16.前立腺がん

前立腺がんの骨転移と、使われる薬「ゾメタ」と「ランマーク」

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前立腺がんの骨転移と使われる薬

骨転移が確認された場合、それまで治療をしていなかった人には、まずホルモン療法で対処します。

すでにホルモン療法を行っている人には、骨転移の進行を抑える薬として、ビスフォスフォネート製剤を投与します。これは、骨を壊す細胞の働きを抑えて骨粗しょう症を治療し、がんの骨転移の進行を抑制する薬です。

その中の1つ、ゾレドロン酸(商品名:ゾメタ)は健康保険が適用されるので、骨転移に対してよく使われます。

そのほかにも、痛みを改善するために放射線療法、外科的治療(手術)、鎮痛薬など、選択肢はあります。これらの対処法で痛みは改善されるので、必ず主治医に相談しましょう。

■前立腺がんの骨転移の特徴

骨のケアというのは、とても大事なことです。前立腺がんの細胞は、骨を作る細胞の増殖因子を出していて骨がかたくなるため、ほかのがんと比べて骨折を起こしにくいとされています。しかし、ホルモン療法をしていれば骨粗しょう症を起こしやすく、全く骨折がないわけではありません。

骨盤骨が骨折すれば歩行困難になったり、脊椎に転移してマヒが残れば、寝たきりになることも。万が一、寝たきりになると、床ずれ、新陳代謝の低下など体内環境の悪化に伴い、感染症を起こしやすくなるなどして、がんとは関係なく、寿命が著しく縮むといわれています。ですから、骨転移では、寝たきりにならないことがとても重要なのです。

■骨の破壊を阻止し、痛みを緩和するランマーク

前立腺がんの骨転移に関しては、これまでゾレドロン酸(商品名:ゾメタ)が多く用いられてきました。そのゾレドロン酸と類似する効果の薬が、2012年に承認されたデノスマブ(商品名:ランマーク)です。

骨は、古い骨を溶かす破骨細胞と、新しい骨を作る骨芽細胞がバランスを取りながら働き、常に生まれ変わっています。ところが、骨にがんが転移すると、ランクルというタンパク質の分泌を促します。ランクルは、骨を溶かす破骨細胞を作ったり、活性化する働きがあるので、骨芽細胞の働きが過剰になります。

その結果、ランクルが増えると破骨細胞と骨芽細胞のバランスが崩れ、骨がどんどん溶け出し、もろくなっていくのです。一方、がん細胞は、破骨細胞の働きを活発にすることで、骨の中から必要な栄養を吸収し、骨への転移を広げていきます。

ランマークは、このランクルにピンポイントで結合して働きをブロックし、破骨細胞が増えるのを抑え、骨の破壊が進行するのを阻止します。また、がん細胞が周囲の神経を刺激して起こる痛みの悪化を抑える役割も果たします。

■ゾレドロン酸より使いやすく、成績も良好

骨転移した前立腺がん患者を対象とした比較試験でも、ランマークはゾレドロン酸に比べて、骨転移による痛みなどさまざまな症状の発生を遅らせることができるといわれています。

ランマークの投与は、上腕、大腿、腹部への皮下注射で行い、サイクルは4週間に1回です。点滴のゾレドロン酸に比べて、使い方はシンプルです。

また、ゾレドロン酸は重度の腎機能障害があると使えませんが、ランマークは腎機能への影響が少ないため、腎機能障害のある患者に使用制限はありません。

■ランマークの注意したい副作用

・あごの骨が壊死する「顎骨壊死」

まれに見られ、最初にあらわれるのは、歯肉の痛み、はれ・炎症、歯のぐらつき、歯の治りが遅い、歯の根もとの骨がむき出しになる、あごのしびれ、だるさなど。虫歯の治療や抜歯がきっかけで起こることがあります。

・低カルシウム血症

投与早期から血液中のカルシウム濃度が下がり、低カルシウム血症が起こることがあります。症状は、手足のふるえ、筋肉の脱力感、けいれん、しびれ、不整脈など。これを防ぐには、カルシウム製剤やビタミンDの補充が必要。

■欧米では使われている塩化ラジウム223

塩化ラジウム223は、低レベルのα線を放出する放射性同位元素です。

ストロンチウム89はβ線を放出する薬ですが、塩化ラジウム223は、骨転移したがん細胞に選択的に集まり、α線を放出。α線は二本鎖DNAを切断し、細胞を死滅させます。

ストロンチウム89に比べて放射線量が数倍大きく、逆に飛距離と崩壊時間が短いのが特徴です。

塩化ラジウム223は、「カルシウム擬態薬」とも呼ばれ、あたかもカルシウムであるかのように、骨代謝が盛んで骨転移が形成される骨内に優先的に蓄積されます。

注射による骨内投与で、ごく低線量の放射線を放出しますが、到達距離は100μ(0.1mm)未満なので、周辺の正常組織へのダメージを最小限に抑えることができます。

報告(N Engl J Med 2013;369:213-23)によれば、全生存期間は塩化ラジウム223の中央値が14.0カ月に対し、プラセボ(偽薬)では11.2カ月という結果が出ました。

アメリカやヨーロッパの診療ガイドラインでは、骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんに優先的な使用が推奨されています。

以上、前立腺がんの骨転移についての解説でした。

がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。

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本村ユウジ

「がんの研究と、患者さんのサポート」を2008年から続けています。現在まで、3,000名を超えるがん患者さんやご家族をサポートしてきました。詳しいプロフィールはこちら。

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