10.肝臓がん

肝硬変・B型肝炎・C型肝炎の人が肝臓がんを併発したら

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肝硬変・B型肝炎・C型肝炎と肝臓がん

日本でB型肝炎あるいはC型肝炎と診断されている人は100万人以上いると報告されています。また、食生活の変化などにより肝硬変を患っている人も増加の一途をたどっています。

このような肝疾患は肝臓がんの引き金にもなり、「肝疾患と肝臓がんを併発する人」は増えています。

ここでは、肝疾患を患っている人が「肝臓がん」を告知された場合、どのように治療を進めていくのかについて解説したいと思います。

■何が一番の問題点なのか?

肝臓がんの治療法の選択肢は、手術か化学療法(抗がん剤など薬を使った治療)のいずれかです。他の臓器のように放射線が使われることはありません(肝臓への放射線治療は効果が薄くリスクが高いため)。

肝硬変・B型肝炎・C型肝炎など肝疾患がある場合は、その疾患によって肝臓の状態が悪化しているといえます。

その肝臓に対して、肝臓を切除する手術や、毒性の高い抗がん剤を投与するとなると非常にダメージが強いといえます。この点が一番の問題点だといえます。

その他、ウイルス性の肝炎では別の問題があります。B型肝炎ウイルスの既往症がある人に、がんの治療で免疫抑制作用のある薬を使うとB型肝炎ウイルスが活性化して重篤な肝炎を引き起こすリスクがあるのです。

B型肝炎というのは潜在的にもとても多い疾患です。

日本では50歳以上のB型肝炎ウイルスの感染者はおよそ25%とされています。人口に当てはめると約1000万人の人が感染しているといえます。

肝臓がんになるのはいうまでもなく高齢の人が多いので、肝臓がんが見つかったとき、4人にひとりはB型肝炎ウイルス既往感染者である、ということになります。

■肝機能の状態を評価するチャイルド・ピュー分類とは

がんと診断され、手術か抗がん剤を実施するという話になったとき、まず確認するのが肝機能の状態です。

手術の場合、弱っている肝臓を切除するという非常に大きなリスクを負うことになります。また全身麻酔を使うことで肝臓に負担をかけると肝不全や術後の黄疸などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。

抗がん剤の多くは肝臓で解毒され、処理されますが、ただでさえ肝臓の機能が低下しているときに抗がん剤を使うと、肝機能がさらに障害されて生命の危険にさらされる可能性があります。

そのため、肝臓が治療に耐えうるかを事前に確認しなければなりませんが、明確な「できる・できないのボーダーライン」はありません。

あくまで総合的に肝機能の状態、肝障害の状態を評価することになりますが、そこで目安になるのが「チャイルド・ピュー分類」です。

【チャイルド・ピュー分類】

項目 1点 2点 3点
1.肝性脳症 なし 軽度 ときに昏睡
2.腹水 なし 少量 中程度
3.血清総ビリルビン値(mg/dl) <2.0 2.0~3.0 3.0<
4.血清アルブミン(g/dl) 3.5< 2.8~3.5 <2.8
5.プロトロンビン時間(%) 70< 40~70 <40

 

評価 5項目の合計点
A 5~6点
B 7~9点
C 10~15点

 

上記のように重要な項目をそれぞれ評価し、総合的にA・B・Cの評価を下すことになります。

実際の現場ではその他の既往症なども含めて手術・抗がん剤の可否が判断されますが、この分類だけでみると

・A=問題なく治療できる。
・B=要注意。
・C=手術も抗がん剤も困難。

という判断をすることになります。

■肝硬変の診断や肝臓の機能を評価する「IDG負荷試験」

ICG試験とはインドシアニングリーン(ICG)という色素を注射して、肝臓の解毒能力を調べる検査です。

特に肝臓の切除手術の前には必須の検査です。

ICGの残留量が多い(解毒能力が低い)場合は肝機能障害が強く出ていると考えられ、特に肝硬変の場合は残留量が多くなります。

■肝機能を上げるための治療

がんの治療をしたいが、チャイルド・ピュー分類やICG試験の結果「治療は難しい」となった場合は、肝炎や肝硬変を改善するための治療を優先することになります。

例えばB型肝炎で肝機能が悪化している人には、ウイルスの増殖を抑える作用のある核酸アナログ製剤バラクールドを使います。これは肝機能が高度に低下している場合でも適応となる薬で、服用を続けると数か月で肝機能が改善することがあります。

またC型肝炎では2015年に著効率100%である抗ウイルス薬「ハーボニー」が使えるようになりました。これは服用を開始して3か月ほどで効果が現れることが多いです。

ただしこの薬はチャイルド・ビューBやCの人には使用は認められていません。まだ日本では臨床試験が行われておらず、効果と安全性が確認されていないためです。

その他具体的な肝炎・肝硬変に対する治療法は次の通りです。

【主な治療法一覧】

抗ウイルス薬 ・B型肝炎
核酸アナログ(バラクールド、テノゼット)
・C型肝炎
(1型:ハーボリー、ヴィキラックス、ダクルインザ/スンベプラ)
(2型:ソバルディ/リバビリン)
栄養療法 BCAA栄養剤(リーバクトほか)
LES(就寝前捕食。アミノレバンほか)
腹水 腹水治療薬 サムスカほか
その他 禁酒、脂肪摂取量の適正化など

■肝機能回復のために行われる栄養療法

チャイルド・ビューBやCでC型肝炎のある人や、アルコール性の肝炎・肝硬変の人には肝臓に負担のある治療を行う前に栄養療法を実施することが一般的です。

これは、障害を受けた肝臓を再生し、機能を維持するために必要な栄養素をバランスよく補給することで肝機能の修復・改善を図ることが狙いです。

とくに重視されているのは分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸(BCAA)の摂取です。

必須アミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンを分岐鎖アミノ酸といい、これは栄養状態や免疫機能の改善に有効なアミノ酸です。

人間の体内では合成できないため、肝硬変でBCAAが不足している場合はBCAAを含んだ栄養製剤の服用が必要となるのです。

また、肝硬変になると糖をグリコーゲンとして肝臓に貯蔵できる量が減少し、絶食時には肝臓からの糖の放出が不十分となります。このため肝硬変の人が夕食から翌日の朝食まで間隔を空けることは、そうでない人の3日間の絶食と同じレベルで糖が不足します。

肝硬変の場合は栄養状態を保つためには就寝前の栄養素摂取が必要で、就寝前にBCAAを含んだ栄養剤を服用します。よく使われるのはリーバクトという栄養剤です。

また、BCAAに200kcal分の他の栄養素を加えたアミノレバンという栄養剤も発売されていて、これは特に食事量が少ない人を対象に使われます。

これらの栄養療法や、腹水に対処するサムスカなどを使い、肝機能が回復した例も多いです。中にはチャイルド・ビューの評価がCで手術が無理と判断された人がB、そしてAへ改善されたこともあります。

■その他の治療法

肝硬変に対する治療法として例えば埼玉医科大学では独自に「血行改変術」を行っています。

肝硬変とは肝臓が硬くなる病気ですが、肝臓が硬くなると肝臓に流れるはずの血液が予定通り流れ込まず、他の方向に流れてしまうことが起きます。このように迂回してしまった血流を元に戻して肝臓に流れるようにする治療が「血行改変術」です。

ただしこの血行改変術は技術的にも難しく、実施できる病院も限られます。

また、どんな治療法も「肝炎による肝機能障害」や「肝硬変」を改善するには数か月の期間を要するものがほとんどです。

肝臓がんは進行性の病気なので時間の経過はリスクそのものです。

どのタイミングで何を実施するのか、という見立て、計画がとても重要になります。肝臓がんは様々な手段を持ち合わせている専門医に話を聞くのが患者としては重要なステップだといえるでしょう。

・・・

以上、肝機能障害と肝臓がんについてでした。

がんと闘うには、行われる治療の情報(目的や効果)を具体的に理解しておくことが大切です。

何をすべきか、正しい判断をするためには正しい知識が必要です。患者として、家族として必要な知識はこちらのガイドブックにまとめました。

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