08.子宮頸がん

子宮頸がんTC療法とTP療法の違いは?それぞれの効果と副作用について

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再発したり進行した子宮頸がんに対しては化学療法(抗がん剤などの薬をつかった薬物療法)が治療の中心になります。

子宮頸がんで使われる抗がん剤(ガイドラインに使用可能が掲載されている抗がん剤)はとても数が多く、それぞれどのくらいの効果があるかもわかっています。

【子宮頸がんに使われる抗がん剤と効果(奏効率)】※子宮頸がん診療ガイドラインより

薬剤名 奏効率(%)
シスプラチン 20~30
カルボプラチン 15
ネダプラチン 34~41
イホスファミド 14~40
パクリタキセル 17
イリノテカン 24
トポテカン 19
フルオロウラシル 4~9
ブレオマイシン 10
ゲムシタビン 8
ビノレルビン 17
ドセタキセル 9
リポソーム化ドキソルビシン 11

数値はそれぞれ単独で投与した場合の奏効率です。

奏効率とは?

「奏効率」の定義は腫瘍が完全に消失した「完全奏効(CR)が4週間以上持続」と、30%以上小さくなった「部分奏効(PR)が4週間以上持続」の合計を指します。

このように使用できる薬はいくつかありますが、初回から単独で投与することはあまりなく、現在はTP療法(パクリタキセルとシスプラチンを併用)かTC療法(パクリタキセルとカルボプラチンを併用)のいずれかが第一選択肢として実施されています。

TC療法とTP療法の違いは?それぞれの効果と副作用

従来より「どの薬を組み合わせたときに、最も効果があり、なおかつ重篤な副作用が少ないか」を調べるための臨床試験は国際的にも広く行われてきました。

複数の組み合わせから最初に有効性が証明され、推奨度が優先されるようになったのがTP療法(パクリタキセル・シスプラチン)です。

大規模な比較試験がいくつか行われ、それぞれでTP療法の奏効率が示されています。

子宮頸がんの診療ガイドラインに掲載されている数値でいうと、TP療法の奏効率は「29%~36%」程度だといえます。これが子宮頸がんに対するTP療法の効果と考えてよく、後に登場する薬はこれとの比較を行うことになりました。

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TP療法の問題点とTC療法のメリット

TP療法は国際的な標準治療といえ、最近まで長く第一選択肢として用いられてきましたが、課題もありました。

シスプラチンは消化器・腎臓に対する毒性が強いため、腎臓を保護するために水分を点滴しながら投与する必要があります。シスプラチンとパクリタキセルの両方が末梢神経障害という副作用を引き起こす薬であるため、短時間で一度に投与することが危険であり、TP療法を行う際はパクリタキセルを24時間連続して投与する必要がありました。

当然、投与は入院での対応となり、患者はもちろん医療現場にも負担が大きい治療になります。

いっぽう、TC療法(パクリタキセルとカルボプラチ)で使うカルボプラチンは、シスプラチンと同系統(プラチナ製剤)の薬で作用はとても似ていますが腎臓に与える毒性が低いため、患者さんの腎機能の状態に応じて投与量をコントロールできます。

TP療法の問題点とTC療法

カルボプラチン単剤では奏効率が15%程度と有効性は低いですが、パクリタキセルと併用するTC療法の臨床試験で、53%程度の奏効率を示したことから大きな注目を得ました。

過去に行われてきたTP療法の臨床試験とは条件や環境が異なるため、奏効率だけみて単純な比較はできませんが、入院せずに通院で投与できることは大きなメリットであり、日本では日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)がTP療法とTC療法の比較試験を長期で実施してきました。

2015年に示されたJCOGの報告では、単純な奏効率の比較は示さなかったものの(あくまで研究であるため、国際的な基準への配慮か?と思います)『手術や放射線治療で根治できない症例に対して、TC療法は欧米における標準治療であったTP療法に対するOS(全生存期間)における非劣性が検証された。TC療法を第1選択とできるエビデンスを示したことは世界的にも大きな貢献ができたと考えられる』と記載されています。

かいつまんでいえば、TC療法は効果の面でTP療法に劣らないことが分かり、なおかつ投与に関する患者、医療者の負担が小さいため、TC療法を推奨する、ということです。

同じくJCOG報告では副作用は以下のとおりです。TP療法は悪心・嘔吐の副作用が強く表れる傾向があり、TC療法は血小板の減少(血が止まりにくくなる)や、関節痛や神経障害など痛覚に関する副作用が強く出る傾向があるといえます。

【副作用の種類と発生頻度(数値は%)】※JCOG0505統括報告書より

副作用の種類 実施療法 TP療法 TC療法
副作用の程度 Grede3~4(やや重篤) Grade4(重篤) Grede3~4 Grade4
好中球減少  85.5  75.0 76.2 45.2
発熱性好中球減少  18.0 0 7.1 0
貧血 31.2 10.4 44.4 14.3
血小板減少  3.2 3.2 24.6 10.3
クレアチニン  7.2 2.4 4.8 0
アレルギー反応  0.8 0.8 3.2 0
疲労 17.6 4.0 15.9 7.9
脱毛 64.8 - 69.0 -
悪心/嘔吐  29.6 6.4 19.8 3.2
下痢 8.0 1.6 4.0 1.6
関節の疼痛 10.4 0.8 20.8 1.6
筋肉の疼痛 6.4 0.8 14.3 2.4
運動性の神経障害  3.2 0.8 5.6 2.4
感覚性の神経障害 14.4 0 22.2 4.8

上の表のとおり、それぞれ一長一短ありますが、日本国内ではTC療法を優先して実施する医療機関が多くなっています。

もう1つの優先候補「イリノテカンとネダプラチンの併用療法」

日本では、TP療法・TC療法の2つの併用療法に加えて「イリノテカンとネダプラチンの併用療法」も選択肢に入ります。

イリノテカンとネダプラチンはどちらも日本で開発された抗がん薬です。日本国内の臨床生検で有用性が報告されていますが、国際的なコンセンサスはとれていません。ですので「イリノテカンとネダプラチンの併用療法」は日本および一部のアジア地域で行われている地域限定の手段といえます。

国内での臨床試験ではTP療法やTC療法に匹敵する効果があるとされているうえ、TP療法のように入院を必要とせず、通院で対応可能です。

2017年現在、子宮頸がん向けの化学療法の1次治療として選択されるのは治療の軸となるTP療法あるいはTC療法になります。

投与後、効果が薄くなったり、副作用が上回って継続できなくなった場合の2次治療法として「イリノテカンとネダプラチンの併用療法」が採用されることが多いです。

TP療法とTC療法は、いずれもパクリタキセルとプラチナ製剤の組み合わせなので作用機序がよく似ており、例えばTPの後にTCを用いても大きな変化は期待できません。そのため薬の系統・作用の異なる「イリノテカンとネダプラチン」を選択するのは理に適った判断だといえます。

【子宮頸がんの1次治療、2次治療で行われる多剤併用療法と投与法まとめ】

パクリタキセル+シスプラチン TP療法 入院
パクリタキセル+カルボプラチン TC療法 外来(通院)
イリノテカン+ネダプラチン 外来(通院)

TP療法、TC療法に分子標的薬「アバスチン」を加える新たな取り組み

冒頭の薬剤一覧のとおり、子宮頸がんに対しては長らく「抗がん剤」しか選択肢がありませんでしたが、2016年に承認され新たに使えるようになったのが、分子標的薬のアバスチン(ベバシズマブ)です。

国際的な臨床試験で「TP療法」と「TP療法+アバスチン」を比較した結果、TP療法を行ったグループの生存期間中央値(OS)が12.9ヶ月だったのに対し、TP+アバスチン療法を行ったグループでは16.8ヶ月という差が出ました。

つまり「TP療法にアバスチンを加えたほうが、生存期間が4ヶ月延長した」ということです。

この結果をうけて、アバスチンの承認以降、TP療法を行う場合はアバスチンを併用することが多くなりました。

しかし、TP療法でも様々な副作用があるうえにアバスチン特有の副作用も上乗せされるというリスクがあります。アバスチンの副作用には高血圧、たんぱく尿、鼻血、などがあり重篤な副作用としては、血栓症、消化管穿孔(せんこう)などがあります。

こういった副作用の影響を受けやすい患者さん(心臓近くに血栓がありワーファリンなどの血液をサラサラにする薬の投薬を受けている人など)はアバスチンをTP療法に加えるわけにはいきません。

その場合は従来どおりのTP療法かTC療法を行うことになります。

また、投薬以前の治療で子宮頸がんに対する放射線治療を受けている人は、放射線の副作用で直腸の壁が脆くなっていて、アバスチンを使うことで直腸膣瘻(ちつろう)という副作用を起こすことがあります(確率は8~9%ほど)。

直腸膣瘻とは、直腸に孔が空き、直腸と膣が物理的に繋がってしまう疾患です。直腸と膣はとても近い位置にあり間には薄い壁しかない、という状態です。直腸壁に孔が空いてしまうことでお互いが繋がってしまうのです。

直腸を通って排出されるべき排泄物が膣に入ってきてしまう、といことになり肉体的にも精神的にも厳しい症状であるため、放射線治療を受けた方はアバスチンを使うのは避けたほうがよいといえます。

なお、2017年時点では「TC療法+アバスチン」の臨床試験は行われている最中ですが、TPとTCはほぼ同じ、という認識のもと、実際の医療現場では「TC療法+アバスチン」は行われています。

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本村ユウジ

「がんの研究と、患者さんのサポート」を2008年から続けています。現在まで、3,000名を超えるがん患者さんやご家族をサポートしてきました。詳しいプロフィールはこちら。

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