07.乳がん

乳がんのホルモン治療で使われる薬(ノルバデックスなど)とその効果とは(閉経前)

投稿日:

women6422

乳がんでホルモン治療(ホルモン療法)が行われるのは、「ホルモン受容体陽性」の乳がんの場合です。

このタイプの乳がんは女性ホルモンのエストロゲンの刺激によって増殖します。一般には「ホルモン感受性乳がん」「ホルモン依存性乳がん」とも呼ばれます。

■どんな薬が使われるのか

閉経前と閉経後では使われる薬が異なります。

【乳がんホルモン治療の主な薬】

適応 分類 薬の名前。商品名と(一般名)
閉経前 抗エストロゲン薬 ノルバデックス(タモキシフェン)
LH-RHアゴニスト リュープリン(リュープロレリン)
ゾラデックス(ゴセレリン)
閉経後 抗エストロゲン薬 ノルバデックス
フェアストン(トレミフェン)
フェソロデックス(フルベストラント)
アロマターゼ阻害薬 アリミデックス(アナストロゾール)
アロマシン(エキセメスタン)
フェマーラ(レトロゾール)
・閉経前

閉経前は脳から分泌されるLH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が卵巣を刺激します。刺激された卵巣でエストロゲン(女性ホルモン)が作られます。

このエストロゲンが乳がんを増殖させるのです。そのため「抗エストロゲン薬」を使うことで、乳がん細胞にあるエストロゲン受容体(エストロゲンを受ける役割を持つ)をブロックします。

加えて、そもそもの要因であるLH-RHの分泌を抑えることでエストロゲンを作らせないための薬を使うこともあります。この薬は「LH-RHアゴニスト薬」と呼ばれます。

・閉経後

いっぽう、閉経すると卵巣からのエストロゲン分泌は自動的にストップされます。しかし腎臓の上にある副腎から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)が、「アロマターゼ」とよばれる酵素の働きによってエストロゲンに変換されるようになります。

そのため、閉経後のホルモン療法では、抗エストロゲン薬に加えて、アロマターゼの働きを阻害する「アロマターゼ阻害薬」が使われます。

■閉経前のホルモン治療はノルバデックスで。その効果は?

乳がん学会が発行しているガイドラインによると、閉経前ホルモン陽性乳がんの治療には、ノルバデックスの「術後5年投与」が強く推奨されています。

いくつかの臨床試験によって、ノルバデックスを使うことで再発率や死亡率を低下することができると報告されているからです。

【ノルバデックスを術後5年間投与したときの効果】

15年後の再発率 15年後の死亡率
ノルバデックスを5年投与 33.0% 23.9%
ノルバデックスを使わない 46.2% 33.1%

 

年齢や閉経状況、リンパ節転移の有無などに関わらず、上記程度の効果が見込めることが分かっています。

そのため「まずはノルバデックス」が標準治療とされているのです。

■ホルモン薬に抗がん剤を追加する場合も

再発リスクが高い人には、抗エストロゲン治療の前に抗がん剤を使う場合もあります。

再発リスクが高いとは、「35歳未満」「リンパ節転移あり」などのほか、がん細胞の顔つきが悪いタイプ、がんの増殖マーカーである「ki-67」が高い、などです。

また最近では遺伝子検査によって術後の再発リスクを予測する「オンコタイプDX」検査の再発スコアが26以上といった人も再発リスクが高いといえます。

こうした高リスクの人には、さらにLH-RHアゴニスト薬の追加を検討することもあります。

ノルバデックスにLH-RHアゴニストを追加した臨床試験(治験)はいくつかありますが、いずれもノルバデックス単独治療よりも効果が高い、という結果は得られていません。しかし、化学療法を行った40歳未満の患者さんに限ると再発や死亡のリスクを改善する可能性が示唆されています。

また、40歳以上であっても化学療法後に月経が継続している、あるいは再開した場合はエストロゲンが分泌されていると考え、LH-RHアゴニストの追加を考慮してもよいとされています。

このような根拠からアゴニストの追加を医師から提案されることがあります。

ただし抗エストロゲン薬とアゴニストの併用により、更年期障害のような症状や性機能障害、骨粗しょう症などの副作用が強く出る可能性があります。

■妊娠の可能性とホルモン治療の選択

ホルモン陽性乳がんでは、閉経前の卵巣からエストロゲンが分泌されている期間は再発のリスクが高い時期だといえます。

再発リスクを抑えるためには「より効果を高く=強い薬をしっかり使うことが望ましい」と医師や病院は考えますが、妊娠・出産を希望する人にとっては難しい選択になります。
もし35歳で乳がんが見つかった場合、6か月の抗がん剤治療後に5年間のホルモン治療を行うと、治療が終了するのは40歳となります。妊娠の可能性は残されているものの、長く治療を続けた場合はホルモンの分泌が完全に戻るとは限りません。

妊娠を希望する人は治療開始前に卵子の冷凍保存をして備える人もいますが、化学療法後の高齢出産となると様々なリスクが伴います。

このように治療と人生設計が強く関与するため、妊娠・出産を希望する人はがんの進行度や大きさ、がんのタイプ、再発リスクなどを総合的に考慮し、整理してから選択することが大切です。

■ホルモン治療で受ける副作用と対処法

ホルモン治療は比較的副作用が少ないといわれていますが、ホルモン薬は閉経期の身体と同じような状態を作り出すため、更年期障害のような症状が現れることがあります。

例えば急に身体が熱くなり汗が出るホットフラッシュと呼ばれる症状や、膣分泌物の増量や減少、イライラ感、うつ状態などです。

このような症状は身体がホルモンの状態に慣れていくと軽減することが多いです(数か月間かかります)。しかし症状が重い場合には漢方薬や抗うつ薬、抗けいれん薬などを使うこともあります。

また、抗エストロゲン薬の副作用でとくに注意が必要なのが子宮体がんの発症です。とても稀な副作用ですががん発症のリスクが高くなるのは事実なので定期的な検査を受けることが求められます。

LH-RHアゴニストでは骨粗しょう症になるリスクがあります。定期的に骨密度を計測するほか、もし低下してきたら骨粗しょう症の薬であるビスホスホネート製剤を使うことを検討します。

■ノルバデックスを10年間使う投与法

これまで、ノルバデックスを5年間以上投与することの有用性はないとされ、2013年の乳がんガイドラインでの推奨度はC(行ってもよいが推奨する根拠がない)でした。

しかしいくつかの臨床試験の結果、術後10年以降の再発率、死亡率を減少させられる可能性が高いと見直され、2015年のガイドラインでの推奨度はB(行うよう勧められる)に変更されています。

ですので、年齢が若く、再発リスクが高い人は10年間の治療を薦められることがあります。

・・・

以上、乳がんのホルモン治療についての解説でした。

がんと闘うには、行われる治療の情報(目的や効果)を具体的に理解しておくことが大切です。

何をすべきか、正しい判断をするためには正しい知識が必要です。患者として、家族として必要な知識はこちらのガイドブックにまとめました。

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