25.抗がん剤・分子標的薬

ハーセプチンの効果と作用。副作用と新薬カドサイラ

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haseptin

かつて、HER2陽性の乳がんは他のタイプのがんと比べて予後が悪いといわれてきました。
しかし2008年にハーセプチンが登場したことにより、生存率、再発率は大きく改善し現在はHER2陽性乳がん治療において重要な役割を占めるようになりました。

また、次々と登場している「HER2陽性乳がん治療薬」をハーセプチンと組み合わせることでさらなる治療効果が発揮できると期待されています。

■ハーセプチンとは?その特徴

ハーセプチンはがん細胞に含まれる「HER2タンパク」と呼ばれる特定の標的を狙って攻撃する薬で、「分子標的薬」の1つです。分子標的薬は従来の毒性の強い抗がん剤と異なり、がん細胞固有の特徴を標的として阻害する薬ですので、高い効果が期待できるだけなく、副作用も比較的小さい薬です。

ハーセプチンが使えるのは検査よってHER2陽性と診断された患者さんだけです。がん細胞のみを攻撃するので従来乳がん治療で使われてきた抗がん剤のような脱毛や吐き気、白血球の減少といった副作用はほとんどありません。特に進行・転移した乳がんの治療はハーセプチンの登場により大きく変化し、手術後の再発率の低下や、生存率の向上に大きく貢献しています。現在、この薬は「術前・術後補助療法」および再発転移進行乳がんの治療に用いられ、乳がん治療のベースとなっています。

■どのようにして使われるのか?

【抗がん剤+ハーセプチン+パージェタ】

ハーセプチンは進行した乳がんや手術後に再発・転移した乳がんのがんに伴う症状を和らげたり、進行を抑えたりする目的で使用します。ハーセプチンは単独で使用した場合の効果はまだ臨床試験で確認されておらず、原則としてタキサン系の抗がん剤(タキソテールやタキソール)と併用して効果を発揮する薬、と位置づけられています。

化学療法の経験のない転移乳がん患者さんを対象に実施された海外の臨床試験では、無増悪生存期間(PFS:がんが悪化しなかった期間)の中央値がタキソテール単独では6.1か月だったのに対し、ハーセプチン+タキソテール併用では11.7か月という結果がでました。5.6か月もの差があったのです。

全生存期間も、タキソテール単独は22.7か月でしたが、ハーセプチン+タキソテール併用では31.2か月という結果になりました。

その後、新しい分子標的薬であるハージェタを加えた3剤併用(抗がん剤+ハーセプチン+パージェタ)療法における臨床試験の結果も明らかになりました。

無増悪生存期間の中央値が3剤併用では18.5か月。従来の2剤併用(ハーセプチン+タキソテール)の12.4か月を上回りました。全生存期間は試験開始後3年の時点で2剤では50%、3剤では66%という結果でした。

こうした臨床試験の結果から、最近ではハーセプチン+タキソテールにパージェタを加えた3剤併用療法が、進行・再発乳がん治療の第一選択の標準治療と位置づけられています。

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■3剤併用(抗がん剤+ハーセプチン+パージェタ)時の投与法

3週間ごとに、パージェタ、ハーセプチン、タキソテールの順番に点滴で投与します。吐き気止め薬も同時に点滴します。

初回治療はアレルギーなどの反応をみるために時間をかけて投与しますが、問題がなければ2回目以降は投与期間を短縮することができます。

3週間を1サイクルとして行い、効果が確認できればそのまま継続して使用します。

■再発予防で使う場合は2剤併用(抗がん剤+ハーセプチン)が中心

手術前や手術後の補助療法としてハーセプチンを使う場合、主に再発予防を目的として使用されます。

術前の場合には、腫瘍を小さくする目的でも使用します。腫瘍が小さくなれば摘出する部位も小さくできる可能性があるからです。また、手術前に投与することであらかじめ薬の反応を確かめられるというメリットもあります。つまり、ハーセプチンを投与して薬の効果が見られれば、この薬は効果があると評価し、術後の再発予防にも効果を発揮できるだろうという目処をたてるのです。

術前・術後ともにタキサン系抗がん剤とハーセプチンを併用することで再発の危険性を50%程度減らす効果があるとされています。再発予防としての使用期間は1年間です。

■ハーセプチンの改良版「カドサイラ」という薬

ハーセプチンをさらに発展させた薬「カドサイラ」が開発され、2014年4月に日本でも発売が開始されました。カドサイラはハーセプチンに抗がん薬を結合させた薬です。

従来のようにハーセプチンと抗がん剤を別々に投与する方法では、ハーセプチンはHER2タンパクを標的としてがん細胞だけを攻撃しますが、抗がん剤は正常細胞にもダメージを与えていました。

いっぽう、カドサイラはハーセプチンががん細胞のHER2タンパクを攻撃するときに抗がん剤を導いて一緒にがん細胞を攻撃します。ターゲットをがん細胞に絞って作用するため、従来の併用療法よりも副作用が軽度だとされています。

また登場して間もない薬ですので、継続してカドサイラ単独と従来の併用療法の効果の比較研究が行われています。

■ハーセプチンの副作用と対策

【発熱】

ハーセプチンは従来の抗がん剤で起きやすい脱毛や吐き気、白血球減少などの副作用はほとんどありませんが、独自の副作用が生じます。

主な副作用としては発熱があります。ハーセプチンを初めて投与された患者さんの約半数に現れます。回数を重ねるごとに少なくなる傾向はあるものの、2回目以降でも現れる可能性があります。

この発熱は点滴直後から24~48時間以内に38~39℃くらいの熱がでるパターンが多いです。これは一過性の発熱でアセトアミノフェンなどを使って解熱するのが一般的です。

【心機能低下】

もともと心臓に障害があったり、心臓の機能が低下している人はハーセプチンの投与により急激に心機能が悪化することがあります。事前に心臓の検査を実施して、問題ない場合にのみ投与されますが、次のような症状がある人は医師に確認しましょう。

・胸部に放射線を照射する治療をしたことがある。
・息切れ、動悸、疲れやすいなど体調不良がある。
・心筋梗塞や狭心症などの既往症がある。
・高血圧と診断された。

【その他の副作用】

ハセープチン投与中は血液検査や胸部超音波などの心機能確認のための検査を定期的に行います。ハーセプチン自体は比較的副作用の少ない薬ですが、他の抗がん剤を併用することが一般的であるためこれによる副作用が現れることが少なくありません。

治療の前に、どのような薬を使い、注意すべき既往症や副作用のリスクなどについてしっかり確認をしておきましょう。

■そもそもHER2タンパクとは何か?

がん細胞の中には、その表面に「受容体」を持つものがあることが分かっています。HER2タンパクはsの受容体の1つです。HER2タンパクはがん細胞の増殖に必要な物質を取り込む性質があります。そのためHER2タンパクが活性しているとがん細胞が積極的に増殖する、ということになります。

ハーセプチンはこのような特徴を持つHER2タンパクだけを攻撃するため、HER2をもたないタイプのがんには効果がありません。事前に採取したがん細胞を調べ、hER2陽性が確認された場合のみハーセプチン投与の対象になるのです。乳がんの患者さんでは3~4人に1人がHER2陽性です。

以上、ハーセプチンについての解説でした。

私がサポートしている患者さんでもハーセプチンを使っている方は多くいます。従来の抗がん剤に比べると効果を発揮しやすく、副作用は少ないですが、それでも「がんを治す薬」ではありません。

どのようにして乳がんと闘うのか、については総合的な取り組みが必要です。
詳しくはこちらのガイドブックで。
がん治療で「絶対に」やってはいけないことは?

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本村ユウジ

「がんの研究と、患者さんのサポート」を2008年から続けています。現在まで、3,000名を超えるがん患者さんやご家族をサポートしてきました。詳しいプロフィールはこちら。

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