02.がんについて 33.化学療法レジメン

乳がん TC療法(DTX+CPA)の奏効率(効果)、生存率、副作用と対策は?

【レジメン】 DTX(ドセタキセル:タキソテール)=75mg/m2:点滴静注(1時間) CPA(シクロホスファミド:エンドキサン)=600mg/m2:点滴静注(30分) 【前投薬】 ①5-HT3受容体拮抗薬(Day1) ②デキサメタゾン9.9mgIV(Day1),8mgPO(Day2~3) 基本事項 【適応】 [術後化学療法] ・StageI~Ⅲの症例に推奨される ・腋窩リンパ節転移陽性、陰性にかかわらず効果が期待できる ・アントラサイクリン系薬剤が使用できない患者や心毒性が懸念される患者に適している 【 ...

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02.がんについて

がんゲノム医療 遺伝子パネル検査はどの病院で受けられるのか

2022年時点で遺伝子パネル検査が保険適用の対象となるのは、標準治療では効果がないか、終了した場合、もしくは終了する見込みの固形がんの患者になります。 遺伝子パネル検査を受けられるのは、全国のがんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院のいずれかになります。 検査を受けることになった場合、患者のがん組織と血液の両方、もしくはいずれかを検 査機関に送り、対象の遺伝子を解析します。 患者が同意した場合は、国立がん研究センターの「がんゲノム情報管理センター」に検査の解析データと患者 ...

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腫瘍溶解性ウイルス

02.がんについて

がん治療における「腫瘍溶解性ウイルス」とは?その仕組みを解説

そもそもウイルスとは? ウイルスは細菌よりもはるかに小さく、生きた細胞(宿主)のなかでしか増殖できません。 細胞に感染して侵入すると、そこでウイルス自身の設計図であるDNAやRNAを放出し、細胞を乗っ取って新しいウイルスを次々と増やします。 こうしてできた新しいウイルスが細胞の外へ広がり、ほかの細胞にも感染して増殖を繰り返す、という仕組みです。 がん治療で注目を浴びている「腫瘍溶解性ウイルス」はウイルスの仕組みを利用してがん細胞をせん滅させるためのものです。 腫瘍溶解性ウイルスの特徴 腫瘍溶解性ウイルスは ...

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02.がんについて

CAR-T(カーティ)細胞療法の副作用とその対策。TCR-T細胞療法の仕組み

CAR-T細胞療法の開発経緯 CAR-T(カーティ)細胞療法の歴史を紐解くと、研究開始は1980年代です。 イスラエルのワイツマン研究所のジーリグ・エシュハー博士は、T細胞がより正確に「敵」であるがんを認識できるようにするため、がんの抗原に強力に接続する抗体のパーツをつくり、T細胞受容体に加える方法を考えました。 また、現・藤田医科大の黒澤良和博士たちが1987年に発表した「免疫グロブリンとT細胞受容体でつくったキメラ受容体」も原型のひとつとされます。 抗原認識部位をT細胞へ導入したことには成功しましたが ...

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02.がんについて

CAR-T細胞療法の仕組みを分かりやすく解説

がんを攻撃する免疫の中心で活躍するのがT細胞です。CAR-T(カーティ)細胞とは、がんをみつけて攻撃しやすいように人工的につくり替えたT細胞のことです。 簡単にいうと、CAR-T細胞は、患者の体のなかにあるがんを瞬時にみつけ攻撃をしかけます。さらに体内で増殖して、がん細胞を一斉攻撃する役割を担います。 人工的にパワーアップされたT細胞である。 がんの発生は遺伝子に傷がつくことと大きな関わりがあります。遺伝子への傷が多いと、T細胞ががんをみつけたり、破壊したりしやすくなります。 一方でがんは攻撃から逃れるた ...

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02.がんについて

がん光免疫はどのようにがん細胞を破壊するのか?なぜ「光免疫療法」と呼ばれるのか?

光免疫療法は日本初の治療法 2020年9月、「がん光免疫療法」のための薬と医療機器が、日本で承認されました。光免疫療法の承認は世界初であり、日本での研究開発が最も進んでいる治療法です。 狙ったがん細胞をピンポイントで物理的に破壊する、従来のがん治療とは大きく異なるコンセプトをもち、これまで実施された臨床試験では、従来の方法では治療が難しかったがん患者が治癒する例も確認されています。 「免疫」という言葉が名前についていますが、これまで知られている免疫療法とはまるでちがう仕組みをもつことも大きな特徴です。 が ...

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02.がんについて

がんの免疫療法の歴史。保険適応の免疫療法と、受けることが推奨されていない免疫療法の違いとは?

がんの免疫療法が生まれたのは? 免疫療法とよばれる治療法には、さまざまな方法がありますが、効果が科学的に証明されず、長く信用できるのかどうかわからない治療法という位置づけでした。 その歴史を振り返ってみます。 免疫療法のはじまりは、100年以上前にさかのぼります。1890年、米ニューヨークでがん治療医をしていたウィリアム・コーリー博士が、高熱を発したがん患者のがんが小さくなったり、消えたりしていることに気づきました。 高熱の原因は、マラリア、麻疹、インフルエンザ、梅毒などでした。コーリー博士は翌年、頭と咽 ...

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02.がんについて

免疫力とがんの関係。がんの発生メカニズムとがんを抑制するメカニズムの解説

細胞分裂とがん発生の原因 がんは、私たちの体の遺伝子に傷が入ることで発症します。 がんと遺伝子にかんする研究については米国の研究者、ロバート・ワインバーグ博士とダグラス・ハナハン博士とともに発表した有名な論文があります。 2000年に発表された「がんの特徴」2011年の「がんの特徴次の世代」です。 2000年の論文「がんの特徴」のなかで、ワインバーグ博士らはがんの特徴を挙げて、それぞれのはたらきを解説しています。 また、2011年の新しい論文「がんの特徴次の世代」では、ワインバーグ博士らはさらに特徴を加え ...

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02.がんについて

2016年から開始した「全国がん登録」による5年生存率などの統計データは?

全国がん登録の最新のデータによると、2017年の1年間にがんと診断された人は97万7393人でした。 2016年が99万5131人だったので近年では「年間約100万人が新たにがんと診断されている」ということです。 部位別でいうと2017年にもっとも多かったのが、大腸がん(15万3189人)、次いで胃がん(12万9475人)、肺がん(12万4510人)、乳がん(9万1605人)、前立腺がん(9万1215人)でした。 男性でがんと診断された人は55万8869人、女性が31万8510人でした。 5年生存率につい ...

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02.がんについて

「医者は抗がん剤を使わない」「いや、抗がん剤は使う」本当はどちら?

標準治療(手術、放射線、化学療法)を批判する意見は多く、書籍も多く出版されています。 特に問題視されることが多いのが、抗がん剤などの薬物を使う「化学療法」です。 書籍の中には、「99%の医者は抗がん剤を使わない」という内容のものがあります。これを執筆しているのは医師です。 その他にも「薬剤師は抗がん剤を使わない」という書籍もあります。 これも現役の薬剤師が書いています。 このような意見に対して、反発する医師も多く、 医者は自分にどんな「がん治療」をとる? 99%が抗がん剤を使わず #ldnews http ...

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07.乳がん

乳がんにおける再発予防のための化学療法(抗がん剤など)の意味と効果

乳がんホルモン剤

乳がんには、抗がん剤、ホルモン剤、分子標的薬などといったいくつかの種類の薬が使われます。これらの薬による治療は、治療薬の効果や再発の危険性を予測したうえで、患者さんの全身の状態や閉経前か後か等を考慮して決定します。


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乳がん化学療法の目的

乳がんは他のがんと比べて比較的よく薬が効くがんとして知られており、さまざまな種類の薬が数多く開発されています。どんな薬をどう使うかは治療の目的によります。大きく分けると次の3つの場面に応じて目的があります。

①手術前にしこりを小さくするため(術前化学療法)
②術後にからだのどこかに潜んでいる細胞を攻撃するため(術後化学療法)
③最初から他の臓器に転移があった場合や再発を治療するため(転移・再発の治療)

この記事では「②」の「術後にからだのどこかに潜んでいる細胞を根絶して、再発を予防する目的で行う化学療法」に焦点を当てて記載したいと思います。

薬の種類と使用する薬の決め方

再発予防の効果が確認されている薬物療法の種類としては、大きく分けて抗がん剤、ホルモン剤、分子標的治療薬であるトラスツズマブ(ハーセプチン)の3種類があります。

抗がん剤はがん細胞を直接攻撃することでがんを抑えるものなので、対象は限られませんが、ホルモン剤と分子標的治療薬は、がん自体がもっているホルモン剤や分子標的治療薬に反応する部分を特異的に攻撃するので、患者自身のがんがこれらの性質をもっている場合でないと、使用する意味がありません。つまりがんのタイプによって使えるかどうかが決まります。

具体的にはホルモン剤はホルモン受容体が陽性かどうか。ハーセプチンはHER2受容体が陽性かどうかによって使えるかどうかが決まります。ホルモン剤や分子標的治療薬は、抗がん剤に比べれば副作用は軽く(使えるのであれば)効果も期待できるので、使える場合はこれらが優先的に薦められることになります。

また、乳がんの細胞診(がん細胞を採取してその特徴を検査すること)の結果、再発の危険性(リスク)を予測することができます。そのリスクは3段階あり、低リスク群(再発の危険性が低い)、中間リスク群(再発の危険性がある)、高リスク群(再発の危険性がかなり高い)に分けられます。低リスクの場合は副作用の強い抗がん剤は提案されませんが、中間りスク群と高リスク群の人には抗がん剤による治療が提案されます。

再発の危険性に影響を与える要素は、
1.腫瘍の大きさ(大きいほうが危険性が高い)
2.リンパ節転移の状態(転移があるほうが危険性が高い)
3.がん細胞の悪性度(組織学的悪性度、グレードが高いほうが危険性が高い)
4.がん細胞のホルモン受容体の状態(ホルモン受容体がないほうが危険性が高い)
5.がん細胞のHER2の状態(HER2があるほうが危険性が高い)
6.リンパ管侵襲(切除した標本を顕微鏡でみて、がんのまわりのりンパ管にがん細胞がどの程度入り込んでいるかを調べる。リンパ管侵襲があるほうが危険性が高い)
7.患者の年齢(35歳以下の若い患者は、高齢の患者さんに比べて経過がよくない)
などです。


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ホルモン剤の使用について

乳がんが女性ホルモン(エストロゲンとプ口ゲステロン)をエサにして、増殖する性質(ホルモン感受性といいます。感受性がある場合は陽性となります)がある場合、ホルモン剤を投与するとエサが食べられなくなり、これによってがんの増殖を抑える効果が期待できます。

ホルモン感受性があるかどうかは、がん細胞が「ホルモンを取り入れるための口」であるホルモン受容体(エス卜口ゲン受容体とプロゲステロン受容体の2種類があります)をもっているかどうかを調べればわかります。

さらに、どれくらいたくさんあるかを調べて、予想されるホルモン療法の効果を、高度内分泌反応性(かなり効果が期待できる)、不完全内分泌反応性(まあまあ効果が期待できる)、内分泌非反応性(まったく効果が期待できない)の3段階に分けます。ホルモン剤による治療は、高度反応性の人と不完全反応性の人に行います。非反応性の人には効果が期待できないため行いません。

分子標的治療薬の使用について

乳がんがその細胞の表面にHER2タンパクをもっている場合、増殖に必要な栄養物を取り込んで、盛んに増殖することが知られています。トラスツズマブ(ハーセプチン)は、このHER2タンパクに特異的にくっついて、栄養物を取り込むのを邪魔しますので、がん細胞は栄養を取れなくなって増殖が抑えられます。

したがって、がん細胞がHER2をもっているかどうか、またどれくらいもっているかを調べます。そして、がん細胞がHER2をもっている場合(HER2陽性といいます)は、分子標的治療薬を使用します。

抗がん剤の使用について

抗がん剤は副作用もありますので、再発の危険性が高い場合に勧められます。高リスク群では、できる限りの治療を受けることが勧められますが、中間リスク群でもホルモン受容体が特に強陽性の場合は、抗がん剤までしなくてもよいかもしれないと考えられています。

低リスク群では、もともと再発率が非常に低いことに加えて、ホルモン剤が有効と思われるため、抗がん剤は不要と考えられています。

薬による再発予防の治療を行う根拠とその限界について

再発予防の治療は本来であれば、「再発する人」と「再発しない人」を特定して、再発する人にだけ行うのが理想的です。しかし、どの人が再発するかしないかを正確に予測することは、現在の技術では不可能で、「再発の危険性を予測する要素」を組み合わせて、「再発の危険性の高い群、中くらいの群、低い群」に区別するのが精一杯です。

したがって、「再発の危険性の高い(高リスク)群」の人でも再発しない人もいれば、「再発の危険性の低い(低リスク)群」の人でも再発する人はいます。

「再発の危険性の高い群」の人には、再発予防の治療を受けることが強く勧められるのですが、その理由は、「その中の誰が再発するかしないかわからないので、可能性が高いとされた人には全員受けてもらう」ということにあります。

仮に「再発の危険性の高い群」の人が100人いたとします。術後何もしないと、10年の間にだいたい100人中60人(60%)くらいの人が再発し、残りの40人(40%)は再発しないということが知られています。そしてこの100人に、再発予防の抗がん剤治療(AC療法など)をしたとすると、再発する人が45人(45%)くらいにまで減らせることが臨床試験を通じてわかっています。

この場合45人の人は、抗がん剤治療をやっても再発しているので、治療の効果がなかったということになりますが、60人から45人を引いた15人の人は、「治療を受けたことで再発しなかった人」ということになり、治療による利益があったことになります。

「100人中15人が利益を受けるために、100人全員が治療を受けないといけないのか」と疑問に思うのは当然のことですが、どの人が再発するかしないか、薬が効くか効かないかを前もって正確に予測することができない以上、100人全員に受けるように薦めるのが今の医療だということです。

また、薬の効果には限界があり、再発予防の治療を受けたからといって、全員の再発が予防できるわけではありません。治療法の選択には、患者の希望や意思を取り入れるのは当然ですので、担当医とよく相談して決めましょう。

以上、乳がんの化学療法についての解説でした。

 

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本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

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