12.甲状腺がん

傷跡が残らない(目立たない)甲状腺がんの新しい手術方法とは?

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甲状腺がんと診断されたとき、手術ができる場合は切除が第一選択となります。しかし手術を受けると首の正面に傷跡が残ってしまうことが大きな課題でした。

甲状腺がん手術

甲状腺がんは女性の罹患者が多く(男性の2倍)、「好みの洋服を着れない」「夏場でも首にスカーフをずっと巻いている」「人と会うのが辛い」など生活面での影響が少なくありません。

そこで近年では「首に傷跡ができない」手術ができないか、様々な検討が行われてきました。

2016年時点は「首に傷跡ができない手術」が2種類存在し、その方法を選択することができます。具体的には「内視鏡下手術」と「ダヴィンチを使ったロボット手術」です。

甲状腺がんの内視鏡下手術とは

内視鏡下手術が行えるのは、甲状腺がんのなかで「甲状腺未分化がん以外の甲状腺皮膜浸潤を伴わず、画像上明らかなリンパ節腫大を伴わない甲状腺がん」です。

つまり「未分化がんでなく」「皮膜浸潤とリンパ節転移がない」甲状腺がんであれば内視鏡下手術の対象になります。がんの大きさは問いません。葉切除も全摘も可能です。

従来の切開手術に比べて内視鏡下手術の大きなメリットはまず「傷跡が目立つところにできない」ことにあります。

内視鏡下手術では、手術器具を挿入するために「鎖骨の下を3~4cm」切開するのと、首筋の横に内視鏡を入れるための5mmほどの穴を空けるだけです。そのため、Vネックの服や開襟シャツを着ても傷跡自体が見えません。

縫合するためしばらく傷跡は残りますが時間の経過とともに薄れていきます。実際に内視鏡下手術を受けた方の写真はこちらです。

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(旭川医科大学病院HPより)

内視鏡下手術は治療効果も十分

従来の切開手術と比べても、内視鏡下手術の効果は十分で、それどころかリスク回避の面では内視鏡下手術のほうが優れているといえます。

切開手術と同じように甲状腺がんを摘出できるのはもちろんのこと、内視鏡では目で見るよりも2~3倍の倍率で拡大して見ることもできるので、手術がより的確に行えます。甲状腺の近くにある反回神経や副甲状腺を傷つけないため、内視鏡下手術はその点でも優れているのです。

反回神経や副甲状腺を傷つけないことで、反回神経損傷や副甲状腺機能亢進症などの術後合併症を減らすことができます。反回神経は発声や嚥下(えんげ)などに大きな影響を持つ神経で、これを損なうと術後に多大な生活上の不便が出てしまいます。

また動きが激しい首に傷ができないことで、首を動かしたときのひきつれ感や、飲食のときに首に違和感をもたないで済むことも患者さんにとっては重要なことだといえます。

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内視鏡下手術の費用は?(先進医療Aに承認。保険適応も視野に入っている)

2016年時点でこの内視鏡下手術は保険適用ではなく、先進医療A(保険対応の一歩前)という分類です。

そのため保険が効かず、内視鏡下手術を受ける費用の患者負担は約28万円となります。

良性の甲状腺腫瘍に対しては内視鏡下手術はすでに保険適応となっており、甲状腺がん(悪性腫瘍)に対しても保険適応される日が近いのではないかと予想されています。

また、費用面以外のデメリットとしては内視鏡の操作に高い技術が必要となるため、どこの病院でも受けられるわけではないという点です。

日本医科大学付属病院などいくつかの施設で受けられます。

甲状腺がんのロボット手術とは

ロボット手術は「内視鏡」を使う手術の一種です。内視鏡手術をロボット(ダヴィンチ)を使って行うことにより「正確で体への侵襲が少ない」甲状腺がんの手術を実現したものです。

ダヴィンチ手術

ダヴィンチ手術

上記の内視鏡下手術は手術手技を実施する範囲の狭さから難易度が高いことが課題です。難易度とは具体的に何かというと「鉗子の挿入角度が限定されること」「医師の手による操作のため自由度が低い」という点です。

そのため甲状腺周囲の剥離や神経周囲にがんが及ぶときの繊細な操作がとても難しく、「難しい」ということはリスクがあるということになります。

また、リンパ節に転移があるときは内視鏡下手術は適応となりませんが、ロボット手術では(程度によりますが)リンパ節の郭清(切除)もできるため、リンパ節転移がある場合も根治的な手術ができる場合があります。

傷ができるのは「脇の下」

従来の切開手術では「首の正面」に傷ができ、内視鏡下手術では「鎖骨の下」でした。

ロボット手術では「脇の下」を数センチ切開して、そこからロボットのアームが甲状腺に到達して手術を行う方式です。つまり傷は脇の下にしかできません。

医師は患者から離れて座ったままロボットの操作を行うため、集中力が保てることはもちろん、コンピュータ制御された鉗子、高解像度の映像システムなどのロボットの機能は内視鏡下での繊細な剥離と縫合可能にしています。

根治性はもちろん、美容面でも優れた「もっとも体に負担の少ない甲状腺がんの手術方式」といえます。

デメリットは保険対象外であること

完全自費診療・手術であるため、入院~手術まで保険適応外となります。

手術自体の費用は80万円~100万円ほどになります。

手術から4~6日ほどで退院できるほど負担が少ないため、入院日数はさほどかかりませんが手術の費用は高額です。

またロボット設備を持っている病院も多くないため、手術を受ける施設も限られます。遠方の方は交通費や滞在費などもかかることになります。

このように費用面でのデメリットはありますが、治療の負担、美容面を重視する多くの方にとっては選択肢があることが何より大切です。「手術」でもいくつかの方法があり比較検討できることはプラスです。

以上、甲状腺がんの手術についての解説でした。

がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。

納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。

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「がんの研究と、患者さんのサポート」を2008年から続けています。現在まで、3,000名を超えるがん患者さんやご家族をサポートしてきました。詳しいプロフィールはこちら。

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