この記事では、がん治療中の吐き気や嘔吐を少しでも和らげ、無理なく栄養を摂るための「食事の工夫」について詳しくご紹介します。
そして、ご自宅で実践できるヒントが詰まった、Amazonで手軽に購入できるおすすめの書籍もご紹介します。ご自身や大切な方の食事のヒントとして、ぜひ役立ててください。
なぜ吐き気や嘔吐が起こるの?その原因と食事への影響
吐き気や嘔吐は、がん治療において最も頻繁に見られる副作用の一つです。原因を知ることで、心の準備ができます。
主な原因
- 抗がん剤や放射線治療の影響: 特定の抗がん剤や、腹部への放射線治療は、脳の嘔吐中枢を刺激したり、消化管の粘膜に影響を与えたりすることで、吐き気や嘔吐を引き起こします。
- 薬剤の影響: 鎮痛剤など、他の薬剤が吐き気を誘発することもあります。
- 電解質異常: 脱水などによる体内の電解質バランスの乱れも、吐き気の原因となることがあります。
- 精神的な要因: 治療への不安やストレス、過去のつらい経験が「条件反射」として吐き気を引き起こすこともあります(予期性悪心)。
- 便秘: 便秘が続くと、お腹が張って吐き気を感じることもあります。
これらの原因によって、食欲が低下したり、特定の匂いや見た目で吐き気を感じたりすることがあります。
吐き気を和らげる食事の「基本の考え方」
吐き気がある時に食事をするのは勇気がいりますが、いくつかのポイントを押さえることで、少し楽になることがあります。
1. 匂いを抑える工夫
食事の匂いは、吐き気を誘発する大きな要因の一つです。
- 冷ましてから食べる: 温かい料理は匂いが立ちやすいので、少し冷ましてから食べるのがおすすめです。
- 換気をしっかり: 調理中や食事中は、部屋の換気を十分に行いましょう.
- 香りの強い食材は避ける: ニンニク、ニラ、玉ねぎなど、香りの強い食材は控えめにしましょう。
- 食べる前に蓋を開ける: 料理を運ぶ時は蓋をして、食べる直前に開けるようにすると、匂いを閉じ込められます。
2. 口当たりと消化のしやすさ
胃腸に負担をかけず、スムーズに食べられることが大切です。
- やわらかく、なめらかなもの: ゼリー、スープ、お粥、豆腐、茶碗蒸しなどがおすすめです。
- サラッと、あっさりしたもの: 油っこいものや、こってりした味付けは避け、だしを効かせた和風の味付けや、酸味のあるものが良いでしょう。
- 消化しやすいもの: 食物繊維が多いものや、消化に時間のかかる肉類、脂質の多いものは控えめにしましょう。
3. 食事の量とタイミング
無理なく食べ続けるための重要なポイントです。
- 少量頻回食: 一度にたくさん食べようとせず、少量ずつ、回数を増やして食べましょう。例えば、2~3時間おきに軽食を摂るなど。
- 無理に食べない: 食欲がない時は、無理に食べる必要はありません。食べられる時に、食べられる量を口にする、という柔軟な気持ちでいましょう。
- 食前・食後すぐの行動に注意: 食事の直前や直後は、体を激しく動かしたり、横になったりしない方が吐き気を誘発しにくいです。
- 治療のピークを避ける: 抗がん剤投与後など、特に吐き気が強い時期は、食事を休むことも検討しましょう。
4. 水分補給の徹底
吐き気や嘔吐がある時は、脱水状態になりやすいです。
- こまめに水分補給: 一度にたくさん飲むのではなく、少しずつ頻繁に水分を摂りましょう。
- 冷たい飲み物: 冷たい飲み物は、吐き気を和らげる効果がある場合があります。
- 経口補水液: 脱水が心配な場合は、電解質が含まれる経口補水液を活用しましょう。
【Amazonで手に入る】吐き気がある時におすすめの食事本
がん治療中の食事は、一般的な健康レシピとは異なる工夫が必要です。吐き気や食欲不振、味覚の変化といった副作用に特化したレシピや情報が掲載されている書籍は、毎日の食事の大きな助けになります。
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国がん東病院発 抗がん剤・放射線治療をしている人のための食事
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食事以外の「食べ方の工夫」と「過ごし方」のヒント
レシピだけでなく、食事の環境や食べ方そのものにも工夫を凝らすことで、吐き気を軽減できることがあります。
1. 食事の環境を整える
- 清潔で快適な空間: 食事をする場所は、清潔で匂いがこもらないように換気しましょう。
- リラックスできる雰囲気: 好きな音楽をかけたり、お気に入りの食器を使ったりして、できるだけリラックスできる環境を作りましょう。
- 無理のない姿勢: ベッドの上で食べる場合は、上半身を起こして食べやすい姿勢を取りましょう。
2. 食べ方の工夫
- 急いで食べない: ゆっくりと、よく噛んで食べましょう。早食いは胃に負担をかけます。
- 一口の量を少なく: 口に入れる量を少なくし、少しずつ食べることで、吐き気を抑えられます。
- 食後はすぐに横にならない: 食後1~2時間は、胃酸の逆流を防ぐためにも、横になるのを避けましょう。座ってゆっくり過ごすのが理想です。
- 飲み物で流し込む: パサつく食べ物は、水分で流し込むようにすると、のどごしが良くなります。
3. 吐き気が強い時の対処法
- 氷をなめる: 吐き気が強い時は、氷をゆっくりなめると、口の中がさっぱりして気分が落ち着くことがあります。
- 冷たいタオルで首元を冷やす: 首元や顔を冷やすと、気分が落ち着くことがあります。
- 深呼吸をする: 軽く体を起こし、ゆっくりと深呼吸を繰り返すことで、気分が落ち着く場合があります。
- アロマテラピー: 医師やアロマセラピストに相談の上、ペパーミントやレモンなどの香りを試してみるのも良いでしょう。ただし、香りに敏感になっている場合は避けてください。
4. 医療者への相談の重要性
吐き気や嘔吐が続く場合は、我慢せずに必ず主治医や看護師に相談してください。症状を和らげる薬(制吐剤)を適切に使うことで、かなり楽になることがあります。また、管理栄養士に相談すれば、現在の体調に合わせた具体的な食事のアドバイスをもらえます。
まとめ:諦めずに「食べられる工夫」を探しましょう
がん治療中の吐き気や嘔吐は、本当につらい副作用です。しかし、全く食べられないわけではありません。匂いを抑えたり、口当たりの良いものを選んだり、食べ方を工夫したりすることで、無理なく栄養を摂る道は必ず見つかります。
「完璧に食べなくても大丈夫」という気持ちで、まずは「一口でもいいから、胃に優しいものを」という意識で、ご紹介した書籍や食べ方を参考にしてみてください。そして、一人で抱え込まず、医療者や周囲のサポートを積極的に利用しましょう。