02.がんについて

がんの増殖に関連する「バイオマーカー」とは?

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がんのバイオマーカー

現在、がん治療において「今後の経過」を予測する方法は、主にがんの進行度(病期・ステージ)だといえます。ステージ1だと再発率がどれくらい・・・ステージ4だとどれくらい・・・といった指標です。

このようなステージ分類によるがんの進行度はおおむね予後を反映するように思われます。しかし、患者さん個々の例を見ると、必ずしもそれにあてはまらない例も少なくありません。

たとえば乳がん患者でステージ1の早期がんであっても再発する人もいれば、ステージ4期あるいは再発した後も長期間生き延びる人もいます。前者は早期であってもがん細胞の悪性度が高い(質が悪い)と解釈できます。後者は転移がんなので悪性度が低いとはいえませんが、想定したより進行が遅い=悪性度は予想より低い、といえます。

このようなことがなぜ起こるのか?

ステージ分類だけでは分からない理由があるということになります。

がん細胞の研究は「分子生物学」の領域に入り、1990年代以降ずっと継続して行われてきました。その結果としてがん細胞の増殖や周囲への広がりにかかわる分子が次々に明らかにされてきました。

さらに近年は大規模な遺伝子解析が可能となり、新たながん関連遺伝子もぞくぞくと発見されています。また変異の中でもがん細胞の発生と増殖に不可欠なもの(ドライバー変異)と、がん細胞の増殖に影響を与えないもの(パッセンジャー変異)に分かれることもわかってきました。

それらの分子の中には、がん細胞の生物学的な性質がよいか悪いかの判断材料となるものがあります。このような分子を「バイオマーカー」と呼びます。

現在、がんの化学療法(薬を使った治療法)の選択肢として、分子標的薬が急速に定着しています。バイオマーカーの一部はこうした薬の治療効果を予測することができます。薬ごとに適応したバイオマーカーが発見できれば、薬を「効果が見込める患者のみに投与する」ことが可能になります。

つまり、バイオマーカーは、患者ひとりひとりに最適な治療を提供するための指標となります。

近年、がんのバイオマーカーを調べてがんの特性を判断し、どのように治療を行うかを考える動きが進んでいます。たとえば、がん細胞に増殖信号を送る分子(HER2)が過剰に発現している乳がんは、増殖しやすく、治癒しにくいと考えられてきました。

しかし、分子標的薬トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)が医療現場で使用されるようになると、このような乳がんにはトラスツズマブの治療効果が高いため、むしろ改善しやすいがんといえるほどになりました。

大腸がんでも、K-RASという遺伝子に変異のないがんに対しては、がんの増殖信号を送る分子に結合する抗体医薬品の治療効果が見込めることが明らかになっています。これはセツキシマブ(商品名アービタックス)、パニツムマブ(商品名ベクティビックス)であり、いずれもすでに日本で承認され医療現場で使われています。

また、肺がん治療で使用されるゲフィチニブ(商品名イレッサ)は大きな副作用で問題になりましたが、これは当初、個々の患者の遺伝子の変異について確認しないまま処方されていたことが原因です。しかし、この薬はがん細胞に増殖信号を送る分子の遺伝子(EGFR)が変異している患者に有効であり、現在では遺伝子検査を行ってから「効果があり、重篤な副作用のリスクは少ない」と判断されてから投与されています。

これらの遺伝子(HER2、K-RAS、EGFR)を調べるための遺伝子検査(コンパニオン診断薬と呼ばれます)には、すでに保険が適用できます。そのため、治療効果のある患者をしぼって分子標的薬を投与できる環境も整いつつあります。

特に乳がんにおいては、がん細胞のもつ複数の遺伝子について変異や発現の状態を同時に調べ、解析するツールがいくつも登場しました。これらのツールでは、たとえばホルモンを受け取る分子(ホルモン受容体)や増殖信号を送る分子の遺伝子(HER2)が数多く発現しているかなど、20~70もの遺伝子を調べます。

そして、この解析結果をもとに再発のリスクや転移のしやすさ、抗がん剤の治療効果を推測し、化学療法の方針を決定します。これまでの研究によれば、こうしたツールは再発のリスクなどについてかなり信頼性の高い結果を出しており、過剰な治療を避けることにもつながっています。

従来は多少の副作用があっても、抗がん剤の効果を期待して投与していました。その結果、治療効果はないのに副作用で苦しむ例も少なくありませんでした。しかし、遺伝子発現の解析により、抗がん剤によって治療効果が期待できないグループを特定できるようになったのです。

ホルモン受容体やHER2がとくに増えていない乳がんは予後が悪く、既存の薬剤では効果が得られないことが多々あります。近年はこのタイプのがんに特異的なバイオマーカーを発見する取り組みが進んでいます。

また、がんを形成する根源となる細胞である「がん幹細胞」が注目されています。がん幹細胞を標的とした治療は、次世代型の治療として注目されています。

以上、がんのバイオマーカーについての解説でした。

がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。

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本村ユウジ

「がんの研究と、患者さんのサポート」を2008年から続けています。現在まで、3,000名を超えるがん患者さんやご家族をサポートしてきました。詳しいプロフィールはこちら。

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