたJCOGの報告では、TC療法は欧米における標準治療であったTP療法に対する全生存期間(OS)における非劣性が検証されたとされています。
つまり、TC療法は効果の面でTP療法に劣らないことが分かり、なおかつ投与に関する患者さんと医療者の負担が小さいため、現在ではTC療法を優先する医療機関が多くなっています。
副作用の比較
JCOGの報告によると、副作用は以下のとおりです。
| 副作用の種類 | TP療法(Grade3〜4)(%) | TP療法(Grade4)(%) | TC療法(Grade3〜4)(%) | TC療法(Grade4)(%) |
|---|---|---|---|---|
| 好中球減少 | 85.5 | 75.0 | 76.2 | 45.2 |
| 発熱性好中球減少 | 18.0 | 0 | 7.1 | 0 |
| 貧血 | 31.2 | 10.4 | 44.4 | 14.3 |
| 血小板減少 | 3.2 | 3.2 | 24.6 | 10.3 |
| 悪心・嘔吐 | 29.6 | 6.4 | 19.8 | 3.2 |
| 疲労 | 17.6 | 4.0 | 15.9 | 7.9 |
| 脱毛 | 64.8 | - | 69.0 | - |
| 関節の疼痛 | 10.4 | 0.8 | 20.8 | 1.6 |
| 筋肉の疼痛 | 6.4 | 0.8 | 14.3 | 2.4 |
| 感覚性の神経障害 | 14.4 | 0 | 22.2 | 4.8 |
| 下痢 | 8.0 | 1.6 | 4.0 | 1.6 |
| アレルギー反応 | 0.8 | 0.8 | 3.2 | 0 |
| クレアチニン上昇 | 7.2 | 2.4 | 4.8 | 0 |
TP療法は悪心・嘔吐の副作用が強く表れる傾向があり、TC療法は血小板の減少(血が止まりにくくなる)や関節痛、筋肉痛、神経障害など痛覚に関する副作用が強く出る傾向があります。
それぞれ一長一短がありますが、日本国内ではTC療法を優先して実施する医療機関が多くなっています。
日本で選択肢に入る「イリノテカンとネダプラチンの併用療法」
日本では、TP療法・TC療法の2つに加えて「イリノテカンとネダプラチンの併用療法」も選択肢に入ります。
イリノテカンとネダプラチンはどちらも日本で開発された抗がん薬です。日本国内の臨床試験で有用性が報告されていますが、国際的なコンセンサスは得られていません。そのため「イリノテカンとネダプラチンの併用療法」は、日本および一部のアジア地域で行われている地域限定の治療法といえます。
国内での臨床試験ではTP療法やTC療法に匹敵する効果があるとされており、TP療法のように入院を必要とせず通院で対応可能です。
2026年現在、子宮頸がん向けの化学療法の1次治療として選択されるのは、TP療法またはTC療法が中心です。投与後、効果が薄くなったり副作用が上回って継続できなくなった場合の2次治療法として「イリノテカンとネダプラチンの併用療法」が採用されることがあります。
TP療法とTC療法は、いずれもパクリタキセルとプラチナ製剤の組み合わせなので作用機序がよく似ています。そのため、TPの後にTCを用いても大きな変化は期待できません。薬の系統や作用の異なる「イリノテカンとネダプラチン」を選択するのは理にかなった判断といえます。
| 治療法 | 略称 | 投与方法 |
|---|---|---|
| パクリタキセル+シスプラチン | TP療法 | 入院 |
| パクリタキセル+カルボプラチン | TC療法 | 外来(通院) |
| イリノテカン+ネダプラチン | - | 外来(通院) |
免疫チェックポイント阻害薬による治療の進歩【2024-2026年の大きな変化】
2024年から2025年にかけて、子宮頸がんの治療は大きく変わりました。免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダ(ペムブロリズマブ)の適応拡大が相次ぎ、患者さんの予後改善に貢献しています。
進行・再発の子宮頸がんに対するキイトルーダの併用【2022年承認】
2022年、進行または再発の子宮頸がんに対してキイトルーダが承認されました。国際共同第3相試験(KEYNOTE-826試験)では、TC療法またはTP療法にキイトルーダを併用することで、全生存期間が化学療法のみの場合と比べて有意に延長することが示されました。
この結果により、2026年現在、進行・再発の子宮頸がんに対する1次治療では「TC療法+キイトルーダ」または「TP療法+キイトルーダ」が新たな標準治療の選択肢となっています。
局所進行子宮頸がんに対するキイトルーダの併用【2024年11月承認】
2024年11月には、局所進行子宮頸がんに対する同時化学放射線療法との併用についても承認されました。国際共同第3相試験(KEYNOTE-A18試験)では、キイトルーダを同時化学放射線療法に併用することで、無増悪生存期間と全生存期間が有意に延長しました。
これにより、手術や放射線治療が適応となる患者さんに対しても、免疫療法を組み合わせた治療が可能になっています。
2次治療におけるセミプリマブ(リブタヨ)
1次治療後に病勢進行した患者さんに対しては、2022年に承認された免疫チェックポイント阻害薬セミプリマブ(リブタヨ)が選択肢となります。全生存期間の中央値は約12ヶ月と報告されています。
2次治療の新たな選択肢:テブダック(チソツマブ・ベドチン)【2025年承認】
2025年3月、子宮頸がんの2次治療に新しい薬剤が承認されました。テブダック(チソツマブ・ベドチン)は、組織因子(TF)を標的とするモノクローナル抗体に微小管阻害薬を結合させた抗体薬物複合体(ADC)です。
国際共同第3相試験(innovaTV 301試験)では、化学療法歴のある進行または再発の子宮頸がん患者502例(日本人患者101例を含む)を対象に、テブダックと治験担当医師が選択した化学療法を比較しました。
その結果、テブダック群の全生存期間中央値は11.5ヶ月で、化学療法群の9.5ヶ月と比べて有意に延長しました。無増悪生存期間も4.2ヶ月と、化学療法群の2.9ヶ月に比べて有意に延長しています。
テブダックは2025年5月に発売され、2次治療以降の新たな選択肢として期待されています。ただし、特徴的な有害事象として眼障害(結膜炎など)が発現することがあるため、適切な管理が必要です。
分子標的薬アバスチン(ベバシズマブ)の併用【2016年承認】
子宮頸がんに対しては長らく抗がん剤しか選択肢がありませんでしたが、2016年に承認されたのが分子標的薬のアバスチン(ベバシズマブ)です。
国際的な臨床試験で「TP療法」と「TP療法+アバスチン」を比較した結果、TP療法を行ったグループの生存期間中央値(OS)が12.9ヶ月だったのに対し、TP+アバスチン療法を行ったグループでは16.8ヶ月でした。つまり、TP療法にアバスチンを加えたほうが生存期間が約4ヶ月延長したことになります。
アバスチンの副作用と注意点
アバスチンの承認以降、TP療法やTC療法を行う場合にアバスチンを併用することが増えました。しかし、もともとの化学療法による副作用に加えて、アバスチン特有の副作用も上乗せされるというリスクがあります。
アバスチンの副作用には高血圧、たんぱく尿、鼻血などがあり、重篤な副作用としては血栓症、消化管穿孔などがあります。
こういった副作用の影響を受けやすい患者さん(心臓近くに血栓がありワーファリンなどの血液をサラサラにする薬を投与されている人など)は、アバスチンをTP療法やTC療法に加えることができません。
また、過去に子宮頸がんに対する放射線治療を受けている人は、放射線の副作用で直腸の壁が脆くなっていて、アバスチンを使うことで直腸膣瘻(ちつろう)という副作用を起こすことがあります。日本での調査では、放射線治療歴のある患者さんでは瘻孔が約4.6%、消化管穿孔が約5.9%に認められました。
直腸膣瘻とは、直腸に孔が空き、直腸と膣が物理的に繋がってしまう疾患です。直腸と膣はとても近い位置にあり間には薄い壁しかないため、直腸壁に孔が空いてしまうことでお互いが繋がってしまいます。直腸を通って排出されるべき排泄物が膣に入ってきてしまうことになり、肉体的にも精神的にも厳しい症状であるため、放射線治療を受けた方はアバスチンの使用について慎重に検討する必要があります。
2026年現在の子宮頸がん薬物療法の治療フロー
進行・再発の子宮頸がんに対する治療は、次のような流れで行われることが多くなっています。
1次治療の選択肢
- TC療法+キイトルーダ
- TC療法+アバスチン
- TP療法+キイトルーダ
- TP療法+アバスチン
キイトルーダは2022年に承認された免疫チェックポイント阻害薬で、TC療法またはTP療法と併用することで生存期間の延長が期待できます。アバスチンは血管新生を阻害する分子標的薬で、2016年から使用されています。
患者さんの全身状態、腎機能、心臓血管系の状態、放射線治療歴などを総合的に判断して、最適な組み合わせが選択されます。
2次治療の選択肢
- セミプリマブ(リブタヨ)
- テブダック(チソツマブ・ベドチン)
- イリノテカン+ネダプラチン
- その他の単剤化学療法(イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビンなど)
1次治療で免疫チェックポイント阻害薬を使用していなかった場合は、セミプリマブが選択肢となります。2025年に承認されたテブダックは、作用機序が従来の治療と異なるため、免疫チェックポイント阻害薬の治療歴の有無にかかわらず効果が期待できます。
TC療法における具体的な副作用とその対処
TC療法を受ける患者さんは、投与に伴う副作用を理解しておくことが重要です。国立がん研究センターの情報によると、主な副作用は以下のとおりです。
末梢神経障害(しびれ)
TC療法では、10人中7〜8人程度の割合でしびれを感じる方がいます。一度しびれが出てから軽い症状のまま推移することもありますが、投与を重ねるたびに強くなることもあります。手袋や靴下の着用範囲に起こりやすいとされています。
軽度の症状の場合、投与が終了してから数ヶ月以内に回復することが多いですが、症状が強い時には回復までに1年以上かかることがあります。
関節痛・筋肉痛
TC療法では、10人中7〜8人程度の割合で関節痛・筋肉痛を感じる方がいます。薬剤を点滴してから2〜3日後に症状が出現し、数日以内に改善されていきます。特に背中や足の関節・筋肉で痛みを感じることが多いです。
脱毛
初回のTC療法から2〜3週間過ぎた頃より、髪の毛が抜けてきます。抜けはじめの頃に頭皮がピリピリと痛むことがあります。脱毛は一時的なもので、治療が終了して2〜3ヶ月で生え始めます。
悪心・嘔吐
抗がん剤を注射した当日に現れる急性のものと、注射終了2〜7日後に現れる遅延性のものがあります。TC療法では、予防のためにあらかじめ吐き気止めを点滴します。
治療選択の判断基準
TC療法とTP療法、そしてそれらに併用する分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の選択は、患者さんの状態によって異なります。判断する際の主な要素は以下のとおりです。
通院か入院か
TC療法は外来(通院)で投与できますが、TP療法は入院が必要です。患者さんの生活環境や希望も考慮されます。
腎機能の状態
シスプラチンは腎毒性が強いため、腎機能が低下している患者さんにはカルボプラチンを使用するTC療法が選択されることが多くなります。
前治療の内容
プラチナ製剤の投与歴がない患者さんでは、TP療法のほうが有効である可能性が示されています。一方、何らかの治療歴がある場合は、TC療法が選択されることが多いです。
放射線治療歴
過去に骨盤への放射線治療を受けている患者さんは、アバスチンの使用により瘻孔形成のリスクが高まるため、慎重な判断が必要です。
心臓血管系の状態
血栓症のリスクがある患者さんや抗凝固薬を使用している患者さんは、アバスチンの使用が制限されることがあります。
まとめ:子宮頸がん薬物療法の現在と展望
進行・再発の子宮頸がんに対する薬物療法は、2024年から2026年にかけて大きく進歩しました。
TC療法とTP療法という基本的な化学療法に加えて、免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダやセミプリマブ、分子標的薬のアバスチン、そして2025年に承認された抗体薬物複合体のテブダックなど、患者さんの治療選択肢は確実に広がっています。
1次治療では、TC療法またはTP療法にキイトルーダやアバスチンを併用することで、従来よりも生存期間が延長することが示されています。2次治療では、テブダックやセミプリマブなど、作用機序の異なる新しい薬剤が登場し、治療の選択肢が増えました。
ただし、それぞれの治療法には特有の副作用があり、患者さんの全身状態や前治療の内容、生活環境などを総合的に判断して選択する必要があります。
主治医とよく相談して、自分に最も適した治療法を選択することが重要です。
参考文献・出典情報
- 独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 腫瘍内科 婦人科がん
- JCOG0505試験 総括報告書(IVb期および再発子宮頸癌に対するPaclitaxel/Cisplatin併用療法 vs. Paclitaxel/Carboplatin併用療法)
- MSD株式会社 キイトルーダ局所進行子宮頸癌に対する同時化学放射線療法との併用について承認取得(2024年11月)
- MSD株式会社 キイトルーダ進行・再発の子宮体癌に対する化学療法との併用で承認取得(2024年12月)
- 日本薬理学雑誌 チソツマブ ベドチンの薬理学的特性と再発又は遠隔転移を有する子宮頸がんの臨床試験成績
- ケアネット 子宮頸がん治療の新たな選択肢:チソツマブ ベドチンの臨床的意義(2025年6月)
- 日経メディカル 子宮頸癌に初の抗体薬物複合体、二次治療に新たな選択肢(2025年6月)
- 国立がん研究センター中央病院 パクリタキセル/カルボプラチン療法(TC療法)
- がんナビ 子宮頸がんの根治的治療をサポートする化学療法
- 日本婦人科腫瘍学会 子宮頸癌治療ガイドライン2022年版