【レジメン】
<1.Pembrolizumab+CBDCA+Pemetrexed療法>
Pembrolizumab(ペムブロリズマブ:キイトルーダ)=200mg:点滴静注(30分)
Pemetrexed(ペメトレキセド)=500mg/m2:点滴静注(10分)
CBDCA(カルボプラチン)=AUC5:点滴静注(30分以上)
【制吐対策】
①5-HT3受容体拮抗薬(Day1)
②デキサメタゾン9.9mgIV(Day1),8mgPO(Day2~3)
【レジメン】
<2.Pembrolizumab+Pemetrexed維持療法(1に続いて)>
Pembrolizumab=200mg:点滴静注(30分)
Pemetrexed=500mg/m2:点滴静注(10分)
【制吐対策】
①デキサメタゾン6.6mgIV(Day1)
【Pemetrexed投与に関連した支持療法】
①葉酸の投与:Pemetrexed投与7日前よりパンビタン1g(葉酸として0.5mg)1日1回連日 経口投与
②ビタミンB12製剤:初回投与の7日前、投与期間中9週間ごと、1回1mg筋肉内投与
①②ともにPemetrexed最終投与日から22日目まで投与
基本事項
【適応】
切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)
ドライバー遺伝子変異/転座陰性症例
PS0~1、StageIV
【奏効率】(KEYNOTE-189試験/国際共同第Ⅲ相試験)
・奏効率
47.6%
・無増悪生存期間(中央値)
8.8カ月
・生存期間(中央値)
未到達
・6カ月生存率
85.3%
・12カ月生存率
69.2%
【副作用】(KEYNOTE-189試験/国際共同第Ⅲ相試験)
・悪心:All Grade=55.6%、Grade3以上=3.5%
・貧血:All Grade=46.2%、Grade3以上=16.3%
・疲労:All Grade=40.7%、Grade3以上=5.7%
・便秘:All Grade=34.8%、Grade3以上=1.0%
・下痢:All Grade=30.9%、Grade3以上=5.2%
・食欲減退:All Grade=28.1%、Grade3以上=1.5%
・好中球減少:All Grade=27.2%、Grade3以上=15.8%
・嘔吐:All Grade=24.2%、Grade3以上=3.7%
・咳嗽:All Grade=21.5%、Grade3以上=0%
・呼吸困難:All Grade=21.2%、Grade3以上=3.7%
・無力症:All Grade=20.5%、Grade3以上=6.2%
・発疹:All Grade=20.2%、Grade3以上=1.7%
・発熱:All Grade=19.5%、Grade3以上=0.2%
・末梢性浮腫:All Grade=19.3%、Grade3以上=0.2%
・血小板減少:All Grade=18.0%、Grade3以上=7.9%
・流涙増加:All Grade=17.0%、Grade3以上=0%
<免疫関連有害事象>
・甲状腺機能低下症:All Grade=6.7%、Grade3以上=0.5%
・肺臓炎:All Grade=4.4%、Grade3以上=2.7%
・甲状腺機能亢進症:All Grade=4.0%、Grade3以上=0%
・Infusion reaction:All Grade=2.5%、Grade3以上=0.2%
・大腸炎:All Grade=2.2%、Grade3以上=0.7%
・重篤な皮膚障害:All Grade=2.0%、Grade3以上=2.0%
・腎炎:All Grade=2.0%、Grade3以上=2.0%
・肝炎:All Grade=1.2%、Grade3以上=1.0%
・下垂体炎:All Grade=0.7%、Grade3以上=0%
・膵炎:All Grade=0.7%、Grade3以上=0.5%
・副腎不全:All Grade=0.2%、Grade3以上=0.2%
・筋炎:All Grade=0.2%、Grade3以上=0%
・甲状腺炎:All Grade=0.2%、Grade3以上=0%
・1型糖尿病:All Grade=0.2%、Grade3以上=0.2%
レジメンチェックポイント
①Pembrolizumabの投与延期・中止基準の確認
・間質性肺疾患:Grade2=Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade1以下まで回復しない場合には本剤を中止する。Grade3以上または再発性のGrade2=本剤を中止する
・大腸炎/下痢:Grade2または3=Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade1以下まで回復しない場合には本剤を中止する。Grade4または再発性のGrade3=本剤を中止する
・肝機能障害:ASTもしくはALTが基準値上限の3~5倍または総ビリルビンが基準値上限の1.5~3倍に増加した場合=Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade1以下まで回復しない場合には本剤を中止する。ASTもしくはALTが基準値上限の5倍超または総ビリルビンが基準値上限の3倍超に増加した場合/肝転移がある患者ではASTまたはALTが治療開始時にGrade2でかつベースラインから50%以上の増加が1週間以上持続する場合=本剤を中止する
・腎機能障害:Grade2=Grade2=Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade1以下まで回復しない場合には本剤を中止する。Grade3以上の場合=本剤を中止する
・内分泌障害:Grade2以上の下垂体炎/症候性の内分泌障害(甲状腺機能低下症を除く)/Grade3以上の甲状腺機能障害/Grade3以上の高血糖/1型糖尿病=Grade1以下に回復するまで本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade1以下まで回復しない場合には本剤を中止を検討する
・Infusion reaction:Grade2=本剤の投与を直ちに中止する。1時間以内に回復する場合には投与速度を50%減速して再開する。Grade3以上の場合または再発性のGrade2=本剤を直ちに中止し再投与しない
・上記以外の副作用:Grade4または再発性のGrade3の副作用/Grade3以上の心筋炎、脳炎、ギラン・バレー症候群/副作用の処置としての副腎皮質ホルモン剤をプレドニゾロン換算で10mg/日相当量以下まで12週間以内に減量できない場合/12週間を超える休薬後もGrade1以下まで回復しない場合=本剤を中止する
②Pemetrexedの減量基準の確認
【血液毒性】
・最低好中球数<500/mm3および最低血小板数≧50,000/mm3:前回の用量の75%
・最低好中球数にかかわらず最低血小板数<50,000/mm3:前回の用量の75%
・最低好中球数にかかわらず出血を伴う最低血小板数<50,000/mm3:前回の用量の50%
【非血液毒性】
・CTC Grade0~2の神経毒性:前回の用量の100%
・粘膜炎を除くGrade3または4の毒性:前回の用量の75%
・入院を要する下痢(Gradeは問わない)またはGrade3もしくは4の下痢:前回の用量の75%
・Grade3または4の粘膜炎:前回の用量の50%
※2回の減量後にGrade3もしくは4の血液毒性あるいは非血液毒性が認められた場合、またはGrade3もしくは4の神経毒性が観察された場合は直ちに投与を中止する
③CBDCAの投与量の確認(Calvertの式より算出)
④Pemetrexedの重篤な副作用の発現を軽減するため、葉酸とビタミンBl2の投与を確認する
⑤相互作用の確認
<CBDCA>
併用注意:アミノグリコシド系抗菌薬(併用により腎障害および聴器障害が増強することがある)
<Pemetrexed>
併用注意:NSAIDs(クリアランスの低下が認められており、血中濃度が増加し、副作用が増強する)、腎毒性を有する薬剤または腎排泄型薬剤(プロベネシド、ペニシリンなどは腎排泄を競合的に阻害し、クリアランスを遅延させ、その結果血中濃度が増加し、副作用が増強する)
副作用対策と服薬指導のポイント
【Pembrolizumab】
頻度は高くないものの多岐にわたる免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、それぞれの特徴や初期症状を指導して、早期に発見・対処することが重要である。irAEとしては、間質性肺疾患、重症筋無力症、大腸炎、1型糖尿病、肝機能障害、甲状腺機能障害、神経障害、腎障害などが報告されており、発現時には速やかに専門医への相談を検討する必要がある。irAEの早期発見のためには、通常の検査項目に加えて、心電図・胸部X線・血糖・甲状腺機能・副腎皮質機能検査など医療機関内であらかじめ取り決めをしておくことも重要である。また、本剤投与終了後に重篤な副作用があらわれることもあるので、本剤投与終了後も観察を十分に行う
①間質性肺炎
急性肺障害、間質性肺疾患があらわれることがあるので、患者には初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱などの有無)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する。Grade2の場合には、副腎皮質ステロイド(初回用量:プレドニゾロン換算1~2mg/kg)の投与を考慮する。Grade3~4の重篤な症状の場合で、ステロイドパルス療法などの治療にて48時間を超えても症状が改善しない場合には、適応外使用であることを留意のうえ、免疫抑制薬(インフリキシマブ、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチルなど)の投与を考慮する
②大腸炎・重度の下痢
脱水予防のための水分摂取について説明するとともに、症状の急激な悪化または遷延時の医療機関への受診について指導する。止瀉薬であるロペラミドを投与する場合は、irAEによる下痢をマスクする可能性があるため、使用には十分注意が必要である。Grade3以上の重症およびGrade2でも遷延する場合にはステロイド、またはインフリキシマブ5mg/kg(保険適用外)の投与を考慮する。ただし、腸穿孔、敗血症などの合併時にはインフリキシマブ投与は勧められない
③1型糖尿病
劇症1型糖尿病の報告もされているため、口渇、多飲、多尿などの高血糖症状や激しい倦怠感、悪心嘔吐などの糖尿病性ケトアシドーシス症状および早期の医療機関への受診について指導する。1型糖尿病が疑われる場合には専門医と連携するとともに、Pembrolizumabの投与を中止し、補液や電解質補充、インスリン投与を開始する。ステロイドの使用にはエビデンスはなく推奨されていない
④甲状腺機能障害
比校的頻度の高いirAEであること、甲状腺機能亢進症(動悸、発汗、暑がり、軟便、体重減少、不眠、振戦、眼球突出)および甲状腺機能低下症(易疲労・脱力感、寒がり、便秘、体重増加、徐脈、眼瞼浮腫、こむら返り、嗄声)の症状を説明する。甲状腺機能障害は、破壊性甲状腺炎に伴う甲状腺機能亢進症を経由して甲状腺機能低下に至る症例も報告されている。甲状腺機能障害は無症状で進行することもあるため、甲状腺刺激ホルモン(TSH)・遊離T3・遊離T4を定期的に測定することを考慮する。なお、副腎機能障害が併発している場合、ヒドロコルチゾンの投与を先行させる
⑤副腎皮質機能低下症
コルチゾール欠乏に伴う易疲労性、食欲不振、消化器症状などやアルドステロン欠乏に伴う低ナトリウム血症、高カリウム血症、低血圧などの症状を伝え、自覚する場合には早期の医療機関への受診について指導する。副腎皮質機能低下を疑う場合には、ACTH、コルチゾールを測定し、内分泌専門医と連携するとともに、ヒドロコルチゾン10~20mg/日より開始し、患者の状態に合わせて調節する。ヒドロコルチゾン開始後は、副腎クリーゼ予防のために自己判断で中断しないことを説明する。また、発熱等で普段と違うストレスがかかる場合には、ヒドロコルチゾンを通常の1.5~3倍量服用するなど、対応方法を事前に確認しておく必要がある
【Pemetrexed・CBDCA】
①急性肺障害・間質性肺炎
Pemetrexedでは急性肺障害、間質性肺炎があらわれることがあるので、胸部X線検査などの観察を十分行う。また、患者には初期症状(発熱、息切れ、空咳)を伝え、症状発現時は早期の医療機関への受診を指導する
②腎障害
CBDCA投与では、予防として水分の摂取の励行を心がける
③Pemetrexedによる毒性軽減の目的のため、葉酸およびビタミンB12製剤を併用していることを指導し、葉酸の服薬アドヒアランス低下を回避する