こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
非小細胞肺がんのステージ3(Ⅲ期)と診断された場合、治療の選択肢は多岐にわたります。同じステージ3でも、がんの状態によって最適な治療法が異なるため、正確な診断に基づいた治療計画の立案が重要になります。
この記事では、非小細胞肺がんステージ3の診断基準、さまざまな治療の選択肢、そして治療を選ぶうえでのポイントについて解説します。
非小細胞肺がんのステージ3とは何か
非小細胞肺がんのステージ3とは、がんが局所的に進行した状態を指します。遠隔転移(他の臓器への転移)がある場合はステージ4となるため、ステージ3は遠隔転移の一歩手前という段階です。
ステージの診断には「TMN分類」という国際的な基準が使われます。これは以下の3つの要素を組み合わせて判断します。
T因子(Tumor)は腫瘍の大きさや周囲への広がりを示します。N因子(Node)はリンパ節への転移の状態を表します。M因子(Metastasis)は遠隔転移の有無を示します。
これらの組み合わせにより、ステージ3はさらにⅢA期、ⅢB期、ⅢC期に細分化されます。2025年現在の肺がん診療ガイドライン2024年版では、これらの細かい分類に応じた治療方針が示されています。
ステージ3と診断される具体的なケース
非小細胞肺がんでステージ3と診断されるのは、主に以下のようなケースです。
| 分類 | 状態 | ステージ |
| T因子がT4の場合 | 主な腫瘍が心臓、大血管、気管などの周辺臓器に浸潤している | リンパ節転移に関係なくステージ3 |
| N因子がN2の場合 | 腫瘍のある肺と同側の縦隔リンパ節への転移がある | 腫瘍の大きさに関係なくステージ3 |
| N因子がN3の場合 | 反対側の縦隔リンパ節への転移、または鎖骨上リンパ節への転移がある | 腫瘍の大きさに関係なくステージ3 |
| T3N1の場合 | 腫瘍の大きさが7cm以上で、肺門リンパ節に転移がある | ステージ3A |
このように、ステージ3と一言にいっても、その状態は幅広く、治療の方法も多岐にわたります。そのため、まず正確に診断することが治療成功への第一歩となるのです。
正確な診断のために必要な検査
非小細胞肺がんの治療法は、ステージごとに異なりますが、特にステージ3の場合は同じステージ内でもさまざまな特徴があるため、最初に正確に診断することがとても重要になります。
画像検査による腫瘍の評価
腫瘍の大きさや広がり(T因子)については、CT検査で診断します。現在では1mm単位で計測できる高精度なCTが主流となっており、腫瘍の詳細な状態を把握することが可能です。
遠隔転移の有無(M因子)に関しては、PET-CT検査を中心に評価します。骨転移や脳転移が疑われる場合には、MRI検査を追加して詳しく調べることになります。
リンパ節転移の正確な診断
リンパ節転移(N因子)の診断は、治療方針を決めるうえで特に重要です。かつて日本では、CTなどの画像検査だけで診断していました。しかし、リンパ節が腫れていても、それが必ずしもがんの転移によるものとは限りません。
特に喫煙者の中には、炎症でリンパ節が腫れている人が多く、画像検査だけでは「リンパ節転移が疑われる」と診断されても、実際には転移がなかったというケースがあります。
逆に、画像検査で腫れていなくても、リンパ節転移がないとは言い切れません。リンパ節の組織を採取して病理検査をしない限り、がん細胞の有無を完全には確認できないのです。
超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)
このような背景から、体への負担を最小限に抑えながら、リンパ節の組織を採取して調べられる検査法として普及したのが「超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)」です。
EBUS-TBNAは、先端に小さな超音波装置のついた気管支鏡を挿入し、気管や気管支の周囲にあるリンパ節を超音波画像で確認しながら、針を刺して組織を採取する検査法です。
局所麻酔と鎮静薬を使って行われるため、全身麻酔が必要な縦隔鏡検査に比べて体への負担が少ないのが大きなメリットです。正診率は90%前後と高く、2025年現在では肺がん診療において標準的な検査法として位置づけられています。
肺がん診療ガイドライン2024年版では、画像検査で縦隔リンパ節転移が疑われる患者さん、中枢型肺がん(腫瘍が比較的中心部分にできている肺がん)の患者さん、N1領域のリンパ節が腫れている患者さんには、EBUS-TBNAを行うことが推奨されています。
また、縦隔鏡検査を行うと癒着が起こり再検査が困難になりますが、EBUS-TBNAなら繰り返し実施することができるため、治療後の効果判定にも活用できます。
リンパ節転移の疑いがあると言われた場合は、画像検査だけでなくEBUS-TBNAを受けて正確な診断をすることが、適切な治療選択につながります。
ステージ3の治療法の選び方
非小細胞肺がんのステージ3には、3A期、3B期、3C期があり、それぞれで標準的な治療法が異なります。また、同じ分類の中でも患者さんの全身状態や腫瘍の状態によって、治療の選択肢が変わってきます。
ステージ3B期・3C期の治療
ステージ3B期は、主に2つのケースがあります。主腫瘍がある肺の反対側の縦隔リンパ節に転移がある場合(N3)と、周囲の臓器に浸潤しているT4の場合です。
N3の場合、反対側のリンパ節にも転移しているため、局所治療である手術は適応外となります。そのため、化学放射線療法(抗がん剤と放射線治療の併用)もしくは薬物療法が単独で行われます。
T4に対しては、浸潤している大血管や隣接臓器を一緒に切除する手術が検討されることもあります。ただし、浸潤の範囲が広くて手術ができない場合には、N3の場合と同様に化学放射線療法や薬物療法が標準治療となります。
T4で手術を行う場合、合併症が起こる可能性も高いため、外科医を含めた専門チームで、浸潤の部位や程度、全身状態、呼吸機能なども考慮して慎重に判断する必要があります。
ステージ3C期も基本的には3B期と同様の治療方針となり、化学放射線療法が中心となります。
化学放射線療法の実際
化学放射線療法では、治療計画のためにCT撮影を行います。CT画像をもとに、最適な照射範囲や照射方向を決定します。
現在は、がんの形や位置に合わせた「三次元原体照射(3D-CRT)」が一般的です。また、照射したい部分の形に合わせて複雑な線量分布を作ることができる「強度変調放射線治療(IMRT)」も用いられています。
通常、1日1回2Gy(グレイ)を週5回、6週間連続で行い、合計60Gyを照射します。肺がん診療ガイドライン2024年版では、74Gyの高線量照射は行わないことが推奨されています。
化学療法では、主に以下の薬剤が使用されます。
| 薬剤の組み合わせ | 特徴 |
| カルボプラチン+パクリタキセル | 比較的副作用が軽い組み合わせ |
| シスプラチン+ドセタキセル | 強力な抗がん作用が期待できる組み合わせ |
| カルボプラチン単剤 | シスプラチンが適さない高齢者に使用 |
何らかの理由で化学療法が困難な場合には、放射線治療の単独療法が選択されます。照射方法や線量は化学放射線療法と同様で、通常60Gy/30回(6週間)で行われます。
ステージ3A期の治療
ステージ3A期には、主に「T3N1」と「N2」の場合があります。
T3N1で比較的多いのは、肺尖部(肺の最も上の部分)のがんです。これに対しては、まず化学放射線療法を先に行い、その結果を見て手術を行うかどうか判断するのが一般的です。
腫瘍が大きいため手術だけでは病巣を完全に取り除けないリスクがあり、術前に化学放射線療法を行うことで腫瘍を小さくし、がんの残存リスクや手術による体への負担を軽減することが目的です。
N2の場合、手術が単独で行われることはほとんどありません。基本的には化学放射線療法が行われます。そこに手術を加えるかどうかについては、呼吸機能、手術で取りやすい腫瘍かどうか、多発か単発かなど、さまざまな点から検討する必要があります。
肺がん診療ガイドライン2024年版では、「導入療法後に外科切除を行うことを考慮してもよい」とされていますが、どのような導入療法が最適かについては、現時点では多くの臨床試験が進行中で、確立された科学的根拠はまだ十分ではありません。
術前・術後補助療法の最新情報
2023年以降、ステージ2期や一部のステージ3期の患者さんに対して、手術前後の補助療法として免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法が広がっています。
2023年3月には、手術前にプラチナ製剤に加えて免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(製品名:オプジーボ)を併用することで、再発までの期間が延長することが示され、承認されました。
さらに2025年9月には、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)について「非小細胞肺がんにおける術前・術後補助療法」の適応が承認されました。これにより、手術前にゲムシタビンとシスプラチンとの併用でデュルバルマブを使用し、手術後にもデュルバルマブ単剤での治療を継続できるようになっています。
これらの治療では、腫瘍の組織診断や遺伝子変異の有無などの検査結果から、効果が期待できる場合に適切な治療法を選択します。
化学放射線療法後の地固め療法
ステージ3の非小細胞肺がんで切除不能な場合、化学放射線療法が標準治療となりますが、2018年以降、治療後の地固め療法として免疫チェックポイント阻害薬を使用することが標準となっています。
デュルバルマブ(イミフィンジ)による維持療法
化学放射線療法後に病勢進行が認められなかった患者さんに対して、デュルバルマブ(イミフィンジ)を最大1年間投与することで、再発を抑える効果が示されています。
デュルバルマブは抗PD-L1抗体と呼ばれる免疫チェックポイント阻害薬で、がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻害し、体の免疫機能ががんを攻撃できるようにする薬です。
投与方法は、1回1500mgを4週間間隔で60分間以上かけて点滴静注します。投与期間は12カ月間までとされています。
この治療により、無増悪生存期間(治療を開始してからがんが大きくなるまでの期間)と全生存期間の両方が延長することが、臨床試験で示されています。
ただし、PD-L1の発現率が1%未満の患者さんでは治療効果が弱いことが示唆されているため、使用にあたってはPD-L1検査の結果も考慮されます。
手術後の再発予防
手術でがんをすべて切除できた場合でも、その後の経過で再発する可能性があります。そのため、再発の可能性を下げる目的で薬物療法の実施が検討されます。
使用する薬は、切除した腫瘍を調べることで確定したステージによって異なります。原発部位のがんの大きさが2cm以上ある場合や、ステージ2以上の場合には、追加の再発予防治療が検討されます。
再発予防では、細胞障害性の抗がん剤が使用されます。分子標的薬(免疫チェックポイント阻害薬を含む)は再発予防には向かないため、肺がんで標準的に調べる遺伝子(EGFR、ALKなど)の検査結果を用いた治療は再発予防では使用されません。
治療選択における重要なポイント
ステージ3の非小細胞肺がんでは、正確な診断と治療前の見極めが特に重要です。同じステージ3でも病状はさまざまで、治療法の選択は多岐にわたるからです。
集学的治療チームでの検討
肺がん診療ガイドライン2024年版では、「呼吸器外科医、内科医、放射線治療医を含めた集学的治療チームで、切除可能かどうか、放射線照射可能かどうかを検討したうえで治療方針を決定することが重要である」と述べられています。
たとえばステージ3でも、全身状態が悪い患者さんでは、積極的治療はせず、最初から症状を和らげる緩和的な治療を行うこともあります。一方で、全身状態が良好であれば、根治的化学放射線療法、もしくは導入療法後に手術を加えた治療の選択肢もあります。
専門施設での診療
正確な診断ができ、技術や経験値の高い医療機関で診てもらうことは、治療成功の重要なポイントです。
特にEBUS-TBNAは、すべての医療機関で実施できるわけではありません。リンパ節転移の疑いがある場合には、この検査を実施できる施設を受診することで、より正確な診断に基づいた治療計画を立てることができます。
また、化学放射線療法の実施経験が豊富な施設、外科手術の症例数が多い施設など、それぞれの治療に特化した医療機関を選ぶことも大切です。
患者さん自身の理解と選択
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには、正しい知識を得ることが必要です。医療者から提示された治療の選択肢について、それぞれのメリットとデメリット、期待できる効果と起こりうる副作用、治療期間と生活への影響などを十分に理解したうえで、自分の価値観に合った選択をすることが大切です。
分からないことがあれば、遠慮せずに医療者に質問し、納得できるまで説明を受けましょう。セカンドオピニオンを求めることも、患者さんの権利として認められています。
参考文献・出典情報
1. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 非小細胞肺がん 治療」
https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment_nsclc.html
2. 日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン2024年版」
https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2024/
3. がんプラス「肺がんの病期:ステージ1~ステージ4」
https://www.haigan-tomoni.jp/know/diagnosis/inspection03.html
4. オンコロ「ステージ3の肺がん(非小細胞肺がん)治療を受ける前に知っておきたいポイント」
https://oncolo.jp/cancer/stage-3-lung-cancer
5. アストラゼネカ株式会社「イミフィンジ、非小細胞肺がんにおける術前・術後補助療法として日本で承認取得」2025年9月19日
https://www.astrazeneca.com/content/az-jp/media/press-releases1/2025/202509192.html
6. 新薬情報オンライン「イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用」
https://passmed.co.jp/di/archives/5974
7. 岡山済生会総合病院「肺がんのステージ(病期)と生存率について」
https://www.okayamasaiseikai.or.jp/column/lung_cancer_03/
8. ファイザー株式会社「肺がんの病期(ステージ)~病期の分類法」
https://www.ganclass.jp/kind/lung/stage/stage
9. 亀田総合病院 中島啓「EBUS-TBNA検体の採取と取り扱いに関する米国胸部医師会ガイドライン」
https://www.kameda.com/depts/kei_nakashima/entry/03975.html
10. 昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門「超音波ガイド下ガイドシース・経気管支針生検」
https://www.showa-kokyuki.com/medical_treatment/218/

