【レジメン】
<1コース目>
Nivolumab(ニボルマブ:オプジーボ)=360mg:点滴静注(30分以上)
Ipilimumab(イピリムマブ:ヤーボイ)=1mg/kg:点滴静注(30分)
PTX(パクリタキセル)=200mg/m2:点滴静注(3時間)
CBDCA(カルボプラチン)=AUC5:点滴静注(60分)
<2コース目>
Nivolumab=360mg:点滴静注(30分以上)
PTX=200mg/m2:点滴静注(3時間)
CBDCA=AUC5:点滴静注(60分)
【前投薬】
①5-HT3受容体拮抗薬(Day1)
②デキサメタゾン19.8mgIV(Day1),8mgPO(Day2~3):PTX投与30分前
③ジフェンヒドラミン50mgPO:PTX投与30分前
④ファモチジン20mgIV:PTX投与30分前
<2コース化学療法後>
Nivolumab=360mg:点滴静注(30分以上)
Ipilimumab=1mg/kg:点滴静注(30分)
または
Nivolumab=240mg:点滴静注(30分以上)
Ipilimumab=1mg/kg:点滴静注(30分)
基本事項
【適応】
切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)
化学療法未治療のStageⅣまたは再発例
ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PS0~1
【奏効率】(CheckMate9LA試験/国際共同第Ⅲ相試験)
・奏効率
38.2%
・無増悪生存期間(中央値)
6.7カ月
・生存期間(中央値)
15.6カ月
【副作用】(CheckMate9LA試験/国際共同第Ⅲ相試験)
・貧血:All Grade=23.2%、Grade3~4=5.9%
・好中球減少:All Grade=9.8%、Grade3~4=6.7%
・脱毛:All Grade=8.9%、Grade3~4=0.8%
・血小板減少:All Grade=4.7%、Grade3~4=2.8%
・粘膜炎:All Grade=4.2%、Grade3~4=0.6%
・発熱性好中球減少症:All Grade=3.9%、Grade3~4=3.9%
・末梢神経障害:All Grade=2.5%、Grade3~4=0%
・汎血球減少:All Grade=0.6%、Grade3~4=0.3%
レジメンチェックポイント
①Ipilimumabの投与延期・中止基準の確認
・Grade2の副作用(内分泌障害および皮膚障害を除く)/Grade3の皮膚障害/症候性の内分泌障害:Grade1以下またはベースラインに回復するまで投与を延期する。内分泌障害については症状が回復するまで投与を延期する。上記基準まで回復しない場合は投与を中止する
・Grade3以上の副作用(内分泌障害および皮膚障害を除く)/局所的な免疫抑制療法が有効でないGrade2以上の眼障害/Grade4の皮膚障害:投与を中止する
②PTXの休薬減量基準の確認
白血球数が4,000/mm3未満または好中球数が2,000/mm3未満であれば、骨髄機能が回復するまでは投与を延期すること。投与後、白血球数が1,000/mm3未満となった場合には次回の投与量を減量する
・通常投与量:200mg/m2
・1段階減量:180mg/m2
・2段階減量:150mg/m2
・3段階減量:135mg/m2
<肝機能低下症例に対する減量の目安>
・AST/ALT:10×ULN未満かつT-Bil:1.26~2.0×ULN=PTX投与量:25%減量
・AST/ALT:10×ULN未満かつT-Bil:2.01~5.0×ULN=PTX投与量:50%減量
・AST/ALT:10×ULN未満またはT-Bil:5.0×ULNを超える=PTX投与量:中止
③CBDCAの投与量の確認(Calvertの式より算出)
④希釈後の濃度の確認
Nivolumab:生理食塩液または5%ブドウ糖注射液を用いて0.35mg/mL以上の濃度に希釈する。1回240mgまたは360mg投与時の総液量は体重30kg以上の患者には150mL以下、体重30kg未満の患者には100mL以下とする
Ipilimumab:生理食塩液または5%ブドウ糖注射液を用いて1~4mg/mLの濃度に希釈する
⑤相互作用の確認
<Nivolumab>
併用注意:生ワクチン、弱毒生ワクチン、不活化ワクチン(接種により過度の免疫反応が起こる可能性がある)
<PTX>
併用禁忌:ジスルフィラム、シアナミド、プロカルバジン[アルコール反応(顔面潮紅、血圧低下、悪心、頻脈、めまい、呼吸困難、視力低下等)を起こすおそれがある]
併用注意:ビタミンA、アゾール系抗真菌薬、マクロライド系抗菌薬、ステロイド系ホルモン、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、シクロスポリン、ベラパミル、キニジン、ミダゾラム(CYP2C8、CYP3A4を阻害し、PTXの代謝が阻害され、血中濃度が上昇する)、N-メチルテトラゾールチオメチル基を有するセフェム系抗菌薬、メトロニダゾール[アルコール反応(顔面潮紅、悪心、頻脈、多汗、頭痛等)を起こすおそれがある]
<CBDCA>
併用注意:アミノグリコシド系抗菌薬(併用により腎障害および聴器障害が増強することがある)
副作用対策と服薬指導のポイント
【Nivolumab・Ipilimumab】
頻度は高くないものの多岐にわたる免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、それぞれの特徴や初期症状を指導して、早期に発見・対処することが重要である。irAEとしては、間質性肺疾患、重症筋無力症、大腸炎、1型糖尿病、肝機能障害、甲状腺機能障害、神経障害、腎障害などが報告されており、発現時には速やかに専門医への相談を検討する必要がある。irAEの早期発見のためには、通常の検査項目に加えて、心電図・胸部X線・血糖・甲状腺機能・副腎皮質機能検査など医療機関内であらかじめ取り決めをしておくことも重要である。また、本剤投与終了後に重篤な副作用があらわれることもあるので、本剤投与終了後も観察を十分に行う
また、免疫チェックポイント阻害薬同士を併用した場合、免疫関連有害事象の毒性の増加を認めるため、毒性管理には注意が必要である
①間質性肺炎
急性肺障害、間質性肺疾患があらわれることがあるので、患者には初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱などの有無)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する。Grade2の場合には、副腎皮質ステロイド(初回用量:プレドニゾロン換算1~2mg/kg)の投与を考慮する。Grade3~4の重篤な症状の場合で、ステロイドパルス療法などの治療にて48時間を超えても症状が改善しない場合には、適応外使用であることを留意のうえ、免疫抑制薬(インフリキシマブ、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチルなど)の投与を考慮する
②大腸炎・重度の下痢
脱水予防のための水分摂取について説明するとともに、症状の急激な悪化または遷延時の医療機関への受診について指導する。止瀉薬であるロペラミドを投与する場合は、irAEによる下痢をマスクする可能性があるため、使用には十分注意が必要である。Grade3以上の重症およびGrade2でも遷延する場合にはステロイド、またはインフリキシマブ5mg/kg(保険適用外)の投与を考慮する。ただし、腸穿孔、敗血症などの合併時にはインフリキシマブ投与は勧められない
③1型糖尿病
劇症1型糖尿病の報告もされているため、口渇、多飲、多尿などの高血糖症状や激しい倦怠感、悪心嘔吐などの糖尿病性ケトアシドーシス症状および早期の医療機関への受診について指導する。1型糖尿病が疑われる場合には専門医と連携するとともに、投与を中止し、補液や電解質補充、インスリン投与を開始する。ステロイドの使用にはエビデンスはなく推奨されていない
④甲状腺機能障害
比校的頻度の高いirAEであること、甲状腺機能亢進症(動悸、発汗、暑がり、軟便、体重減少、不眠、振戦、眼球突出)および甲状腺機能低下症(易疲労・脱力感、寒がり、便秘、体重増加、徐脈、眼瞼浮腫、こむら返り、嗄声)の症状を説明する。甲状腺機能障害は、破壊性甲状腺炎に伴う甲状腺機能亢進症を経由して甲状腺機能低下に至る症例も報告されている。甲状腺機能障害は無症状で進行することもあるため、甲状腺刺激ホルモン(TSH)・遊離T3・遊離T4を定期的に測定することを考慮する。なお、副腎機能障害が併発している場合、ヒドロコルチゾンの投与を先行させる
⑤副腎皮質機能低下症
コルチゾール欠乏に伴う易疲労性、食欲不振、消化器症状などやアルドステロン欠乏に伴う低ナトリウム血症、高カリウム血症、低血圧などの症状を伝え、自覚する場合には早期の医療機関への受診について指導する。副腎皮質機能低下を疑う場合には、ACTH、コルチゾールを測定し、内分泌専門医と連携するとともに、ヒドロコルチゾン10~20mg/日より開始し、患者の状態に合わせて調節する。ヒドロコルチゾン開始後は、副腎クリーゼ予防のために自己判断で中断しないことを説明する。また、発熱等で普段と違うストレスがかかる場合には、ヒドロコルチゾンを通常の1.5~3倍量服用するなど、対応方法を事前に確認しておく必要がある
【PTX・CBDCA】
①アルコール含有製剤使用に伴う問診
PTXはアルコールに過敏な患者への投与は慎重投与である。前投薬で投与されるジフェンヒドラミンとアルコールの相互作用による中枢神経抑制作用の増強があるため、投与後の患者の経過を観察し、自動車の運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること
②アレルギー症状
PTX投与開始後に皮膚の異常(蕁麻疹)、 顔面潮紅、息苦しさ、動悸などが発現した場合はすぐに申し出ることを伝える。CBDCAは投与回数が多くなるに伴いアレルギー発現頻度が上昇するため注意する
③末梢神経障害
PTX投与により手足のしびれ、刺痛、焼けるような痛みが出現した場合はすぐに申し出ることを伝える。基準に従い適切に減量・休薬を行う
④脱毛
PTX投与により高頻度で出現し、治療開始後2~3週間で抜け始め、投薬終了後は回復する
⑤腎障害
CBDCA投与では予防として水分の摂取の励行を心がける