02.がんについて

がん治療で使われる分子標的薬の作用と種類

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ha-se

がん治療において、化学物質(抗がん剤)を体内に投与する治療法を化学療法といいます。
抗がん剤開発のきっかけは、第一次世界大戦で使用された毒ガス兵器でした。悪性りンパ腫を患っていたあるアメり力兵がヨーロッパで従軍し、ドイツ軍から毒ガスを浴びせられたものの、帰国するときにはこのがんが治癒していたと報告されたのです。

この毒ガスに含まれていたのは、サイトシンアラビノシドという物質であり、これをもとに最初の抗がん剤が合成されました。

その後、数多くの抗がん剤が開発されてきましたが、最近までそれらはいずれも、活発に細胞分裂を起こす細胞に無差別に作用するものでした。すなわち、細胞が分裂する際、DNAの合成やそのはたらきを抑えたり、細胞が2つに分裂するのを阻止するなどして、抗がん効果を発揮するのです。

そのため、活発に分裂するがん細胞を殺す効果は高いものの、正常な細胞でも増殖がさかんであれば傷つけることになります。たとえば、細胞の入れ替わりの早い口の内部の粘膜、消化管の粘膜、髪の根元の毛嚢細胞、それに白血球などが、抗がん剤によるダメージを受けやすいと言えます。

そのため抗がん剤治療を受ける患者は、口内炎、下痢・便秘、脱毛、免疫力の低下などの副作用に苦しむのです。しかし最近、副作用の少ない「分子標的薬」が次々に開発されてきました。

分子標的薬とは、がん細胞だけが大量に発現させる特定のたんぱく質(分子)を標的にし、そのはたらきのみを妨害する薬をいいます。

標的としておもに用いられているのは、「上皮性細胞成長因子受容体(EGFR)」です。これは、その名前から想像できるように、上皮細胞に「分裂せよ」とうながす物質(成長因子)を受け取る分子(受容体)であり、細胞の表面に存在しています。

この受容体にはいくつかのタイプがあり、現在、「HER1(EGFR)」と「HER2」を標的とする薬が存在しています。EGFRを標的とする薬はいまのととろ2種類に大別できます。ひとつは点滴が必要な抗体製剤であり、もうひとつは錠剤などの飲み薬(経口薬)である分子量の小さい低分子薬です。

抗体とは、生物の免疫系が外部からの「異物」を見分けるための物質であり、特定の異物にぴったりとくっつく性質をもっています。

抗体製剤のように遺伝子工学で抗体を製造する場合、つくられる抗体はただ1種類となるので、モノクローナル抗体(単一複製の抗体)と呼ばれることもあります。このグループには、この後の①~④のトラスツズマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブなどが含まれます。

第2の飲み薬のグループには、⑤~⑧のゲフィチ二ブ、ラパチ二ブ、イマチ二ブ、ウベ二メクスなどが含まれます。

①トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)

これはすでに転移した乳がんに用いられる抗体製剤です。がん細胞の表面に、その増殖をうながす物質を受け取る受容体(HER2)が過剰に発現しているときに有効とされています。

②セツキシマブ(商品名アービタックス)

がん細胞の増殖をうながす物質を受け取る受容体(HER1:EGFR)を標的とする抗体製剤です。EGFRに結合することにより、この分子からシグナルの伝達を遮断します。これによってがん細胞の増殖を阻止し、なおかつ細胞の死(アポトーシス)を誘導します。

③リツキシマブ(商品名リツキサン)

非ホジキンリンパ腫(ホジキンリンパ腫以外の悪性リンパ腫)に対する薬で、抗体製剤です。がん化しているB細胞(リンパ球のひとつ)に過剰に存在するたんぱく質(CD20)を標的とします。抗体がCD20に結合すると、体の免疫機能ががん細胞を攻撃します。
リツキシマブは1週間間隔で合わせて4回静脈に点滴を行います。この薬は正常な細胞に対する副作用が少なくてすみます。

④ベバシズマブ(商品名アバスチン)

がんの固まりが大きくなってくると、足りなくなってきた栄養や酸素を補うために内部に新たな血管(新生血管)が成長します。ベバシズマブは、血管の成長をうながす物質(血管内皮増殖因子:VEGF)に結合して血管の新生と伸長をさまたげます。これによってがんの増殖を抑えることができます。抗体製剤の一種です。

⑤ゲフィチ二ブ(商品名イレッサ)

②のセツキシマブと同様、EGFRを標的とした飲み薬(錠剤)です。一般的な肺がん(小細胞肺がん以外の肺がん)に対して著しい腫瘍縮小効果を示します。しかし、ときには生命にかかわる間質性肺炎という重い副作用の生じることが問題になっています。

⑥ラパチ二ブ(商品名タイカーブ)

EGFRとHER2という2種類の分子を標的とした飲み薬(錠剤)です。すでに転移した乳がんに治療効果を発揮します。

⑦イマチ二ブ(商品名グリベック)

血液のがんの一種である慢性骨髄性白血病に対する経口の治療薬です。この白血病では異常なチロシンキナーゼ(チロシンをリン酸化する酵素)が産出され、がん遺伝子の増殖をうながすチロシンを活性化します。その結果として白血病細胞が増殖します。
このチロシンキナーゼを活性化するにはATPが必要になりますが、イマチ二ブはATPが結合する場所に結びついてATPを"締め出し"酵素の活性化をさまたげます。

⑧ウベ二メクス(商品名ベスタチン)

たんぱく質を分解する酵素をさまたげる薬であり、それによって免疫細胞の活動が活発になります。経口薬であり、成人急性非リンパ性白血病に対し、いったん白血病細胞が見つからなくなった後(寛解後)、その状態を維持強化するためなどに使われます。

以上、分子標的薬に関するお話でした。

がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。

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本村ユウジ

「がんの研究と、患者さんのサポート」を2008年から続けています。現在まで、3,000名を超えるがん患者さんやご家族をサポートしてきました。詳しいプロフィールはこちら。

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