10.肝臓がん

肝臓がんの「遺伝子治療」は実現できるか

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肝臓がんの「遺伝子治療」

近年では肝臓がんの治療のための新しい手法が次々と考案・開発され、治療成績も、徐々に向上しています。

さまざまな新しい治療法の中でも、将来、肝臓がんに関してもっとも可能性をもつとして期待されているのが、「遺伝子治療」です。

あらゆるがんは基本的に、正常な細胞のもつ遺伝子にいくつもの「変異」が起こり、遺伝子のはたらきが狂うことによって生じます。したがって、がんを引き起こす原因となった遺伝子上のミスを修復することができれば、悪性化(がん化)した細胞を正常な細胞に変えることができ、結果的にがんを完治させられると考えられています。

ミスの生じている遺伝子を修復して正常な遺伝子にするには、まず正常な遺伝子を用意し、それを"遺伝子の運び屋(ベクター)"に組み込み、問題の遺伝子に投入します。

ベクターとしては通常、ある種のウイルスを無害化して用います。ウイルスに正常な遺伝子を組み入れ、がんを発症している患者の体内(細胞の内部)に運ばせるのです。しかし、この方法ではまれに、無害化したはずのウイルスが、人間の体内に入ってからもともともっていた毒性を取り戻してしまうことがあります。

そこで最近では、脂質の薄膜でつくった直径1000分の1ミリ以下のカプセル(リポソーム)も用いられています。

ベクターを投入する方法としてはこれまで、患部に直接噴霧したり、注射したりする方法が試みられてきました。そのほか、人間の細胞をいったん体外に出し、ベクターを使って細胞内に遺伝子を運び込んでから、体内に戻す方法もあります。

ベクターががん細胞に入り込み、それによって正常な遺伝子ががん細胞のゲノム(遺伝子群)の中に組み入れられて、うまくはたらくようになれば、がん細胞のもつ有害な性質(際限なく増殖する)が阻止されます。すると、がん細胞の分裂も停止することになります。

しかし実際には、すべてのがん細胞の中に正常な遺伝子を送り込み、遺伝子を交換するということは、きわめて困難です。

そこで、がん細胞の遺伝子の異常を修復するという直接的な遺伝子治療以外にも、遺伝子を操作して治療に役立てるさまざまな方法が試みられています。

たとえば、1.抗がん剤の効きめを向上させるために、がん細胞の性質を変える、2.患者の免疫機能を強化して、免疫ががん細胞を殺す手助けをする、3.がん細胞を"自殺"に追い込むなどです。これらも、遺伝子治療の一部です。

■「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」

正常な肝臓の細胞(肝細胞)が悪性化する、つまりがん細胞に変わるのは、個々の細胞がもつ遺伝子のうちの、「がん遺伝子」か「がん抑制遺伝子」に異常が生じるためです。

肝細胞に限らず、私たちの全身をつくっているすべての健康な細胞の細胞核にも、もともとがん遺伝子とがん抑制遺伝子が含まれています。

本来それらは、細胞の分化(成熟)や増殖を正常に保つための遺伝子であり、細胞をがん化させたり、がん化を防ぐために存在するわけではありません。

正常な細胞がもっているがん遺伝子を、正しくは「原がん遺伝子」と呼びます。これはただ1種類ではありません。細胞の分化や増殖を促進するためにはたらく遺伝子は、70種類以上も知られています。

しかし、これらの遺伝子のはたらきは、人間が生きている間に変わってしまうことがあります。そのようなことが起こるのは、たとえば遺伝子に活性酸素(体内で有害な酸化反応を起こしやすい酸素)が作用する、ウイルスが細胞に感染して勝手にその遺伝子を組み換える、遺伝子が自分をコピーする過程で"コピーミス"が生じる、などの異常が生じるためです。

こうしてがん遺伝子に変異が起こり、その機能が狂ってしまうと、細胞は猛烈な勢いで分裂・増殖します。そしてがん細胞に特有の、際限のない増殖が始まります。

一方、がん抑制遺伝子の本来の役割はおもに、必要のないときに、がん遺伝子が勝手に細胞を増殖させないようにブレーキをかけておくことです。

代表的ながん抑制遺伝子に「p53」と呼ばれる遺伝子があります。これは「p53たんぱく質」をつくる命令書のようなものです。このたんぱく質は、がん遺伝子の一方の端(読み出し開始点)に結合して、それが必要ないときには、遺伝子が読み出されないようにカギをかけておく役割を果たします。

そして、細胞が増殖すべきときがくると、このp53たんぱく質は生産されなくなり、カギが外されて、がん遺伝子がはたらきはじめます。

p53遺伝子が変異してp53たんぱく質の形が変わると、がん遺伝子の活動を封じるカギが失われてしまいます。すると、細胞はがん化する・・・すなわち無秩序に増殖するがん細胞に変化することになります。

ただし、実際には、がん遺伝子やがん抑制遺伝子のどれか1つに変異が起こった程度では、細胞はまだがん化しません。複数の遺伝子の上にいくつもの変異が積み重なり、全体として機能のバランスが崩れたときに、細胞ははじめて際限のない増殖を始めます。

■がん抑制遺伝子p53遺伝子とは

細胞のがん化に関係するすべての遺伝子の中でも、p53遺伝子はもっとも重要なものの1つとみられています。それは、これまでに、がん患者全体の50パーセント以上で、p53遺伝子の異常が認められているからです。

この遺伝子はもともと17番染色体に存在し、がん化を促進するがん遺伝子の一種として発見されました。「p53」という名前は、この遺伝子が分子量5万3000のたんぱく質をつくるところから命名されたものです。

しかし、その後の研究で、この遺伝子が、実際には細胞のがん化を抑えるはたらきをもつがん抑制遺伝子であることが明らかとなりました。

この遺伝子は、体をつくる組織が正常に形成されていく途上で、必要のない細胞を自殺させる、「アポトーシス」と呼ばれる重要なはたらきを支配することでも知られています。
p53遺伝子は、細胞が分裂・増殖する速度のコントロールや、傷ついた遺伝子の修復などにも深く関わっています。これらのうち、細胞の増殖速度のコントロールと遺伝子の修復が、とりわけ細胞のがん化に深く関わっていると見られています。

肝臓がんだけでなく、ほとんどすべてのがんにおいて、p53遺伝子は重要な治療対象となっています。

■遺伝子治療のリスクと可能性

遺伝子治療はまだ歴史の非常に浅い医療技術であり、明らかな有効性が確認されるには至っていません。

基本的に、人間の細胞に含まれている遺伝子(全部で3~4万とみられる)の多くは、まだそれぞれの機能が完全に解明されてはいません。そのため、病気の治療のために有効と考えて特定の遺伝子に改変を加えると、それがどこか別のところで思わぬ弊害をもたらすということもあり得ます。

また、遺伝子そのものに問題が生じなくても、治療技術が未熟なために、二次的な障害が起こることもあります。

問題が完全に解決されるには、すべての遺伝子のはたらきと、そこからつくり出されるさまざまなたんぱく質の構造などが明らかにされる必要があります。さらに、どの遺伝子をどう操作するとどんな結果が生じるかが、すべて解明されなくてはならず、それにはまだ長い研究が必要です。

以上、遺伝子治療についての解説でした。

がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。

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